涙を食べたアーシャ
ある時代のある寂れた町に、アーシャという名前の女の子がいました。アーシャのおかあさんは子供の世話をするのが面倒になり、娘をこの町に捨てたのでした。
でもアーシャはおかあさんのことが忘れられません。さみしくてさみしくて毎日泣いてばかりのアーシャに、見かねたおばあさんが言いました。
「アーシャや、もうこれ以上泣かないでおくれ。見ているこちらもかなしくなってしまうよ」
それを聞いたアーシャは悲しくなりました。引き取ってくれたおばあさんが本当のおばあさんじゃないことも、ちゃあんと知っていました。泣いてばかりのアーシャに手をこまねいていることも。
それでも、アーシャの涙は止まりません。
泣きながら困ったアーシャの口の中に、ふいに涙が一欠片入りました。アーシャは閃きました。
そうだ、さみしさを食べちゃえばいいんだ。
そう考えたアーシャは、涙といっしょにさみしいきもちを丸ごと食べてしまいました。
それからアーシャはずっと、怒ることも悲しむことも泣くこともなく、いつもにこにこしています。
さみしさを食べてしまったアーシャはずっと小さい子どものまま年を経りません。さみしさをおなかに抱えたまま、でもさみしいということも知らないままで、アーシャはおかあさんが帰ってくるのをずっと待っているのです。