第十八話 「砂漠船登場。これの動力は一体…?え?魔力なの?」
諸注意
・今回の話はロアが鬼畜すぎます
・男性陣に悲劇が………
・ユキヤが色々と壊れます
・無駄に長い
こんなでも読んでくれる方はどうぞ続きをお楽しみ下さい
「ところで、どうやって『メシア』島に行くんだ?」
僕はここで、一番知らなきゃいけない事を聞いた。だって僕、『ミアネス』周辺以外の所なんて、行ったこともないしわかる訳ないじゃん。
「とりあえずはここから南にある、砂漠地帯を抜けてそこからは海ですね」
「船か。最近、イヤな思いをしたばかりなのにまた船なのか」
レイが心底嫌そうな顔をしてそう言った。いや、顔は仮面でわからないけど…。僕らとの別行動中に何かあったのか?
「そういえばよ、俺たちとの別行動中の事。まだ聞いてないんだけどよ」
そういえばそうだよ。ゼロに言われるまで聞くのを忘れてた。てか、僕の気絶中に何も話は進まなかったんだ。忘れっぽい連中ばっかだな。
「そうでしたね。それでは、道中にでも話しますよ」
「歩きながら大事な話をするのはいただけないね。あたしは」
確かに歩きながらだと、聞き逃したりするもんな。僕の場合は。
「いえ、徒歩で砂漠には向かいませんよ」
「え?それじゃあどうやって行くんですか?」
リアが首を傾げながら聞いた。確かに僕も気になるな。何だ、何か乗り物でもあるのか?
「砂漠船で行こうかと思います」
「え!?砂漠船ですか?乗れるんですか?」
砂漠船という言葉を聞くと、レミアのテンションがかなり上がった。砂漠船て何?何なの?そんなにテンションが上がるものなの?みんなも何か納得したような顔したり、驚いたりしているし。
「なぁ、砂漠船って何だ?」
「それは見てからのお楽しみだな♪」
「あれは直接見た方が良いね」
「確かに、言葉で説明するのは難しいな」
「とにかくスゴいんだよ、砂漠船は!!」
「小さい時から、一度乗ってみたかったんです」
ゼロ、ユーノ、レイ、レミア、リアがそう言った。何だ、どんな物なんだ?すごい気になるんだけど。教えてよ、誰か。
「それでは、格納庫へ行きましょうか」
僕らはロアに連れられ、砂漠船の格納庫へ向かった。そこは、ギルドの地下にあった。そこで僕が見たのは、自分の目を疑う物だった。
「な、な、な、何だこれ…」
そこにあったのは、見た目はただの海に浮く船と変わらなかった。
「普通の船と変わんないじゃん。何処が凄いんだよ?」
「見た目は普通の船ですよ。凄いのはそこではありません」
そう言うと、ロアが砂漠船に乗り込んだ。すると、なんと砂漠船が浮き始めた。
「どうですか?わかったでしょう、何が凄いのか」
ロアの声が、何処からかロアの声が聞こえてきた。
「それでは皆さん、乗って下さい」
僕らはロアに言われるがままに乗り込んだ。中も普通の木造船と、変わらなかった。「どうやって動いてるんだ?この船」
「あー。実はあたしも知らないんだよね」
「俺様も~~」
「すまん、僕も知らない」
「わたしも、乗ったの初めてだから知らないんだ。ゴメンね」
「私も知らないんです。見たことだけは何回かあるんですけど…」
みんな知らないらしい。じゃあ何であんな興奮してたの?
「この船は乗船者の魔力で動くんですよ」
何時の間にか、ロアが背後に立っていた。神出鬼没だな、コイツ。
「はぁ?ちょっ、初めて聞いたんだけど、そんな話」
「えぇ、これを知ってるのは極一部の者だけですから」
「それじゃあ楽にならないじゃないか」
「そんな簡単に砂漠越えが出来るわけないじゃないですか」
ゼロとユーノの抗議の声もロアによって斬られてしまった。やっぱりコイツは鬼畜だよ。
「ユキヤ、貴方にはまだお仕置きが足りないらしいですね」
「すみませんでした。これからは口が裂けてもそんな事は言いませんので、お仕置きだけは勘弁して下さい」
僕は速攻でロアに謝った。忘れてたよ。コイツが読心術を持ってること。気に恐ろしきは人の心じゃなくて、ロアだろ。これじゃあ。
「まぁいいでしょう。それより、誰がこの装置に繋がれますか?」
ロアの手には、数本のコードが握られていた。ヤバい、僕死んじゃうよ。雪菜を助ける前に。
僕は素早く、みんなの方を見た。そこには自分だけは、とみんなの目が叫んでるように見えた。そして、誰を蹴落とすかみんながみんな、隙を狙ってる。なんて薄情な奴らなんだ。そんな事を思ってると、レイがしゃべり出した。
「みんな。ここはアレで決めるぞ」
「アレだろうな、ここは」
「アレが適任だろうね」
レイとゼロとユーノの言ってる、アレって何だ?
