きみに恋していた日々
ある日、きみのことを知りました。
とても背が高い、というのが第一印象でした。
ある日、きみと初めて言葉を交わしました。
素っ気ない態度が怖く思えました。
ある日、きみの何気ない癖を見つけました。
よくわからない人だなぁと思いました。
ある日、きみはいつも仏頂面しかしていないように思いました。
きみが何を考えているのかがますます分からなくなりました。
ある日、きみの笑った顔を初めて見ました。
意外と無邪気だなぁ、と驚きました。
ある日、きみと話す回数が増えていることに気が付きました。
それが楽しくて、わたしの笑う数も増えたのでした。
ある日、きみに身長が低いことをバカにされました。
きみが人をからかうのが好きなことをそのとき知りました。
ある日、きみが好きなバンドのことを熱心に語りました。
その子供みたいに楽しそうな顔を見て、こちらも楽しくなるのでした。
ある日、きみが放課後の校庭を走っていました。
その真剣な様子を、わたしはずっと遠くから眺めていました。
ある日、きみの誕生日を知りました。
同じ夏に生まれたことが少し嬉しいのでした。
ある日、きみの前で泣いてしまいました。
きみは励ますこともなく、いつもみたいにからかって笑うのでした。
ある日、ふとしたきっかけできみとふたりきりになりました。
何故か、時間が止まればいいと思っていました。
ある日、きみがわたしの名前を呼びました。
男の子に呼ばれることに慣れていなくて、不覚にも緊張したのでした。
ある日、きみが重い荷物を持ってくれました。
いつもからかうくせにこのときだけ優しくて、ずるいと思ったのでした。
ある日、きみのことで初めて泣きました。
きみはそんなことも知らずに笑っているのだろうと思いました。
ある日、きみとの接点がもうなくなってしまうことに気付きました。
それがどうしようもなく寂しく思えたのでした。
ある日、きみに思ったことを言えませんでした。
それがどうしようもなく悲しく思えたのでした。
ある日、きみに伝えたいことがあったのでした。
わたしはきみのことが大好きなのでした。