第十六話 「VS『創造』&『変革』。敵キャラの扱い、酷くない?」
「ゼロ、責任とれよ。お前のせいだろ。ヤバいじゃん。ピンチじゃん。」
僕は剣が無いために、パニック状態に陥った。
「ユキヤ君よぉ、何のために背中の聖槍があるんだ?ソレ使えばいいじゃねぇかよ。」
ゼロがそんな事を言い出した。そういえば、僕は聖槍を持ってたんだっけ。最近使ってないから忘れてたよ、武器だってコトを。
「そうだな。そうすればいっか。って、オイ。僕はまだコイツ制御できないんだよ。下手に使って自滅したら怖いし………。」
「ヘタレたこと言ってんじゃないよ。男だったら覚悟を決めな。」
ユーノ、僕はヘタレでいいんで、そんな事言わないで。雪菜残して死ぬわけにはいかないんだよ。あっ、でも死ねば倖枝と会えるのか。ソレも悪くは……、悪いだろ。て、ことで、
「僕は聖槍を使いません。」
「そんな我が儘を訊ける訳無いだろう。」
レイ……、手厳しいよ。少し大目に見てよ。しょうがない、レミアに頼むか。
「レミア、折れた剣をさ、凍らせて氷の刃作ってくんない?」
僕は折れて使い物にならない剣をレミアの方に投げながら言った。
「うん、任せて!!あ、でもでも少し時間かかるからチョット待ってね。」
「わかった、なるべく早く頼む。」
よし、準備OKだ。あれ?ところで何で戦闘準備してんだっけ?
「お前たち、僕たちのことを忘れてないか?」
「お前たち、私たちのことを忘れてないか?」
そうだよ。コイツ等がいたんだっけ。うん、すっかり忘れてた。個性が強いのに影が薄いって珍しいよね。
「おや、まだいたんですか?てっきり私はシェイドと一緒に帰ったものかと思ってました。」
ロア、お前って本当に鬼畜だな。二人ともその台詞聞いて、もう泣きそうじゃん。あ~あ、メアとか言ってた女の子泣いちゃったよ。キラとか言ってたのは慰めてるし。これじゃあ僕は戦えないよ。だってさぁ、美しい兄妹愛だよ。壊せないよ。
「あのさぁ、僕としちゃあの二人と戦いたくないんだけど。」
「わたしもできれば戦いたくないんですけど。」
「そういえば、君の名前何?」
「あ、わたしはリア・アーティスと言います。お兄さんのお名前は?」
「あぁ。僕の名前はユキヤ。ユキヤ・ワイエルだ。ヨロシクな。まぁ、こっちは偽名だけど。本名は、また今度な。」
「ユキヤさんですね。こちらこそよろしくお願いします。」
「………出来ればさぁ、お兄さんって呼んで欲しいんだけど。」
「わかりました。お兄さん♪」
とりあえず、リアと自己紹介をしたけど、可愛いな。マジで妹みたいだ。………雪菜は大丈夫かな?寂しがってないかな?寧ろ僕が雪菜に会えなくて寂しいけど…。僕ってやっぱり、シスコンなのかな?
「リアちゃんって言うの?俺様はゼロ・クライシス。呼び方は~、そうだな、ゼロさん、とでも呼んでね。仲良くしようぜぇ。」
「わたしはレミア、レミア・フルールだよ。ヨロシクね♪」
「あたしはユーノ・レーシアさ。よろしく、リアとそこの仮面かぶってる人。」
「ゼロさんとレミアさんとユーノさんですね。よろしくお願いします。」
「僕の名前はレイネスだ。お見知りおきを。」
「わかったよ。レイネスだね。よろしく。」
なんか、自己紹介タイムになってるな。段々と目的が逸れてないか。
「お前たち、いい加減にしろよ。メアを泣かせたことを後悔させてやる。」
キラがそう言うなり、地面に手を触れた。するとそこから魔法陣が現れて、そこから一本の大剣が現れた。
「な!?そりゃ一体どういう能力だ?」
ゼロが慌てふためいている。どうしたんだろう?
「これが僕の能力、二つ名の通りに「物を創り出す」能力、『創造力』だ。」
「へ?そんなものなの。なんか普通すぎない?君たちのところのロンドの『気力』の方が面倒だったけど。」
これなら、ロンドより楽に倒せるかな?
