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初投稿です。どうかお手柔らかにお願いいたします。
誤字脱字が多すぎたので分かる範囲で修正しました。申し訳ありません。
突然だが、私の名は蛇窟麗華です。なんと乙女ゲームの悪役令嬢です。
6歳の時に軽い事故で頭を打って、前世を思い出した。まあ、1週間ぐらい高熱にうなされ回復した頃には精神年齢26歳のお子様がいた。
状況的にはゲームの世界に転生で間違いないだろし、蛇窟なんて名字何処探してもいない。
それに大好きだったゲームの登場人物は端役でも覚えている。6歳とはいえ悪役令嬢の面影はばっちりあるのだから、間違いない。
前世の私が思い出せる26歳までの記憶で一番新しいのは、今いる世界が舞台の乙女ゲームのシークレットキャラをやっとの思い出クリアーしたところまでだ。残念な事にエンディングは覚えていない。たぶん、エンディングを見ずにそのままぽっくりだったのかもしれない。だとしたら、凄く恥ずかしい。部屋もBとかLつく本ばかりだったからね。
前世を思い出してからというもの、いろいろ奮闘した。悪役令嬢にならないよう、我儘をいわない良い子でいるようにしたり、幼馴染みの婚約者が抱える悩みを解決しようと試みたり、兎に角いろいろやった。でも、中身地味な一般人の私が何をどうやろと上手くいく訳もなかった。
私の幼馴染みの婚約者様は、爽やかなイケメンで何時も笑顔を絶やさない優男だ。彼は日本で一二を争う富豪の御子息様で、それ故に人の打算的で汚い部分を幼い頃から散々見て来た。そんな幼少期を経たのだから人間不信になるのも無理はない。笑顔の下に孤独を隠している、そんなベタなキャラ設定の彼を私は癒そうとヒロインばりに奮闘したが、全く心を開く事は無かった。
私は高校入学を機に彼と婚約したが、それと同時に彼の事を諦めた。別に好きでは無かったし。彼の事は無理でも、悪役令嬢婚約破棄イベントはなんとしても回避しないといけない。
悪役令嬢はヒロインイジメで高二の学園クリスマスパーティーの日に断罪されて、婚約破棄&退学。これを回避せねばと必死になっていたのだけど、ふと気づいてしまった。
あれ、別によくね?
婚約破棄したからといってお家が衰退する訳もなし、ましてや死ぬこともない。私はあまり不幸にならない悪役令嬢だ。だったらヒロインや婚約者に関わらないようにして、来たるべき日までのんびり過ごそう。私は全てを放り出して傍観者に徹した。運が良ければ婚約破棄も免れるだろうくらいの軽い気持ちでいた。
だが、ヒロインが優秀で思いの外早くやってもいないヒロインイジメで婚約破棄イベントが発生した。もしかしたらゲームの強制力なのだろうか。婚約破棄イベントはゲームと全く一緒の流れだった。
ただ違うのは、婚約者や他の攻略対象者にこっぴどく罵られた事だろうか。いじめどころか彼等にまったく興味を指さない私を知っている生徒からは、疑問の声も上がっていたがそこはセレブが通う高校だけあって長いものには巻かれろである。私より元婚約者の方が権力があるので、皆一緒になって罵倒していた。どっから持ってきたのか、卵を投げ付けられ時は流石に驚いた。
元婚約者にしがみつき怯えるヒロインは、可愛いが……奴も転生者かもしれない。今更、どうでもいいが私の元婚約者ルートに入るのだろう。実はあのゲーム、確か婚約破棄イベントを1年巻きで終わらせられる隠しルートがあったしな。隠しルートに入らないと、婚約者とのイチャイチャシークレットスチルが手に入らないとかあったからね。
取り敢えず謝るだけ謝ってさっさと退場した。私は家に帰るなり、親から度叱られ半分勘当みたいな形で高二の春に寮制の学校に放り込まれた。私的にはラッキーだ。
何や彼やあったが、これで普通の高校生活が送れると思った矢先問題発生。寮には部屋が余っていないらしく、反省部屋に住む事になった。反省部屋は名前のままルールを守らなかったものが入る独房みたいなもので、他の部屋より狭く何もない。ゲームの麗華なら耐えられなかっただろう。私には冷暖房完備でWI-FIまである部屋のどこが反省部屋なのか理解に苦しむ。
ただ問題はそこではなく、寮では日曜日はご飯がでないのである。そして、私はお小遣いが貰えない。父も寮制だからと碌に調べていなかったのだろう。私はおかげで学業にバイトに大忙しだ。
そして、もうすぐ夏休みだというのに未だにぼっちだ。凄く楽しくない。前世の方が充実していた。期待に胸膨らませた高校生活は、一変して落胆する結果に終わった。
そんなある日、ぼっちの私は無事期末テストも終わりいそいそと帰る準備をしていた。
誰も私に話しかける人はいない。テスト最終日は半ドンなので、皆さんカラオケやらゲーセンやら喫茶店やら寄るらしい。
皆さん期末テスト打ち上げですか?私も誘ってくれませんか?今日はバイトないですよ。
誘われないのはセレブなのがいけないのか?