「やっぱりアレですか…」
「うん。ここは…『ジャンケン』で決めるべきだね」
僕はここで盛大にずっこけそうになった。え?アレってジャンケンなの?
「あっ。ユキヤ、ジャンケンってのわね…」
「いや、ジャンケンは知ってるよ。僕の世界にもあったし」
「じゃあ説明はいらないね」
「うん。僕の知ってるジャンケンだったらね………」
本当にここは異世界なのかよ。どんだけ文明が被ってんだよ。
「じゃあいくよ。」
「「「「「「最初はグー。ジャンケン、ポンッ」」」」」」
結果はレイとゼロがグー。僕とレミアとリアとユーノがチョキだった。え、ちょっ。負けですか?負けなんですか?
「クソッ。僕としたことが、負けてしまうなんて」
「俺様ショッック」
「やったぁ、セーフ♪」
「ラッキーだったね」
「お兄さん、良かったですね」
あれ?何で二人が悔しがってるの?何で女性陣は喜んでるの?僕はその光景に混乱した。
「あれ?ユキヤ、どしたの?」
「いや、何で喜んでるの?」
「だって、チョキはグーに強いんだよ。勝ったらうれしいでしょ?」
僕の世界のジャンケンとは強弱が真逆らしい。うん。ここはしっかり異世界だ。
「早くどっちがやるのか、決めなよ」
ユーノ、死刑判決を早く下すようなこと言っちゃダメだよ。
「レイ君、どっちが勝っても怨みっこ無しだからな」
「そんなことはわかっている。さっさと決めるぞ」
「「最初はグー。ジャンケン、ポンッ」」
二人は、意を決したようで神に祈りを捧げるように手を組んで、そしてジャンケンをした。結果は………、
「僕に勝とうなんて、百年早かったな」
「……俺、………死んだな…………」
レイがパー、ゼロがチョキだった。ゼロ、お前のことは忘れないよ…。
「それではゼロ、こっちに一緒に来て下さい」
「イヤだぁぁぁー。まだ死にたくねぇよぉぉぉぉ…」
じたばたと悪足掻きをしているゼロをロアが引きずって奥の部屋に連れて行った。一体どんな目に会うんだろう?数秒後には、ゼロの悲鳴が船の中に響いた。
「ギャアァァァァ、し、死ぬうぅぅぅぅぅ」
ゼロ、お前の墓には毎年、お参りして線香焚いてやるよ。お前の犠牲は無駄にしないよ。
「でわ、出発します。皆さん、そこのいすに座って待っていて下さい」
ロアに言われて、僕らはいすに座った。クッションもきいてるし、座り心地も悪くない。結構良いいすなんだと思う。ロアは僕らが座ったのを確認してから、自分は部屋から出ていこうとした。そして不吉な言葉を置いてった。
「それと、次はレイネスなので。覚悟しておいて下さいね。」
ロアがそう言うと、レイはダッシュで船から下りようとした。しかし、何時の間にか僕らの体はシートベルトでいすに固定されていた。
「その後も、ローテーションしていき、必然的に一人一回以上は装置につながれるので勝ち組の皆さんも心の準備をしておいて下さい」
僕はこの時思った。いや、僕だけじゃない。みんながそう思っただろう。「何でコイツはこんなに鬼畜なんだ…」と。
「そんな怖い顔でこっちを見ないで下さい。怯えて眠れなくなりそうです」
そんなことを言ってもその顔は全く怖がってろ様子もなく、逆にこっちを嘲笑かの様な表情を浮かべていた。こっちが眠れなくなってるよ、ドSな眼鏡鬼畜野郎が。
「そんな貴方たちに朗報ですよ。砂漠を抜けるのにかかる日数は一日半です。良かったですね。装置に繋がれるのはゼロとレイネスを入れても三人だけで済みます」
じゃあ、あと一人を僕とレミア、ユーノ、リアの中から選べばいいのか。………死亡フラグがジャストミー。
「ユキヤ、お願い…出来るかな?」
「頼むよユキヤ。アンタしか居ないんだよ」
「お兄さん、私、怖いのと一人は嫌なんです…」
止めてくれ、三人とも。そんな上目遣いでこっちを見ないでくれ。僕だってやりたくないんだよおぉ。断れないじゃないか、そんな事をされたら。
「………わかりました…………。やればいいんでしょ?やれば………」
死亡フラグを手に取ってしまった僕。どうなるんだろう?