「君たち、ロンドの能力が『気力』だけだと思ってるの?ロンドは僕ら幹部クラスの中で、一番シェイド様に近いと言われてるんだ。僕らの特殊能力が一つだけだと思ったら大間違いさ。」
「ふーん。そんなことより、君たち。さっきまで二人で同じこと言ってたのになんで今はバラバラなんだ?」
僕がそう聞くと、
「『ブレイカー』の幹部クラスの他の人たちはみんな個性が強すぎるんですよ~。」
涙声でメアがそう言った。
「だから僕たちも特徴的な何かがないと僕らの存在感がなくなってしまうんだよ。」
うなだれた様子でキラはそう言った。
「………あんたたちも苦労してるんだね。」
「ごめんね。頑張ってとしかわたし言えないや。」
「なんか、かわいそうですね。」
女性陣は二人に同情をしていた。確かに、可哀想だよな。
「だから、ここであなたたちを倒して聖槍を手に入れて、私たちの存在感を濃いものとします。」
「聖槍を手に入れれば、僕らの株もうなぎ昇りさ。まさに、一石二鳥さ。という事で、君たちには死んでもらうよ。」
そう言うとキラがもう一つ魔法陣を展開して、刃の部分が大きく長さは身の丈ほどの斧を作りだした。そしてそれをメアに渡した。
「はぁ?ちょっ、それをメアちゃんが使うの?」
ゼロの驚きも納得できる。キラとメアの身長は162センチ位だ。そのサイズは一般男性でもそう簡単に持てるサイズではない。
「これは私の能力『変化力』のおかげです。私は様々なものを変化させることが出来るのです。重さも形も、重力でさえ変えることが出来るんです。」
はぁ、やっぱり『ブレイカー』の連中の能力はチートばっかじゃねぇかよ。勝てる気がしない。てか、この他にも能力があるうえに、まだ三人もこいつらと同等の連中がいるのか。駄目だ、心が折れそう。
「レミア、出来たか?」
「うん。会心のできだよ。たぶん。わたしも初めてだったからよくわからないけど。」
僕の剣はレミアの魔力で根元の部分に残った刀身から氷によって剣先まで薄く、軽く、鋭い片刃のものとなった。
「おっし、命名。氷刀‐斬閃‐だ。刀匠、レミア・フルールの最初の剣だな。」
「刀匠なんかじゃないよ。初心者だもの。」
「でも、才能はあると思うよ。この際だから、刀鍛冶を極めてみたら?」
そうして僕は、氷刀‐斬閃‐を構えた。
「よし、いくぞ、みんな。」
僕はそう言うと、絶風閃を二発キラとメアに放った。ただし、普通の絶風閃ではないけど。
「こんなもん、簡単に避けられるさ。」
「!!マズイです。避けないで防いで、お兄ちゃん。」
僕の放った絶風閃は不規則に軌道を変えた。それは、避けようとしたキラに直撃した。
「がはっ。な、何なんだその不規則な軌道。読めないじゃないか。」
「今だ、喰らいな。双閃撃。」
ゼロが素早く近づき、仰け反ったキラに追撃を喰らわせた。それは巧い具合にクリティカルヒットした。
「優しき風、怒れる雷、彼者に裁きを。」 ロアがそう言うと強い竜巻によってキラを束縛した。そして、次の瞬間強烈な雷がキラを襲った。それによる強い閃光の後、僕らは自分たちの目を疑った。
「ふぅ。危ない危ない。後一秒遅かったらヤバかったな。」
そこには、ロアの魔術を喰らった様子のないキラが立っていた。
「全く、危ないことをしないでください。お兄ちゃん。」
「大丈夫、大丈夫。問題ないさ。」
二人が会話をしている隙を狙って、ユーノがメアを狙って殴りかかった。
「はあぁぁぁ。」
「無駄ですよ。私の力の前では意味がありません。」
確かにその言葉の通りになった。メアはユーノのパンチを素手で受け止めていた。
「な?どういうことだい?」
「最初に言いましたよ。私は全てを変化させると。」
成程、力でも何でも、百にも零にも出来るってことか。厄介だな。
「なら、コイツでどうだ。」
レイはそう言うと、魔法陣を展開させ、上空から土の槍を降らせた。しかしそれも、メアに届く前に粉上になってダメージにならなかった。形状変化もお手の物ってか?
