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第七話 「僕は帰りたいだけなのに何でこんなことしてるの?」

 僕らは二日後、無事にミアネスに辿り着いた。

 そして休む間もなくギルドに向かった。

「レミアですけど、この前受けた遺跡調査の依頼が終わりました」

「はい。レミア様ですね。少々お待ちください。レイネス様からの依頼で、レイネス様、レミア様、ユキヤ様参加の遺跡調査の依頼ですね。はい。依頼完了を確認できました。こちらが報酬となります」

「ありがとうございます。それと、ロアさん今ここにいますか?」

 ロアさんって誰だろう?レイの方を見ても成程、って顔してるから多分、二人の知り合いなんだろうけど。さん付けしてるから、年上の人だと思う。まぁ、会ってみれば分かるからいっか。

「ロア様ですか?少々お待ちください。………はい。今はロア様ご自身のお部屋にいらしゃいます」

「そうですか。ありがとうございます」

 とりあえず、僕らは受付を離れた。

 それから、僕とレミアで報酬を分けた。

「ところでレミア、こっちの通貨って何?」

「えっとね、単位がゴールド。銅貨一枚で1ゴールド、銀貨だと100ゴールドになって、金貨だとね10000ゴールドになるんだよ。こっちの世界じゃ、贅沢しなきゃ金貨十枚で一年暮らせるよ」

「えっとそれじゃあ、今の依頼の報酬が、6000ゴールドだろ。これって普通なの?高いの?少ないの?」

「こっちじゃこれぐらいが普通だな。と言うよりユキヤ、普通そういう事は依頼主の前で言う事じゃないぞ」

「そういえば、依頼主ってレイだっけ。無神経でゴメン、気ぃ悪くしたか?」

「いや、僕はお前がどういう人間かわかっているつもりだし、そんな事で気を悪くしない。しかし初対面の相手はわからないからな。気をつけた方がいいぞ」

「忠告、ありがとう。その辺は気をつけるようにするよ」

 とりあえず、こんな感じで雑談がしばらく続いた。

 するとレミアが何かを思い出したかのように口を押さえて、「あっ。」と洩らした。

「そうだよ二人とも。ロアさんのところに向かわなきゃ」

 「そういえばロアさんって誰だ?」

「すぐ分かるよ。取りあえず、わたしが最初に言った、このギルドの幹部の人ってことだけ覚えてて」

 へぇ、ロアさんて人はレミアに強い奴呼んで来いって言った人か。要するに、僕がこの世界に来ることになった原因を作った人か。どんな人か知らないが、電気ショックは、確実だな。

 そんな事を考えてる内に、ロアさんの部屋の前に着いた。

「失礼します。ロアさん、お久しぶりです」

 そこには一人のめがねをかけた緑色の髪と、赤眼を持つ男性が椅子に座り、本を読んでいた。男性にしては髪は長めだ。恐らく、この人がロアさんだろう。

「これはこれは、誰かと思ったらレミアとレイネスですか。久し振りですね。そこの知らない君は初めまして。私はロア・クルセイドと申します。以後、お見知り置きを。それと、私のことは呼び捨てで構いません。そして君は?」

「あっ、初めまして。僕はユキヤ・ワイエルといいます。いや、鈴無 幸也と言った方が説明早いかな?」

「レミア。貴方はあのアイテムを使ったのですか。確かに私は強い者を連れてこいとは言いました。ですが、何も異世界から連れてこいとは言っていませんよ」

「ゴメンなさい」

 なんかロアから、嫌な感じのオーラが出てきたぞ。一見穏やかだけど、結構鬼畜なのかもしれない。この人だけは、怒らせないようにしよう。電気ショックなんて、もってのほかだ。そんな事をしたら半殺しじゃ済まないだろう。

「別に、レミアが悪い訳じゃない。僕が来たかったからこの世界に来たんだ。そこは僕の意志だから、レミアは関係ない」

 僕はレミアがいじられてるのを見て可哀想になってきたから若干、嘘を交えながらレミアを庇った。

 するとロアは含み笑いをしながらこっちを見てきた。

「そういうことですか。熱いですね~。二人とも」

「違います。僕らはそんな関係じゃありません」

 僕は一秒でロアの言葉を否定した。レミアの気持ちも知らないし、それ以前に僕は向こうの世界の人間だし、向こうには雪菜もいる。シスコンと言われたらそれまでだが、雪菜に会わせずにそんなことは出来ないからな。………僕は何を言ってんだろ。

「そういうことにしておきます。それよりユキヤ、君の実力はどの程度なのですか?」

「あぁ。とりあえずは、これを見せるのが手っ取り早いかな?」

 僕はそう言って、背中にある聖槍をロアに見せた。すると、ロアは共学の表情を浮かべた。

「これは………。ミアネス旧市街地に封印されていた聖槍ですか。確かに、聖槍に認められたのなら、今はどうであれこの先はかなりの使い手になるのは、一目瞭然です。これほどの人材は失うには惜しいですねぇ」