「では、ゼロ、レイネス、ユキヤ。お願いしますよ」
ロアはそう言って部屋から出て行った。しばらくして、船が揺れ上昇を始めた。どうやら出発するらしい。しばらく揺られていると、エレベーターに乗って目的の階層に着いたときに感じる、ガタンッ、という振動を感じた。何でだ?すると、前方からウィーン、と機械音が聞こえてきた。次の瞬間、もの凄い爆音と共に砂漠船は発射された。………空に向かって。
「これじゃあ、飛行船だろおぉぉぉぉぉ」
砂漠船はどんどん高度を上げていき、このまま上昇を続けるのかと思った瞬間、真っ逆様に墜ちていった。
「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁ死ぬだろ、コレ。なのに何でみんな落ち着いてるの?」
そう、みんなは意外なほど落ち着いていた。このままじゃ死ぬよ?死んじゃうよ?僕は死の覚悟をした。地上五十メートル位だろうか、急降下が終わりゆっくりと着地を始め、そのまま前進を始めた。何この絶叫マシーン、心臓止まるかと思った。
「なかなかのスリルだったな」
「やぁ、乗れてよかったよ。一生の思い出だね」
「まだ、心臓がバクバクします」
「オモシロかったね、ユキヤ」
………何だこれは?みんな、これを楽しみにしていたのか?僕だけ知らなかったのか?
「みんなはこれを知ってたのか?」
「うん」
「知っていたが?」
「もちろん」
「お兄さん知らなかったんですか?」
「そのまさかだよ。何で説明してくれなかったんだよ?」
今の僕には、みんなが薄情に見える。……リアは僕の状況を知らないから別だけど………。
「すまない。お前が異世界から来たことを忘れていた」
「あははは…。あたしも、忘れてた。悪かったね」
「…ゴメンねユキヤ。わたしが連れて来てたのにそのこと忘れてて。ゴメンね」
「え?お兄さんって異世界から来てたんですか!?」
………泣いていいかな、僕?どんだけ忘れられてるのよ。僕は赤ちゃんよりこの世界の事知らないのに、異世界から連れてこられたのに………。何時の間にかシートベルトは外されていたので部屋の隅に行き、いじけていた。
「死亡フラグは取ったけど、いじめのフラグは貰ってないぞ。それに………ブツブツ………」
「すまない。今度ケーキを奢ってやるから機嫌を直してくれ」
「僕は子供か!?」
確かにケーキとかチョコとか普通にスイーツ好きだけどさぁ。
「あ、あたしのむ、胸触っていいから」
「僕はゼロか!?」
男が全員女の胸が好きだと思ったら間違いだぞ。いや、確かに嫌いじゃないけどさぁ。僕だって健全な男子だし…。
「わ、私がい、一緒に寝てあげます」
「僕を犯罪者にするつもりか!?」
僕はシスコンであってもロリコンではない筈だ。ない筈なんだ!!少女趣味なんかじゃない筈なんだ!!!!
「わたしの料理を食べさせてあげるから」
「気持ちは嬉しいけど謹んで遠慮させて貰うよ」
レミアは僕を殺すつもりなのか?僕は何回臨死体験を繰り返せばいいんだ?ツッコミに疲れたよ。肉体的にも精神的にも今なら死ねると思う。
レイもユーノもリアもレミアも僕を元気づけようとしてくれてるのはわかるんだけど、かえって逆効果だって。こんなんじゃあ、
「ところで、何でこんなにユキヤが落ち込んでるんだっけ?」
あはははは………、もう死のうかな?僕の精神状態は崩壊の一歩前だ。
「あははははは。僕はもう寝るよ。お休み」
僕は部屋の隅で小さくなって寝ることにした。こうなったら徹底的に忘れられてやる。
「しょうがない。ゼロの代わりにユキヤを装置に繋ぐか」
「勝手にやってよ。もう、ツッコミに疲れたよ」
僕はレイの言葉にするツッコミを放棄した。僕は全てを諦めた。もう、どうにでもなっちゃってよ、勝手に。
「ならば、奥の手だ。リア頼むぞ」
「はい。了解しました、レイさん!!」
なんかリアのテンションが上がってないか?
「ねぇ、お兄さ~ん。機嫌直してよ~。お兄さんが落ち込んでると、グスッ、私も悲しくなっちゃいます……」
クッ、何でレイが僕の弱点を知ってるんだよ!?何処で仕入れたんだよ、その情報。
「ユキヤの寝言は妹関係が多いからな。これなら…」
僕の自爆かよ、この野郎。僕は寝てる間、何を喋ってるんだろう?