もしかして、蛇窟って苗字がいけないのか?よく雑誌とかにも『蛇窟グループの黒い繋がり』とかのってるど……。
それとキツそうな顔が原因か?ナチュラル系メイクだとそうでもないはずだよ。スタイルだって悪くないし、寧ろモデル体型ですよ。なので、誰でもいいから私と遊んでください。
私の心の声は誰にも届く訳がなかった。
い、いいもん!一人でカラオケ行くもん。
グスッ。べ、別に泣いてないし。
なぜ友達が出来ないのか自問自答を繰り返し、重たい足取りで訪れたカラオケボックス。
だが、カラオケとなれば話は別だ。超ノリノリのヒトカラは寂……楽しいぞこの野郎!この世界は前世とリンクしていたので、知ってる曲はかなりあるから全然楽しめる。
注文したドリンクを引きつった笑顔で店員が届けてくれるが気にしない。寧ろ、私のカラオケを見ていけと言わんばかりにドヤ顔を向けてやる。しかし、一度お辞儀をして店員がドアを開けた瞬間、私はとんでもないものを見てしまった。いやいや、あり得ないから!
こんな庶民が来るカラオケボックスに日本でも一二を争うもう一つの富豪神白家の御子息であらされる神白楓がいるばずない。きっと、他人の空似だよね。それにあいつは攻略対象者だけど難攻不落のシークレットキャラだ。そんなレアキャラがこんな所にいるばずないよね。
確認するか?もし、本人だったら危険だ。彼と元婚約者は仲がいい。私だと気付かれたら、何を言われか分からない。それこそ、家族に迷惑が掛かるような事は避けたい。このまま放って置いた方がいいけど、めちゃめちゃ気になる。
意を決して閉じられたドアをそっと開け、顔だけ覗かせると、そこにはモノホンの楓さんが居ました。
神白楓はサラサラの金髪にネイビー掛った瞳に彫りの深い顔立ち、すらっとした手足に高身長で日本人離れした容姿の持ち主だ。一見爽やか王子風なのだが、実は性格は悪い。俗に言う腹黒王子だ。慌てドアを閉めようとするが、間に合わず楓さんが入室デス。
ぎゃああああ!!
「お前、蛇窟麗華だろ?」
「違います!」
「ふーん、違うのか」
私の全否定を素直に受け取るはずもなく、楓さんがすごく悪そうな顔しとる。私は既に冷や汗ダラダラだ。
「まあ、いいや。司に蛇窟麗華にすごく似た奴がノリノリで歌ってたて報告するかな」
なんて意地悪な奴だ。でも、確かゲームでも彼はそんなキャラだ。腹黒王子よ私の元婚約者天凰寺司に連絡するのはマジ勘弁。私のメンタル全部持っていかれるから。なんとか、誤魔化せないだろうか?
