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第六話 「えっ、そんな能力聞いてない。僕、生きて帰れるかな?」

 次の日、僕らは遺跡調査の為石像と戦った広間へと向かった。

 そこには、黒マントとフードを纏った人がいた。

「僕らはずっと、遺跡の入り口近くにいたよな。僕は見てないが、誰かあんな人が遺跡に入るの見たか?」

「いや、僕は見た覚えはない。しかしこの遺跡の入り口はあの場所一つのはずだが…。一体、どうやって…」

「わたしも見なかったよ」

 レイの言うことが本当なら、あの人がこの遺跡内部にいるのがおかしいんだ。

 僕らが怪しんでいると、僕らに気付いて無いのか黒ずくめの人は独り言を言い出した。

「ちぇっ、せっかく良い石像が見つかったからボクの魔力を使って、ゴーレムにしたのに~。どこの誰だよ壊したの。聖槍も持って行かれちゃったし。聖槍は『あの方』の計画に必要なんだけど~。失敗するのはマズいよね~」

 どうやら、声を聞く限りでは女の子みたいだ。ボクっ娘って、こっちにもいたんだ。

「レイ、どうする。一度戻るか?アイツ、この聖槍を狙ってるみたいだし」

「確かに、相手の目的も正体も分からないからな。一度出直そう」

 僕らが相談していると、黒ずくめの少女?がこっちを向いた。

「え?ちょっとまって。今の聞かれちゃった?ヤバいじゃん。どうしよう。困ったよ~」

 向こうは今更気付いたらしく、パニック状態に陥ったみたいだ。

「とりあえず、口封じしなくちゃ。行くよ。覚悟してね」

 そう言うなり、黒マントとフードを脱ぎ捨てた。やはり、予想通り女の子だった。短めの黒髪に、背は低めだがスカートから見えるスラッときれいな長めの足。しかも結構かわいい。その少女の腕の中には、小さな人形が10体近く存在し、それを全て投げつけてきた。投げられたそれらは、巨大化し僕らと変わらない大きさになった。

「こっちの世界じゃ、こんなことも出来るのか?」

 僕は驚いて、二人に聞いた。しかし、答えは予想を反した物だった。

「いや、僕の覚えてる中ではこんなタイプの人形も魔法も、存在しないはずだ」

「わたしも、こんなの、見たこと無い」

 僕たちが困惑していると、ご丁寧にも教えてくれた。

「アハハハッ。君たちには分からないよ。この力は異世界の物だからね」

「なっ!異世界だと?お前も異世界からきたのか?」

 僕はその言葉に驚いた。

「お前も?何、君も異世界から来たんだ~。奇遇だね。まぁ、それでも容赦しないけど」

「ユキヤッ。詮索は後だ。来るぞ」

 既に二人は武器を構えていた。

 僕も仕方なしに剣を抜いた。聖槍は使わない。使うとしたら、命が危ないときだけだ。それ以外で使ったら、力が大きすぎて制御できないと思う。

「そういえば、まだ名乗ってなかったね。ボクはロンド。この世界を破壊し、新たなる秩序へと導く組織『ブレイカー』の幹部。『終焉のロンド』だよ。死に逝く君たちに教えてあげるなんて、ボクってやさし~」

「本当に優しいんなら、見逃してくれないかな?」

「ゴメンね。それは無理なんだ。でも安心して、楽に逝かせてあげるから」

 そう言うなり、人形達が向かってきた。

「ユキヤ、レミア、一度散るぞ。レミアは後方から本体を、僕とユキヤでレミアを守りながら人形どもを片付けるぞ」

「了解。任せとけ」

「二人とも頑張って」

 そう打ち合わせると、僕らは別れた。僕は人形を6体、レイは4体相手にしている。

 僕はレミアの方に人形が行ってないことを確認すると、人形達に斬りかかった。だが、流石は人形。斬っても突いても、お構いなしで僕に攻撃してくる。しょうがない、新しい戦法で行くか。 

 僕は剣に魔力を溜めた。ここまではいつもと一緒だ。しかし、今回は違う。剣に魔力を溜めたまま、僕はその場で回転した。剣に溜まっている魔力は風属性。それを利用して、僕を中心に竜巻を発生させた。それにより、人形達は竜巻に巻き込まれた。

 ただの竜巻なら、人形達にダメージは無いだろう。だがこの竜巻は、中心以外、鎌鼬が起きている。それにより上半身と下半身に分かれたり、四肢が無くなり動けなくなったりすることになる。

 そして僕は無事に、6体倒し終わった。レイに加勢しようと思ったが、レイの方はレイの魔力で4体とも、岩の槍に串刺しになっていた。レミアの方は双銃で攻撃しているが、ロンドに全てかわされてる。

 僕とレイは、ロンドの方に攻撃を仕掛けた。するとロンドは僕とレイ、それぞれ手を向け僕らを吹っ飛ばした。

 僕はかろうじて受け身をとった。レイの方はとっさに盾でガードしたのか、体勢を崩さずに押し戻されたらしい。

 僕もレイもなにが起きたかをとっさに理解できなかった。そこに隙が出来たのか、僕は近づいて来たロンドに対しての対応が一瞬遅れた。

 僕は身を守るために防御しようとしたが、遅かった。決定打にはならなかったが、ロンドのよくわからない攻撃にかなりのダメージを受けた。そこで僕はロンドの攻撃をようやく理解した。

