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17・手下が増えました

 まずは、言い訳からさせていただきます。

 なぜピンクドラゴンを食べたいという冒険者ポークさんの望みを叶えようと思ってしまったかについてですわ。他の方から見れば、今の私はお父様からの挑戦状に受けて立つため、パーフェ領へ急いでいる身。こんなところで油を売っている場合ではないとお思いになるかもしれません。ですが、この答えはとっても簡単。


 ずばり、『ジューシー』に恩を売って彼らを手下にするためです!


 私は薄々気づいております。ラメーン様にも逸材と言わしめたこの魔力生成能力があれば、私はあっという間に冒険者のエリート街道をまっしぐらに進むことができるでしょう。しかし、伯爵令嬢である私は、冒険者社会のことを全く存じておりません。彼ら荒くれ者の慣習の地雷をことごとく踏みつけながら栄光を手に入れるのは邪道。ですから、そこそこ腕のある『ジューシー』をうまく丸め込んで手元に置き、私の補佐をさせていく必要があるのです。


 しかし、彼らも冒険者。しかもベテラン。いかにも新人という空気を纏った私に声をかけてくださった親切心も、次第に小娘にこき使われることへの不満へと変わっていうことは目に見えています。それでは、長く飼い慣らすことができません。やはり、ココアと同じで餌が必要だと思うのです。そこで思いついたのが今回のピンクドラゴン討伐でした。


 彼らもそれなりに名のある冒険者で既に実績をもっているかもしれませんが、ピンクドラゴンを倒すとなるとさらにその名誉に箔が付くことでしょう。そして、私が「ティラミス様!」と崇められる日は明日にもやってくるちがいありません。あぁ、なんて私は良い貴族なのでしょう。そして『ジューシー』はなんて恵まれた冒険者達なのでしょうか。


 何が言いたいかと申しますと、私はこのような高尚な志を礎にピンクドラゴンを討伐することにしたのです。もちろん、珍味にも興味はありましたが。ですから、決してこんな事態になるとは夢にも思っておりませんでした。


(お願い! 見捨てないで!)


 目の前には、犬のようにお座りしたピンクドラゴンが一匹。まだ幼いらしく、体長は二メートル程度しかありません。小さな三角の耳は完全に垂れ下がり、長い尻尾も地面に力なく横たわっています。そして極めつけは潤んだ丸い瞳。思わず吸い込まれてしまいそうな美しい青色をしていて、とても禍々しいと言われている魔物の子どもには見えません。


「あなた、話せるの?」


 ピンクドラゴンは、首を縦に振りました。


 遡ること三十分前、早くピンクドラゴンと会いたい私と、早くピンクドラゴンを食べたいポークさんは、クマさんとケンタくんを引き連れて近くの岩山を散策していました。その際、たまたま丸岩山の影で小さくなっていたこの子を見つけてしまったのでした。


 ポークさんは、担いでいた塩コショウの袋を地面に下ろします。


「この魔物、話せるのか?」

「えぇ。皆様には聞こえませんでした?」


 私がポークさんに答えると、『ジューシー』の御三方は首を傾げます。


「ピンクドラゴンさん、もう一度話してみなさいな」

(ボクはママとしかお話したくないの。だから、魔力を使ってママにだけ話しかけているんだよ)

「ま……ママ?!」

(そうだよ。ボクのママ、と言っても継母だけど、昨日殺されちゃったでしょ? だからボク、一人ぼっちになっちゃったんだ。でも、すぐに新しいママが見つかったから、もう大丈夫だよ!)


 なんてことでしょう! この子はどうやら孤児のようです。しかも義理とは言え、自らの親を殺した相手である私達はかたきでもあるはず。なのになぜ、こんなにも甘えてくるのでしょうか。現在ピンクドラゴンは、絶賛私のほっぺたペロペロ中です。うへぇ。


(ボクの話、聞いてくれる?)


 助けを求めて振り返ると、やはり背後の三名にはピンクドラゴンの声が聞こえていない様子。仕方なく私は、ピンクドラゴンの話を聞くと同時に、『ジューシー』へその内容を噛み砕いて伝えていくことにしました。


「なるほど。この辺りで最近ピンクドラゴン同士の縄張り争いがあったのね。そのとばっちりで、村人達は大怪我したり殺されたり、農作物が荒らされたりしていたと」


 ピンクドラゴンはこくこくと頷きます。


「しかも、あなたの継母には子どもがいなかったから、あなたの本当の母親からあなたを奪ってしまったのね。しかも、本当の母親は殺されて……。そして、結果的に勝ち残ったのがあなたの継母。だから、私達はあなたの敵を撃ったことになる」


 なるほど。あのピンクドラゴンは元々同士討ちで疲労困憊だったから、Fランクの私と『ジューシー』だけで倒すことができたのね。納得!


「で、それで? 私たちがあなたを食べない理由にはなりませんわよ?」


 ピンクドラゴンは、一瞬ブルリと震えました。私の視線、そんなに怖いかしら?


「私達、珍味を食べてみたくてピンクドラゴン狩りをしていたの。今回は塩コショウもちゃんと用意してあるし、準備は完璧なのよ。諦めて、ドラゴンの丸焼きになりませんこと?」

(ママ、お願い! 食べないで! 大きくなったら、ボクもママみたいに強くなるよ。そしたら、ママを守ってあげるから。だから見捨てないで!)


 私の頭の中にはピンクドラゴンの可愛らしい声が響くが、実際にはキュイキュイと鳴いているようにしか聞こえません。それも心にズキューンっと突き刺さる切なげな声。私も丸焼きになるかと尋ねながらも、次第に後ろめたい気持ちが大きくなっていきました。


 見たところ、まだ母親に守ってもらわなければならない程の幼体。身内を亡くした悲しさや憤りは、私も祖父を亡くしたことがあるので少しは分かります。魔物とは言え、こんな可愛らしい生き物を無残に殺してしまっていいものでしょうか。


「ティラミスさん、こいつ可愛いけれど、所詮魔物だぞ」

「大人しくしてる今がチャンスだ。早く縄で縛って火にくべよう! 今夜はご馳走だ!」

「この子は長老と呼んでくれるだろうか」


 背後からは三者三様の意見が飛び交います。私はしばらく腕組みして考えました。




 よし、決めた!




「私、この子を飼います!」

「えー?!」

(やったー! ママ大好き!)


 異議は認めませんわ。このピンクドラゴンさんには、空飛ぶ絨毯号の代わりになってもらいましょう。私、魔力の制御が苦手ですので、今後も安定的な飛行を続けるのは肩が懲りそうで嫌なのです。


 うふふ。私の手下として認めてさしあげますわ、ピンクドラゴンさん! これも何かの縁です。仲良くしましょうね!



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