「や、やめてください。ごめんなさい。私は蛇窟麗華です。転校先で友達できないし期末テストも終わって、バイトも今日は休みなのでつい出来心で。あの、いろいろ反省しているので天凰寺さんに報告するのは許して貰えないでしょうか」
はい、誤魔化すとか頭悪いから無理。私は土下座した。きっと、誠心誠意謝れば許してくれるよね。幾ら腹黒でも、そこまで性格悪くないよね。
そしたら、楓さんが何がそんなに楽しいのか大笑いしてやがる。なんかムカつく。
彼はひとしきり笑った後、ダークスマイルを浮かべ私を見た。
「まあ、面白いから言わないでおくよ。その代わりにスマホ出して、持ってるでしょ?」
はい?確かに持ってるけど、壊して今回の件は無かったことにするとかそう言うオチですか。やっぱり、こいつ性格悪いな。
「そんな、警戒しなくても壊したりしないから」
なんで、私の考えがわかるのかね君は。壊す以外に何かあるのか。渋々、楓に渡したらなんかピコピコやり始め直ぐ返して貰えた。
「番号とアドレス登録しておいたから、俺の呼び出しに、これから答えてくれるなら司には言わないでおいてやるよ」
何それ?どんな罰ゲームだよ。
「ですが神白さん。私、バイトがあるのでそんなに暇では無いのですが……」
「シフト持ってるでしょ?それ教えてくれれば空いてる時に連絡するから。それと、楓でいい」
「はい?」
「だから、名前。楓って呼び捨てでいいから。俺も麗華って呼ぶから」
「わ、分かりました」
何この流れ、この場面だけ切り取ればもしかして友達っぽく無い?ヤッタ!友達ゲットだぜぇ!って全然嬉しくない。
「麗華、お前なんでバイトしてるんだ?」
「私の学校は寮制だけど、日曜日だけはご飯がでないので」
「そんな事、親に言えばいいだろ?」
「いやいや、これ以上迷惑は掛けらないし欲しい物も有るので」
「欲しいも?」
やばい。余計な事を言ってしまった。
「大したものでは無いので……」
「大したもので無いなら言っても問題無いだろう?」
流石に言いたくない。何時迄も口を閉ざしていると、彼がダークスマイルを私に向けた。
「言う気ないなら今日の事、司に「ごめんなさい。済みません。言います。言いますから天凰寺さんに言わないで下さい。欲しいゲームソフトがありまして……。もうすぐ発売されるのでバイト以外は夏休み中ずっとそのゲームをやり込もうかと」
「夏休み中ずっとゲームって、お前本当に友達がいないのな」
ぐはぁ!やめて、楓さん。まじやめて。傷口に塩を塗るような真似をしないで下さい。ノックアウト寸前の私と、楽しそうにダークスマイルを浮かべる楓さん。そして彼はこなれた感じで電子目次本を操作し曲を入れた。まじか⁉︎まだ、居座るつもりか。
「麗華、どうした。お前も歌わないのか?」
「……歌います」
何故か時間一杯まで彼は帰らず一緒にカラオケをして帰った。何故、彼がカラオケボックスに居たかは怖くて聞けなかった。
「そうだ麗華、明日はバイト休みだったな」
「休みだけど、予定が……」
「何かあるの?」
「……ゲームの発売日でして」
「じゃあ、俺も付いて行くよ」
「はい?」
帰り際、彼の一言で私は凍りついた。乙女ゲームの世界の悪役令嬢は、とっくに退場したはず。
何かイベントがあるのか?そんな話、私は知らない。もしかしたら、悪役令嬢を怠け過ぎたのがいけなかったのか。
でも、天凰寺もヒロインもラブラブだったし、超ノリノリで私を罵ってたから、しっかり役割はこなしたはず。
もう、ぼっちが嫌だとか誰でもいいから遊んでとか願わないので、どうか勘弁してください。私は普通の高校生活を送りたい。これからまた面倒事に巻き込まれたりするのだろうか。楓と別れた後、そんな事を考えるとついつい大きな溜め息出てしまう。
帰り道に何気なく見た夕陽はとても綺麗で、なんだが酷く感傷的にさせられる。だからだろうか、私を転生させた神様がいるのなら私は願わずには要られない。
神様、どうか私に安寧を……。