「その攻撃、魔力に近いけど、なんか違う。お前、魔力以外にもなんか違うもん使ってんだろ」

 レイもレミアも驚いたようだ。

「そのと~り。僕が使ってるのは魔力じゃなくて『気力』だよ。闘気を溜めて手や足、武器とかで相手にヒットする瞬間に撃ち出す。防御やカウンターに向いた力だよ」

「馬鹿な。そんな力、聞いたことがないぞ」 

「ボク、最初に言ったよね。この力は『異世界』の物だって」

「これで、異世界が無数にあるって証拠になったな。それでも状況は変わらないけどな」

 僕のいた世界じゃ、闘気なんて力はなかった。そう、これで昨日の仮説が一つ証明された。だが今はそんな場合じゃない。

「近距離が無理ならコイツでどうだっ」

 僕は剣に溜めた魔力で、飛ぶ斬撃を放った。しかしそれも、弾かれてしまった。

「これでもまだやるの?いい加減諦めたら」

 ヤバい、これ絶体絶命だ。しょうがない。聖槍使うか。その時、僕の頭の中に一つ策が生まれた。僕は聖槍を抜き払った。

「そ、それは。聖槍じゃない。ボク、それが必要なんだ。それを渡してくれれば、見逃してあげるよ」

「それはそれは、ご苦労なことで。だけどな、「ハイ、そうですか。」なんて簡単に渡せねぇな」

「じゃあいいよ。力ずくでとるから。」

 そう言うなり、こちらに向かってきた。予想道理に。

「レミアここ一面に水を引いて。それから、二人は外に出てくれ」

 レミアは僕の言う通り水を出してくれて、二人はここからでた。僕はそれを確認すると、そこから一歩下がり地面に手を着いた。

 ロンドは僕のいたところに着地した。

「これで終わりだ」

 僕はそう言うと水に魔力を流し込んだ。次の瞬間、僕とロンドに激しい電流が流れた。

「キャァァァァァァァァァァァァァァ」

 ロンドはものすごい悲鳴をあげている。

 僕は電流を魔力に変換するのと、魔力を電流に変換するのを同時進行で行っている。普段僕は、風属性の「風系統」しか使ってない。だけど僕にはもう一つ使える魔力が、風属性の「雷系統」がある。僕は今、その力をフルに使っている。保って後五秒だ。

 五秒後、ロンドはふらつきながらも立っていたが、満身創痍のようで立ってるのがやっとらしい。

 しかし、それは僕も同じだ。だけど僕の方が有利だ。いや、「僕らの」か。レミアとレイが、戻ってきた。僕の方を見て、あまりの怪我に驚いているようでこっちに向かってきた。急いでるみたいだ。

「どうする。まだ、やるのか?お前の方…が不利だぞ」

「ボ、ボクもそこまでは…、バカじゃ、ない。けど、覚えときな…よ。つ、次はそれを、貰い…受ける、よ。覚悟、してね」

 そう言うと、何かを地面に投げつけた。それは光を放った。光が無くなった頃には、ロンドはいなくなっていた。

「ユキヤ。大丈夫?」

 と、言いながらレミアが後ろから抱きついてきた。今の僕は力が入らないため、そのまま前に倒れ込み、思いっきり顔と地面がぶつかった。

「ご、ゴメンねユキヤ。わたしの所為でもっと怪我酷くさせちゃって」

「とりあえず大丈夫だから、退いてくれ」

 レミアは素直に退いた。

「ユキヤ。お前は一体何をしたんだ?」

「水に電流を流した。それだけ」

「馬鹿かお前は。一歩間違えたら死んでいたんだぞ」

「その辺に関しては、問題無し。電流を魔力に変えたから」

「ユキヤってそんなことが出来たの?」

「そんなって、みんな出来るんじゃないのか?」

「普通はそんな事できないぞ。聖槍に認められるといい、規格外過ぎるぞお前は。」

「そ、そうなのか。」

 僕は自分の事なのに、なにも実感がなかった。

「とりあえず、調査を先にしないか?僕ももう、大丈夫だし」

「それもそうだな。これ以上遅くなっても困るしな」

「ユキヤは極力、戦闘避けてね。さっきの戦いで一番ダメージ受けてるし」

 「分かってるって」

 その後、遺跡調査を終わらせた僕たちは、昨日と同じ場所で夜営の準備をした。

「なぁ、レミア。『ブレイカー』って組織、聞いたことあるか?」

「ううん。わたしも聞いたこと無いの。ゴメンね」

「お前、思ったけど謝りすぎだろ」

「そっかぁ。ゴメンね」

「いや、だから謝るなって。僕が言いたいのは、悪くもないのに謝るなって事」

「うん、ゴメンね」

「いや、だから…。ハァ、もう良いか。レイは知ってるか?」

「すまない。僕も聞いたことがない。だが奴は世界を破壊し、新たなる秩序へと導く組織だと言っていたな」

「それに、『あの方』って誰なんだ?」

「ギルドに行けば、何か情報があるかも。一度ミアネスに戻ろ。報告もしなくちゃだし」

「確かにギルドに行けば、何かわかるかもしれない」

「じゃあ、ミアネスに帰還だな」

「そ~なるね」 

 そして僕らは、ミアネスに戻ることとなった。

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