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安達翠は、完璧な男だ。
安達を知る奴もみな安達を完璧だと言うだろう。
頭が良くて運動も出来る。
おまけに誰にでも優しい。
イケメンではないけど、背は高いし爽やかなその姿は好感が持てる。
そんな安達を俺はずっと、すっげえなぐらいに思ってた。
小学校からの付き合いではあるが高校も大学も違うのに、なんだかんだ付き合いのある安達に、俺は25になった今でも何かと世話になっていた。
安達の彼女は由利と言った。
俺の見なりやらなにやら、いろいろとけちをつけてくるうるさい女だと思った。
ただ、由利は何を思ったか俺に告白してきた。
安達の彼女だし、慌てて断った俺に由利は安達は由利のことを好きではないのだと、そう言った。
なんだか分かんないままに、俺は由利と付き合ってることになって安達に呼び出された。
もう金は貸してくれないかなと思ってたら、安達は俺を自分の家の地下に連れ込んで監禁した。
安達が由利と住むはずだった広い家で、俺はもう一ヶ月暮らしている。
三食食えて、ゲームして寝てれば良い。
安達と一緒になのが嫌だが、毎日風呂には入れるし服だって清潔なもの。
由利とのことを責められたことも怒られたこともない。
殴られもしない。
安達と初めて風呂に入った時は、掘られるかと思ったがそんなこともない。
自由がないことと、外部との接触が皆無なことを除けば、ここはもはや楽園だ。
そもそも出歩いても特に何もないし連絡を取りたい相手もいない。
動物園みたいなここに俺は少しずつ適応して来ていた。
なぜ安達がこんなことをしているのかはずっと謎だった。
金のかかる趣味にしては馬鹿げている。
ただ淡々と俺の世話をする安達。
だから、俺は安達に聞いてみた。
「なあ、お前なんで俺にこんなことしてんの?」
「んー?ナイショ」
小さく笑う安達に俺は少し苛立って、だからこんなこと聞いてはいけないと思いながらも聞いた。
「お前さ、由利のこと好きだったの?」
「好きだったよ」
「由利が、お前は由利のことを好きじゃないって言ってた」
「そう…ちゃんと好きだったよ。ただ、欲しいとは思わなかった」
「…よく分かんねぇ」
安達の言うことは、俺には全く理解できない。
そもそもに、好きなんて気持ちを俺は知らない。
「じゃあ、お前は俺をどう思ってんだよ」
「うーん。難波は誰のお陰で今暮らしてる?」
「んなもん、お前に決ってんじゃん。お陰様で快適だぜ」
当たり前の答え。
なのに安達は、酷く満足そうに笑った。
「俺さえいれば満足?」
「?…そりゃまあ」
「なら、良いんだ」
安達の言うことは良く分からない。
ただ、返す当てのない俺に金を貸し、いつでも家に泊めてくれる安達は、俺からすれば単に有り難い存在ぐらいでしかないけれども、安達の回りには俺の変わりになるような駄目な奴はもちろんいなくて、そして俺は安達の中では結構大事な位置を占めているのかもしれないと思った。
今読み返すとさっぱりした話だなという感想…笑
暇つぶしにでも、お読みくだされば幸いです。