「これでどうだ~。」
レミアが魔力を込めた銃弾を十二発放った。しかしそれすらも、メアには届かなかった。銃弾は急に勢いを失くし、地面に落ちた。速さすら変えられるのか。
「どうする。攻撃を当てられないぞ。このままじゃジリ貧で負けるかもしれない。何か突破口はないのか?」
そう、今の僕たちには打つ手がない。大ピンチだ。
「私たちに勝てる訳がないのですよ。諦めて、聖槍を渡してください。」
「このままじゃ、君たち死んじゃうよ。早く降参しなよ。」
キラとメアがそんな事を言ってきた。確かに今のままじゃ、勝ち目ないしそれが一番良いのかもしれない。だけど、
「降参なんてするかよ。百万回頼まれても、そんなことしねぇよ。」
「そう。残念だな。」
「では、死んでください。」
二人はそう言うと、二人で一つの巨大な魔法陣を展開させた。
「燃え盛る火炎、悠久の風、唸りを上げる水流、軋めく大地。」
「轟く雷電、凍結せし氷雪、浄化の光明、犯せし暗黒。」
「「我らの名の元に神々の力を結集し、彼者共へ、降り注げ。」」
二人で詠唱を完成させると、僕らの足元に魔法陣が現れて僕らは動けなくなった。次の瞬間、僕らに向かって天空から一筋の光が降り注ぎ、僕らは全身に大きな苦痛を感じた。いや、苦痛なんてものじゃない。言葉では言い表せない、それほどに強烈だった。
「「「ぐ、ぐわはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」」」
「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」」」
「ゆ、油断し、しましたね。」
僕らは一人残らず、地面に倒れこんだ。
「だから言ったのに。残念だったね。」
「自分の発言を後悔してください。」
二人は僕に近づいてきた。
「それじゃあ、聖槍は頂くよ。」
「私たちのことを恨まないでください。」
「させません!!」
二人が僕に触れようとした瞬間、チャクラムが飛んできた。
「り、リアか?」
「大丈夫ですか?お兄さん。」
そう言うとリアは僕らを囲むように魔法陣を張った。すると、全身の痛みが引いてきて、傷が治ってきた。
「な、何なんだ。その力?」
「私たちはそんな力を知りませんよ。」
二人とも困惑していた。しかし、それは僕も一緒だ。何が起きたんだ?
「あなたたちに特殊な能力があるように、私にもあるんですよ。私はそのうちの『治癒魔法』のスキルを使っただけです。」
「『治癒魔法』だって!?そんなのは反則だろ。」
「そんな能力を使うなんて卑怯です。」
いや、お前らの能力も十分反則で、卑怯チックだけどな。しかしな、リアもまさかのチートキャラだったのか。驚いたよ。
「それでは、あなたたちには帰って貰います。」
そう言うと、リアは詠唱を始めた。
「効かないと言っているでしょう。何回やっても無駄です。」
「無駄な抵抗はやめた方がいいよ。後で痛い目を見るから。」
二人は詠唱の妨害すらせず、余裕ぶっている。
「月の光降り注ぐところ、神秘の力により破滅へ導く。陽の光照らすところ、浄化の力によって悪しき者を消し去る。陽月交じり合うところ、混沌の力となり彼者共を討ち滅ぼせ。」
リアが詠唱を終えると、キラとメアを中心に強烈な光が放たれた。今日三度目だ。光がやむと、そこには満身創痍の二人が地面に膝を着いていた。
「な、何が起きたんだ?」
「攻撃の当てられない二人に一撃であんなダメージを与えたの?」
レイとレミアが驚きを口にした。ゼロもユーノも僕だって驚いた。只一人、ロアを除いて。
次の瞬間、リアが倒れた。
「だ、大丈夫か?」
僕らは急いでリアに駆け寄った。大分体力を消耗したみたいだ。
「エヘヘ。チョットだけ無茶をしましたけど、だいじょうぶです。」
息も絶え絶えにリアはそう言った。
「無茶なことをするな。馬鹿か?お前は。」
「リア、貴方の力は強大すぎるんです。それなのに、あんな魔法を使って。死ぬつもりですか?」
