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第三十一話 「ロアの依頼―レミア編その①―」

 注意

 今回はレミア視点です


 ユキヤと別れた後、もう一時間位は経ったと思う。わたしは森の中にいる。木々に隠れてるけど、気配からして十数人の正体不明の人たちに追われてるみたい。わたしはなるべく気付いたことを相手に悟られないように歩いてる。しばらくすると開けた場所に出た。その場所の真ん中ら辺に行くと木の陰から続々と見た目からして危なそうな男たちが出て来た。

「運が悪かったなお嬢ちゃん」

「俺たちはよぉ、俗に言う人攫いって者よぉ」

「グヘヘヘッ。大人しく捕まりなっ」

 そう言って男たちは一斉にわたしに向かって襲いかかってきた。

「うーん。あんまり気乗りはしないけど、仕方ないよね。…水牢よ、愚者を呑み込み、永久に閉じこめよ」

 わたしがそう唱えると、男たちは悲鳴をあげる暇もなく、いくつもの巨大な雫が閉じ込められて、そして次の瞬間には凍り付いていた。

 それを見てわたしは独り言のように呟いた。

「ユキヤって絶対に勘違いしてるとおもうんだ~。だってわたしは優しくない。場合によってはどんな残虐なことさえも出来ちゃうんだもの、簡単に、何も思わず、淡々と…」

 わたしは嘘つきだ。ユキヤの事は本当に好き。これは嘘じゃない。でも他はどうなんだろう?わたしは何もユキヤに教えてない。本当のわたしを教えてない、誰にも。本当のわたしを知らないユキヤはわたしの事を好きだと言ってくれた。でも、本当のわたしを知ったとき、同じ様に好きと言ってくれるのかな?…無理だよね。こんな非道い女の子なんて拒絶されちゃうよね………。

 背後から物音が聞こえた。振り向くとそこには大剣を構えた屈強そうな男がいた。その人は右目を黒い眼帯で隠してる。多分、風貌から見てさっきの男たちのボスとかリーダーみたい。

「だらしねぇ連中だな、おい。こんなガキに凍り付けにされるなんてよ。とんだ雑魚どもだ」

 凍り付いてた男たちを見てそう吐き捨てた。それから唾を吐いてわたしの方を向いた。そしてわたしを見定めるように見てきた。

「ふん、胸がちと寂しいがまぁ、全体的に見れば中々の上玉だな。バカな変態どもに売りつければ大金になりそうだな」

 わたしは男が漏らしたその言葉にカチンときた。確かに、わたしだって小さいことにはコンプレックスを持ってる。けどユキヤは気にしなかったし、あの時だってわたしを………。

 ………と、とにかくわたしの一部分をバカにしたことについてはしっかり制裁を下さなきゃね♪

 わたしは双銃で乱射し始める。距離としては三メートルとない距離では避けられない筈。あの男がどう思おうと関係ないよ。わたしを怒らせたのが悪いんだから。

「不意打ちか?まぁ、大人しく捕まるんならこのバカどもでも簡単に捕まえられるしな」

 避けられないと思っていたけど、簡単にその考えは壊された。男はその体型からは考えられないようなスピードで次々と避けていった。そしていつの間にかわたしは背後に回り込まれて、羽交い締めにされた。わたしはそれを振り解こうとしてじたばたしてみたけど、効果はなかった。

 不意に太股に堅い物が当たった。

「売りいく前に具合を確かめとくとするか」

 そう言って男はわたしの首筋のあたりをペロリと一舐めした。その瞬間、わたしの中で何かが弾けた。

「…………………」

 何を言ったのか覚えてない。気付いたときにはわたしの手は血みどろでその横には、血だらけの肉の塊が置いてあるだけだった。わたしは魔法で雨を降らせて血を洗い流した。

「あはははははははははははははははははは……………」

 わたしは狂ったように笑い出していた。ユキヤに合わせる顔なんてもうないんだ。こんな汚れきった手じゃユキヤを触れないよ。ユキヤユキヤユキヤユキヤユキヤユキヤユキヤユキヤ。知られたくない知られたくない知られたくない知られたくない知られたくない知られたくない知られたくない知られたくない。みんなに嫌われる。そんなのは嫌だよ。みんなに嫌われたくない、ユキヤに嫌われたくない。もう、誰にも嫌われたくないの。あの時だってそうだった。もう、繰り返したくないよ、こんな事…。

「………そうだ。わたしが死んじゃえばいいんだ。そうすれば繰り返すことも嫌われることもないよね。何で思い付かなかったんだろう?」

 わたしは震える手で銃を持ち直して自分のこめかみに当てた。こんなわたしでも、みんなは、ユキヤは覚えててくれるかな?

 わたしはトリガーを引こうとしたその時、思い出した。ユキヤとの約束を。

「ダメだよね、約束、したんだしね。わたしがいなかったらユキヤが困っちゃうじゃん。迎えに来てくれるんだもん」

 いつの間にか泣いてたみたい。雨に紛れてもわかるそれを拭って、わたしは歩き出した。目的地『リミック』に向かって。

 その後、森を抜けて洞窟を抜けたけど、魔物におそわれることも、さっきみたいなこともなかった。さらに歩くと、砂漠に出た。地図によるとこの砂漠の真ん中ら辺に『リミック』はあるみたい。

 わたしは日焼けしないように厚い長袖の服と長ズボンを穿いてターバンを巻き準備した。さらにプラスしてさっきみたいに魔法で軽く雨を降らせながら進むことにした。水属性だと、こういうときに便利だね。

 しばらく歩くと、向こうから数人の人がこっちに向かってきた。何か慌ててるみたい。どうしたんだろ?

