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宇宙改変ブロガー 姫鷺”神”蜜愛  作者: 沙φ亜竜
第3章 蜜愛、狙われる。
19/34

-5-

 翌日の朝。

 朝、ということは当然ながら……。


「おっぱ~!」

「きゃうっ!」


 このように相変わらずの光景が繰り広げられることになる。

 言うまでもなく、背後から迫ってきたゆゆが蜜愛の胸を揉みしだき始めたのだ。


「おっ、こないだ吸い取ったから、Aカップにしぼんだか?」

「し……しぼむはずない~!」

「でも、この揉み心地からするとAとしか思えない……。もしかしてギリギリBって結果が出て以来、ずっと測るのを拒んでるとか……?」

「うう……、悪かったわね~! 私の夢を壊さないで~!」


 願望まじりの悲痛な叫び声を上げる蜜愛だった。


「ほんとに測ってないのか。無駄なあがきを……。むしろその一回がたまたま誤差でBになっただけなんじゃない?」


 ゆゆは呆れ顔。だが、蜜愛にとっては切実な問題なのだろう。


「わーわーわー、聞こえない~~~!」


 両耳を押さえてわーわーとわめき散らし、現実が突きつけられるのを全力で拒む。

 そのあいだも、ゆゆの両手は蜜愛の自称Bカップ、推定Aカップの胸を揉み続けていた。


「そ……そんなことより!」


 ここで蜜愛は、果敢にも反撃に転じる。


「沙羅さんのこと、あれだけ本気みたいだったのに、昨日は私の散歩についてこなかったよね。どうして~?」

「ん? まぁ、そりゃあね。最初に会ったときは、ビビビッと来た感じだったけど、時間が経ったから薄れたっていうの?」

「熱しやすくて冷めやすいんだ、ゆゆちー」

「写真でも撮ってあれば、毎日思い返して情熱を燃やし続けられるかもしれないけど!」

「撮ればいいんじゃ……」

「だって、写真を撮らせてほしいなんて言うの、恥ずかしいじゃないの!」


 あんなにも積極的に体を密着させて絡みついていたのに、今さらどの口で恥ずかしいなんて言うのか。

 蜜愛はそう思ったものの、それを口に出して指摘したりはしなかった。

 恋愛関連だけじゃなく、目の前に目標があったら猪突猛進、そういう性格だということを、蜜愛はよくわかっているからだ。

 そして、深く考え込み始めたら意外と臆病風に吹かれ、まったく行動を起こせなくなるというのも、これまたよく知っていた。


「だったら私が写真を撮って、ゆゆちーに送ろうか~?」

「い……いいよ、そこまでしなくても!」

「え~? 遠慮しなくてもいいのに~」


 形勢は完全に逆転。

 今度は蜜愛のほうが精神的優位に立っていた。

 いまだに蜜愛の胸に伸ばされたゆゆの両手はそのままで、相変わらず揉み続けていたりするのだが。


 それはともかく。

 写真を撮る。

 そんな話をしていたから、という理由もあったのかもしれない。

 ふと、微かな音が聞こえてきた。


 それは、蜜愛とゆゆがいる位置からでは、ほとんど聞き取ることもできないほど小さなものだった。

 実際、蜜愛はまったく気づかなかった。

 しかしゆゆの耳は、しっかりとその音を捉えていた。


「今、なにか音がしなかった?」


 ゆゆは声のトーンを落とし、蜜愛に耳打ちする。


「えっ? べつに、なにも……」


 そう答えながらも、周囲に神経を集中させる。

 人影はない。

 また今日も、遅刻ギリギリになってしまっているのだ。

 ほどなく予鈴も鳴るに違いない。


 だが、今はそれよりも優先すべきことがある。

 ゆゆはそう考えた。


「こっちだ!」


 ひとり、駆け出す。

 曲がり角まで勢いよく飛び込み、その先に視線を向けたところで呆然と立ち尽くした。


「誰も……いないよ?」


 すぐに追いついた蜜愛が問いかけるも、ゆゆの表情は晴れなかった。


「誰かがこの角からのぞいてたの! それに、さっきの音はカメラのシャッター音だった! ケータイのカメラの音かもしれないけど、写真を撮られてたのは確かよ!」

「ええっ!?」


 そんなこと、あるはずない。

 とは言いきれない。

 なにせ蜜愛はこれまでにも、何度か視線を感じたりしていたのだから。


「もしかして、ストーカーとかじゃないの? こないだも、視線を感じるとか言ってたよね?」

「どうなのかな……。視線は確かに感じたことがあったけど……」

「あっ、ミッツじゃなくて、あたし狙いって可能性もあるのか」


 身震いするゆゆの言葉を、蜜愛は否定する。


「視線は昨日、沙羅さんたち三人と一緒にいるときにも感じたよ? そのとき、ゆゆちーはいなかったし……」

「なるほど……。だとすると、ターゲットは確実にミッツか……」


 アゴに指を添え、考え込むゆゆ。


「私のこと、心配してくれるんだね」

「当たり前でしょ? 友達なんだから」


 ゆゆはそう言いながら……次の瞬間には蜜愛をグーで殴っていた。


「痛たたたた、どうして叩くの~?」

「思い出したら腹が立ってきたのよ! ブログの小説に書いてたあたしのイメージは、友達だとしてもやっぱり許せん!」

「ううう~~~~、まだ根に持ってるなんて、ゆゆちー全然冷めやすくない~!」


 とはいえ、熱しやすいのは間違いないようだ。

 そんなふたりの耳に、さらなる音が襲いかかる。

 それはもちろん、予鈴のチャイム音で――。


「走るわよ!」

「うん!」


 絶妙なチームワークで瞬時に走り出していたのは、さすがというべきか、毎朝懲りもせずに同じようなことをと呆れるべきか……。


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