「ユキヤ。あんたがロリコンだとは知らなかったよ…」
「いや、それは誤解だぁぁぁぁぁ。僕はロリコンじゃない」
誤解しないでくれ。引かないでくれよ。
「そうだね。ユキヤはシスコンだよね」
「クッ。それは否定できない」
「そうなのかい!?それならいいんだよ。兄妹や家族は大切にするんだよ」
ユーノ、そこはホッとするところじゃないぞ。ツッコんでくれないと僕がイタいヤツみたいじゃないか。………?何だろう、ユーノの表情が暗いぞ。何でだ?
「ユキヤも元気になったし、レイとリア話してよ。別行動中のこと」
「私はお兄さんの事情が気になるんですけど…?」
「わかったよ。いい機会だしここいらで情報整理しようか」
二時間をかけて、僕はみんなに僕のことをもう一度説明した。何でそんなにかかったって?勿論、雪菜のことも詳しく説明したからですけど何か?その後、僕らはレイとリアの話を聞いた。『先時代の宝具』ねぇ?今更だけど、何かいろいろヤバそうなんだな。聖槍の他にも似たような物があるなんて。しかも内二つは向こうに渡ってるって、最悪どころの話じゃないよな。
「そんな状態なのに、雪菜の救出に手を貸してくれる暇はあるのか?」
「ロアが言うには、「『メシア』島にはおそらく『魔剣』が在ると思うので、ついでにユキヤの妹さんを救出しましょう」だそうだ」
アイツのこと少し見直したのに、どんだけ鬼畜なんだよ。どんだけイヤな奴なんだよ!!
「あたしらは違うさ。ユキナちゃんのために『メシア』島に向かうんだから」
「そうですよお兄さん。ガッカリしないで下さい」
ううっ。ユーノとリアの優しさに救われるよ。
「ゴメンね。大事な話してる途中だけどさぁ、わたし、おなか空いちゃった」
「そういえば、僕も目が覚めてから何も食べてないから腹減ったな。この船にキッチンてある?僕が何か作るよ」
レミアの言葉でその場は食事ムードに入っていった。大事な話はまた後だな。
数十分後、僕は別の部屋のテーブルにミートソーススパゲッティを並べた。材料そろっててよかったよ。
「うわぁ。おいしそう」
「確かに、美味そうだな」
「ユキヤって料理できるんだね。意外だよ」
「お兄さん凄いです。ありがとうございます」
「味の方は保証しないからまずかったら言ってくれ。作り直すから」
「だいじょぶ。ユキヤの料理はおいしいから」
レミア、レイ、ユーノ、リアの見た目の評価は結構いい感じだな。問題は味だけど………。
「おいしいよこれ。ホントに。流石だね」
レミアの舌には適ったみたいだな。
「なかなかだな。美味いぞ」
レイはこう見えて、結構グルメだからな。これはイイ線いったみたいだ。
「うん。うまいよこれは。何杯でもいけそうだよ。おかわりっ」
そんなに誉められると逆に恥ずかしいな。うん。
「お兄さん。とってもおいしいです。私、お兄さんの料理好きです」
そんなキラキラした笑顔みれるだけで十分嬉しいよ。さて、僕もそろそろ食べようかな?
食事も終わり、僕らは船の中をぶらつくことにして解散した。何か忘れたような気がするが気にしない。
「ユーキーヤーくーんー。何か食うモン持ってない?」
「うわっ、ビックリした。ゼロどうしたんだよ?食事なら作ってやってもいいけど」
「今の今までずっと装置に繋がれてて、俺様くたくたなのよ。もう、腹ぺこで死にそう」
「お疲れさん。じゃ、キッチンに行こうぜ。着くまでに逝き絶えるなよ」
「ラジャーりょうかーい。速く行こうぜ」
そんな訳でキッチンへ戻った僕はゼロに食事を作ってやり、地獄へのカウントダウンを過ごした。
「ユキヤ、……交代…だぞ。後は、頼んだ…ぞ」
そして僕はレイと交代し、地獄の燃料役として半日過ごすこととなった。
今回の話は、作者の頭がおかしいときに完成してしまったものです。風宮です。
今回、ユキヤには酷い目にあって貰いました。絶叫マシーンとか、イジメとか、鬼畜眼鏡とか。その他男性陣も酷い目見てますが。
しかも無駄に長くなってしまいました。まさかこんな話で、六千近くいくとは…。
それでも後悔はしてない…訳がありません。絶賛後悔しています。
こんな作者で、こんな話ですが最後までお付き合いありがとうございました。次回からは普通になるはずです、多分。それではっ。