「た、助けてくれぇー」

「こ、殺される」

「どうしたんですか?」

 わたしは駆け寄ってきた人たちに聞いてみた。とりあえず、命がかかってるみたい。

「す、砂蟹が、で、出たんだ」

「砂蟹ってなんですか?」

「きょ、凶暴な砂漠の魔物です」

「そ、それに今のはと、とても大きかった…です」

 魔物関係ならわたしの出番だ。とりあえず、助けてあげられそうだ。わたしは雨を降らせるのを止めて、周囲に気を配った。次の瞬間、すぐ目の前の地面が盛り上がり、そこから巨大な蟹の魔物が現れた。サイズ的にはこの前の超獣の二分の一位だけど十分大きい。

 とりあえず、わたしは銃を乱射してみた。しかしそれらは堅いからに全て弾かれてしまった。

「砂蟹は堅い殻に覆われて武器での攻撃はあまり効きません。また、水が苦手です」

「それなら、打つ手はあるね」

 わたしは魔力を溜めながら移動して、乱射し続けた。砂蟹の注意をこっちに引くために。いい感じに砂蟹はこっちについて来てくれた。途中弾丸が切れたけど、魔力で氷の弾を作り上げて打ち続けた。ある程度さっきの人たちと距離を開けたところで、わたしは詠唱を始めた。

「…大いなる水流、悪しきを呑み込む渦となれ」

 砂蟹を覆うような水柱が出現し、それらはやがて回転するように流れ始め砂蟹を瞬く間に呑み込んでいって消滅した。

「うん、これでよし。っと」

 わたしは急いでさっきの人たちの元に急いだ。

「ありがとうございます。本当になんとお礼を言えばいいか…」

「大したことじゃありませんよ。当たり前のことをしただけですよ」

「そうだ!!良かったら、これを貰って下さい。私たちのお礼の気持ちです」

 一人にお礼を言われて、それに当たり障りない言い方で返したら、別の一人がそう言って、わたしに補充用の弾丸と食料を差し出してきた。

「えっ、良いですよ別に。お礼なんて」

「気にしないで下さいよ。これは気持ちなんですから」

「じゃ、じゃあありがたく貰っていきますね」

 その後、別れてしばらく歩くと街が見えた。きっとあそこが『リミック』だと思う。更に十数分かけて到着した。

「えぇっと、確かここにいる『アリス』さんを捜すんだよね」

「私がアリスだがどうかしたか」

「え?キャッ」

 いつの間にか背後に長い黒髪の女の人が立っていた。全然気付かなかったよ。

「ふむ、驚かせてしまったようだな。少女、名前は何という?」

「えっと、れ、レミア・フルールです」

「ほぉ、君か。ロアの言っていた娘は」

 アリスさんは綺麗な女の人だった。凛としたその表情は格好良くて、スタイルも凄い。思わず『姉御』と呼びたくなる雰囲気の人。

「おっと、自己紹介がまだだったな。私はアリス・レジットだ。こんな所で立ち話するのもあれだな。私の家に来ると良い」

 アリスさんはそう言って家まで案内してくれた。そこは大通りの真ん中ら辺に位置する場所だった。家は普通の民家だった。

「さて、入るが良い。狭い場所だがな」

「お、お邪魔します」

 中は思っていたより広かった。家具や置いてある物を見る限り一人暮らしだと思う。

「少し散らかってるがくつろいでくれて構わないぞ」

 何だろう、さっきから怪しい視線を感じるよ。でもここにはアリスさんしかいないわけだけど。ふと、アリスさんの顔を見てみるとこっちをじっと見ていた。そして一言。

「あぁ、可愛い…」

 怪しい視線はアリスさん!?いやいや、そんな訳ないよね。うん、たぶん違うよ、ね?

「レミア君」

「な、何ですか?」

「私とイチャイチャしないか?」

 やっぱりこの人でした。

「しませんっ。絶対しませんから」

「何故だ!?何故断るんだ」

「わ、わたしには好きな人がいますから」

「ふむ、なら致し方ない。諦めるか」

 何だろう、自分の身が危なそう。この人、夜とか夜這いに来そう。

「さて、修行の方だが。まずは一緒にシャワーを浴びるところから始めようか」

「お邪魔しました」

 わたしはすぐに荷物を持って帰ろうとした。

「待て、何故帰ろうとする」

「わたしの身が危ないからですよ」

「冗談だ」

 この人が言うことは全部本当の事に聞こえるから冗談だとは思えなかった。

「まぁ、今日は疲れただろうから明日で良いだろう。レミア君の部屋はこっちだ」

 言われるままについて行くと廊下の突き当たりの部屋に来た。中には何故かダブルベッドと二つの枕が置いてありシャワールーム付きだった。

「私は隣の部屋にいるからゆるりとくつろぐが良い」

 そう言ってアリスさんは出て行った。わたしはしばらくの間自分に安息がないことを悟り、これからの修行を憂いるしかなかった。


 久々の投稿です。風宮です。

 二週間ばかり更新出来なくてすいませんでした。本当なら昨日投稿するはずでしたがちょっとばかし『アリス』というキャラを強めた結果、今日になりました。本来ならもっと特徴がなくてただの美人の予定でしたがそれじゃあだめだと思って肉付けしたらこんなレズっぽいキャラになっちゃいました。現在、多少は反省中。

 今回はレミア視点でしたが、どうでしたか?女の子視点で書けてたでしょうか?とてもとても心配です。それっぽくなければ指摘してくれましたら極力直せるようにします。

 それではそろそろ時間的に厳しいんで、それではっ。


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