「それなら大丈夫だ。僕はもう、このギルドに入ってるから」

 「そんな事より、ロア。聞きたいことがある。お前は『ブレイカー』と言う組織を知っているか?」

 レイが聞くと、ロアは予想道理とも言いたげな顔をして話してきた。

「そうですか。もう遭遇してしまいましたか。では良いでしょう。さて、まずは何を話しましょうか。そうですねぇ、とりあえず言えることは向こうはユキヤのような異世界の方を仲間に率いてるようですね。それらの方々と、世界を破壊し、新たなる秩序へと導こうとしてる組織ですね。主要核は幹部六人に指導者であるシェイド・ジョイントですね」

 多分、ロンドの言ってた『あの方』って、シェイドの事だと思う。でも僕にはそれよりも気になることがあった。

「そんなに簡単に世界を行き来できるものなのか?」

「方法は分かりませんが、彼らはそれを可能にしてるらしいです。それより、君たちが遭遇したのはどのような人物ですか?」

 僕の質問は軽くスルーされた。それよりって、これも結構重要じゃない?主に、僕にだけど。蔑ろにされたくないんだけど。とか、思っていても無情にも話は進んでいく。

「僕たちがあったのは、異世界から来た奴で『終焉のロンド』と名乗っていたな」

「そうですか。二つ名を持っているようなので、幹部クラスの人のようですね。その人はどうしました?」

「とりあえずは撃退できたけど、ユキヤと相打ちだったし、わたしとレイネスはダメージを与えられなかった。ユキヤだってかなり自己犠牲な作戦だったし。結果だけなら、わたしたち負けだったと思う」

 確かに、僕たちは撃退することはできた。でも、出来ただけで実質負けだってのは僕も思う。

「それに、奴らの目的には聖槍が絡んでくるらしい」

「そうですか。やはり聖槍が関係してきますか。こうなってくると、彼にも手伝って貰わなくてはいけませんね」

「まさか、あいつを呼ぶのか?」

「あいつって誰?」

「ゼロ・クライシス。それが奴の名だ」

 レイは不機嫌そうな顔をしながら、教えてくれた。やっぱり仮面でよく表情は分からないけど。

「どんな人なんだ?」

「それは、会ってからのお楽しみだよ。ユキヤ」

みんな教えてくれない。ゼロってどんな人だよ。僕は気になって夜も寝れないよ。嘘だけど。レイは心底嫌な顔してるから、ニガテとか嫌いな人みたいだけど。レミアは何なんだよ、別に教えてくれても良いじゃん。そんな事を考えてると、一つ疑問がわいた。

「ロア、一つ良いか。ロアはいつから、『ブレイカー』の事を知っていたんだ?」

「大体、二年程度前からですかね。当時は異世界のことすら匂わせてなかった。ごく小さな、無名に近い団体ですね。まぁ、当時は宗教団体みたいな活動をしていたみたいですが」

 宗教団体って質悪いな。僕の世界じゃ無名な宗教の信者の方が犯罪臭放ってるのが多かったもんな。オウム真理教とか。それ以外はどうだか知らないけど……。

「それが今になって力を付けて、奴らの目的を達成しようとしているのか」

「今の『ブレイカー』の規模は、どれ位なんですか?」

「正直、私にも分かりません。すいません。私が提供出来る情報はこれくらいまでですね」

 まぁ、とりあえず僕らの知らない情報が手に入ったから、結果は上々だ。だがこれで、『ブレイカー』の手がかりがなくなった。

 ん?何で僕は『ブレイカー』の事を追おうとしてるのだろう。そもそも、僕は元の世界に帰りたいが為にレミアに着いて来ているだけだぞ。

「ごめん。話の腰を折るようで悪いんだけど、何でそんなに『ブレイカー』に躍起になってんの?僕は早く帰りたいんだが………」

 僕はここで空気を読まない発言をした。だが、ここで怒られても悔いはない。だって僕にそんなことする必要ないもん。

「おや、さっきと言っていることが違いますね。ユキヤ、あなたは自分の意志でここにいると言いましたね。それなのにもう帰りたいとはどういう事でしょうか」

「じょ、冗談です。僕も手伝います。というより、手伝わせてください」

 ロアが黒い笑顔でそう言ってきた。僕はその笑顔を見た瞬間寒気が走り、反射的にそう返してしまった。怒られた方がマシだった。この男、めちゃ怖いよ。僕の意志も弱いが、この人には誰も逆らえないだろう。口は災いの元、先人達の気持ちがよく分かる瞬間だった。

「そうですか~。それは助かります。こちらとしても人手は多いに越したことはないですから」

 この人、ぜってー仕組んでるわ。この鬼畜眼鏡がっ。

「何か言いましたか?」

「いえ、何も」

 この人、読心術まで持っているのか。油断ならねぇ。こうして僕は、半ば強引に手伝わされることになった。

「とりあえず、今夜はもう休んでください。詳しいことは明日説明します」

 僕らは解散することになった。その時、背後から人の気配がした。

「あれれ~?もう解散しちゃうの。俺来たばっかだってのに」

 その人は長い赤髪に緑の目をした、僕の見たことのない青年だった。

「ゼロ・クライシス様、遅れて登場!!ってな」

 そうしてその人は―ゼロ・クライシスは笑った。


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