第二話 「そんな理由で連れてこられたんだ。それよりも、戦い方と魔法を教えて下さい、レミア先生。」
「異世界ってホントにあったんだ。イヤ、でもコレを含めて夢かもしれないし…」
レミアの衝撃告白に驚き、取り乱していた。かれこれ20分はブツブツ言って現実逃避している。そこに、
「チョットいい加減に止めない?ソ。」
と、レミアが上に手をかざすと、氷の固まりが僕の頭上から落ちてきた。
「えっ…、あっぶねぇ。何が起きたんだ?」
間一髪避けれたけど一体何?。
「魔法を使って、氷を出したんだよ」
「魔法って、マジかよ…。これで、氷にさわって冷たければ現実って事か」
試しに氷をさわると、
「冷たいってか、手がくっついて離れねぇ」
あまりの冷たさに手がくっついてしまったようだ。すると、
「えいっ!」
と、レミアが氷に手をかざすと、そこから氷が溶け始めた。
「ありがとう、助かったよ」
「エヘヘ、どういたしまして。とりあえずこれでここが異世界だって信じてもらえてかな?」
「ソレは信じるよ。確かに僕のいた世界じゃ魔法なんて存在しなかったからね」
「良かったぁ~。信じてもらえて」
「でも、何で僕をわざわざこの世界につれてきたんだ?」
「それはね、君の力が必要だから、かな?」
「イヤ、かな?ってどういうこと?」
「とりあえず、簡単に説明すると、私の所属している組織の幹部の人に、強い人捜してこいって言われたの。そこでね、わたしは家に伝わる秘伝のアイテムを使ったの。でねその効果が、『異世界の強者のところに続く光の門を開ける』って効果だったの」
「それで僕のところに通じたから連れてきた、ということになるのか」
「だね♪」
とりあえず僕の心の中に浮かんだ言葉を、彼女に言おう。
「ごめんなさい、人違いです」
「え?えぇぇ~?」
驚くのも無理はないと思う。けど普通の高校生に、取り柄なんて読書の速さしかない僕が、強者な訳がないじゃないか。そう思っていると、
「いいよ、なら腕試しをしようよ」
「イヤ、だから僕は…」
「いくよ」
そう言うなり、レミアはいきなり双銃で攻撃してきた。それをギリギリで回避する。
「まだまだいくよ~」
と言うと今度は、双銃で五連射してきた。それを木の陰に隠れて交わすと、
「逃げてばかりだね。腰の剣は飾りなの?」
と言ってきた。言われてみたら、確かに腰に剣があった。
「あぁ、もぅ。ヤケクソだぁ」
僕は木の陰から出て行き、腰の剣で抜刀と同時にレミアに切りかかった。しかしそれはかわされて、レミアのカウンターをまともに食らった。受け身をとって何とか受けるダメージを軽減したが力の差、経験の差がここで現れた。レミアは受け身の後の隙を逃さなかった。彼女はそのまま僕に素早く接近して、僕の胸に銃口当てこう言った。
「ゴメンね。ホントに人違いだったみたい」
「わかったんなら、出来るだけ早く元の世界に返してほしいんだけど」
僕は、ようやく帰れると思ってホッとした。次の言葉を聞くまで。
「それもゴメンね。そのアイテムは一度使うとどこかに飛んでっちゃうんだ。だからそれを見つけないと、戻してあげられないんだ。ホントにゴメンね」
「へ?じゃあ僕はどうすればいいんだ?」
「とりあえず着いて来て。安全な町に移動するから。それから、町に着くまでの間、魔法とか戦い方を教えてあげるね。」
「わかった。よろしくお願いします。」
「あっ、それと君の名前目立つから、ここから先は、んーーそうだねぇ…。うん、君はこれからユキヤ・ワイエルって名乗ってね。」
「OK♪ユキヤ・ワイエルだな。じゃあこれからよろしく、レミア。」
「うん、ヨロシクね。ユキヤ♪」
それから一度森を抜けた。今は平気だが日が沈み始めると、魔物が活発に行動するらしい。というより、やっぱり魔物っているんだ…。
「じゃあ、まずは魔法の基本からやっていこうね。」
「よろしくお願いします。レミア先生。」
「うん。まず、魔法は四属性八系統に分かれるの。四属性ていうのは、火、水、風、土の四つを指しているんだ。それで火と水、風と土ていうふうに対応しているんだよ。」
「成程、火と水は互いに弱点である、みたいな感じか。」
「その通り。で、八系統ていうのは、四属性を細かく分けると、八種類に分かれるの。火は火と光、水は水と氷、風は風と雷、土は土と闇にね。」
「コレも、四属性みたいに対応するものってあるの?」
「うん、その通り。この場合は、光と闇、氷と雷になるね。」
「成程。よし、理解した。」
「じゃあ、ユキヤの適性属性を見つけよ。」
その後、色々試したが、どうやら僕の適性属性は風属性の二系統のようだ。それでも、そんなにうまく操れないけど。レミア先生曰く、練習すればどんどん力のコントロールが出来るらしい。何でも、僕の中の魔力は普通の人より多いらしい。
そんな感じで指導を受けている内に、気付けば三体の狼のような魔物に囲まれた。
「じゃあいきなり実戦だね。わたしは手を出さないから。ユキヤ、頑張ってね。」
レミアは本当に手を出さないつもりらしい。僕は呼吸を整えてから、風属性の魔法を自分にかけて移動速度を上げて、一気に間合いを詰めて抜刀切りで一体倒した。そのままの勢いで後ろを向き、剣に魔力を込めて斬撃を飛ばした。それは貫通し、二体をまとめて葬った。
「わぁ、スゴいスゴい。いきなりだったのに、わたしと腕試ししたときと動きが全然違ったよ~。こんな短時間で身につけるなんて、やっぱりユキヤには才能があるんだよ。」
「そうなのか?自分じゃよくわからないな。」
「ふ~ん。そうなんだ。あっ、町が見えてきたよ~。」
「おっ本当だ。なぁ、あの町はなんていうんだ?」
「あの町は、ミアネスだよ。村だと村長のラストネームに、町だと領主様のラストネームになるんだよ。」
「そうなのか。」
「それより早くいこうよ~。わたし疲れちゃった。」
「だな。じゃあ急ぐか。」
こうして僕らの旅は、本格的に始まった。
だが、この時まだ僕は知らなかった。悪夢がこんなにも近くにあるなんて思いすらしなかった。まさか、いきなり命を狙われるなんて……。