レイもロアも心配した様子でそう言った。…無茶して、か。
僕らがリアの心配をしていると、背後で立ち上がる音が聞こえた。
「僕たちは、まだ…戦える。その娘はもう戦えない。」
「これで、あなたたちに私たちに対抗する術はありません。」
「死を覚悟してね。僕たちにこれだけダメージを与えられたことは誉めてあげる。」 「それでもこの先、あなたたちに希望など与えません。」
キラとメアがふらつきながらも立ち上がって、言った。
「そんな体じゃ、アンタたちも戦えないだろ?止めときなよ。」
「命は大事にした方がいいぜ。特にメアちゃん。」
ユーノとゼロが戦うことを拒んだ。てかゼロ、こういう時くらい、その癖止めろよ。
「うるさい。僕たちは聖槍を手に入れなきゃならない。絶対に。」
「こんな事で、諦められません。どうしても止めたければ、私たちを殺してみて下さい。」
そう言うと、二人は魔法陣を展開させた。
「これはさっきより、範囲は狭いけど、威力は倍以上だ。」
「これの速度は光より速く、回避すら困難です。」
「死にたくなければ、聖槍を渡してよ。」
「そうすれば、命だけは助けてあげます。」
二人はそんな脅し文句を口にした。確かに、さっきのよりも魔力の溜まり方が異常だ。威力がハンパないのは本当らしい。でもよ、僕より小さい娘が頑張ってるのに、僕だけ怖じ気付くのは、人としてだめだな。僕は覚悟を決めた。
「お前たちなんかに聖槍は渡さねぇよ。」
僕はそう言って、聖槍を抜いた。そして、聖槍と斬閃に出せるだけの魔力を流し込んだ。僕はこの時、一つの可能性を見つけて一か八かの賭に出た。
「それじゃあ、お別れだね。」
「それでは、お別れです。」
「「せめて、よき来世を。」」 キラとメアは最初のしゃべり方に戻してそう言い放つと、魔法陣から強大な魔力の光線が発射された。
「死ぬつもりはないからな。これで終わらせる。」
僕はそう言い、聖槍と斬閃に溜めた魔力を解放しそれらで突きを放ち、一つの大きな竜巻を撃ち出した。斬閃と僕の魔力の相性はよく、聖槍の持つ力をより強靱なものとし、キラとメアが放った魔力以上の威力を持っていた。それにより、二人の放った魔力は掻き消され、二人に竜巻は直撃した。まぁ、直撃と言っても二人の魔力のせいでかなり威力は削られてたみたいだけど。それにより二人は吹き飛び、街の外壁にぶつかり気を失ったようだ。
「やったのか?」
「恐らくは。勝ったということで良さそうですね。」
「凄いです、お兄さん。」
レイ、ロア、リアの三人が思い思いのことを口にした。
「コイツ等も死んでねぇみたいだし。生かしときゃあ、色々と教えてもらえそうだぜ?」
「まぁ、暫くは動けなさそうだけど。結果オーライだと思うよ、あたしは。」
ゼロとユーノがキラとメアに近づいて、二人の状態を調べてそう言った。
「スゴいよユキヤ!!…ユキヤ?ユキヤッ!?」
だが僕はレミアの言葉が聞き取れなかった。レミアの言葉だけじゃない。みんなが何を喋っていたのか、この時の僕には聞こえなかった。僕は目眩の中で、目の前が段々と暗くなってくる朦朧とした意識の中で聞き流していただけだ。その内、意識がとぎれた。
今回の話は前回に比べて、かなり長くなってしまいました。
風宮です。
今回はアレですね。幹部二人との戦闘です。幹部は全員、チートキャラですね。それでも勝てるユキヤもかなりチートっぽいですけど。
…『主人公は並』のタグを外した方がいいですかね?
これで三人、幹部が出てきたわけですけど…。『終焉』と『創造』と『変革』と。
二つ名の方は出来てるんですけど残り三人のキャラが、まだ固まってないんで、暫くは出てこないと思います。まぁ、固まるのがいつかわからないんで、五話くらい後に出てくる可能性もなくはないですけど。
ついでに残り三人の二つ名は『弾劾』、『再生』、『秩序』ですね。
次の更新は未定ですね。本当に目途が立ちません。
こんなダメ人間が作者ですが、これからもよろしくお願いします。