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第十三話 「船の上の戦い。レイさん、レイさ~~~ん。」

 「それでは、貴方たちが集めた情報を教えて下さい。その方が早いと思うので。」

 僕はあの後、三十分程度街を歩き回った。すぐには戻りたくなかったからな。そして宿に戻り、僕らはお互いの集めた情報を話すことになった。

 「僕らが集められたのは、海の向こうにある『フォード』という街にもう少し詳しい情報が転がってるらしい。それだけしか集められなかった。」

 「そうですか。ならば明日、そこへ向かいましょう。」

 「急すぎないか。先にユキヤやゼロたちと合流した方がいいと思うのだが。海を越えるとなると、一週間で『ミアネス』に戻れないだろうしな。」

 「それなら、心配は要りません。こういう時のための、リアですから。」

 「どういう意味だ?」

 リアは普通の少女ではないのか?特別な力を持っているようには見えないし、特に何も感じないのだが……。

 「実を言うとですね、わたしは普通の魔法が使えないんですよ。」

 「何だと?」

 「その代わり、わたしはちょっと特別な感じの魔法が使えるんです。一度行ったことのある所に、一瞬で移動出来たり、他にも普通の人とは違うことが出来たりするんですよ。」

 「私はこれを便宜上、『転移魔法』と名付けました。」

 何なんだ、そのルールを無視したような力は。そういえば僕が遺跡で遭遇した『終焉』のロンドとかいう奴も一瞬で消えていたな。奴もそんな力を持っていたのか?

 「そういう事で、明日も早いのでもう休みましょう。」

 「ちょっと待った。ロアお前の得た情報はどうしたんだ?」

 「いえ、それは明日の移動中に話しましょう。とてつもなく長い話なので。」

 そう言って、ロアはどこかに出かけた。何なんだ、アイツは………。

 しょうがないので、僕はもう、寝ることにする。すると、リアが近づいてきた。

 「あの………い、一緒に、寝てくれませんか?」

 「ふざけるな。そんな事が、出来る訳ないだろう。いい加減にしろ。」

 上目づかいで言われても、涙目で言われてもそれだけは出来ない。そういう感じの趣味のある奴は知らんが、僕のような一般常識のある者はそんなことはしない。出来ないのではなく、しないのだ。

 「そうですか、そうですよね。変なこと言ってすいませんでした。それでは、おやすみなさい。」

 そう言って、リアはトボトボと自分のベッドへと入っていった。

 僕はそれを確認して、眠りについた。

 次の日の朝、僕は何かに乗られているような感覚で目が覚めた。よく見れば、リアが僕のベッドの中に、入り込んでいた。

 「何をしているんだ、貴様!!!起きろ。今すぐ、起きろ。」

 「ふにゅ~?あっ、レイさん。おはようございます。」

 「「あっ、レイさん。おはようございます。」じゃないだろう。なぜ貴様がここにいる?」

 「ほへ?あれ?何でわたし、レイさんのベッドに……?そういえば、夜中にトイレしたくて起きたんですけど、その後に間違えてレイさんのベッドに入り込んでしまったみたいです。」

 なんてベタなことをするんだ、コイツは。それよりも、僕はコイツよりも怒鳴りたい奴がいる。

 「おい、ロア。貴様、気付いていたのに止めなかっただろう?」

 「はい。その方がおもしろそうだったので。」

 ニコリと笑いながら、奴はそう言った。相変わらずのイヤな奴だ。これなら、まだゼロの方がマシだ。奴は不愉快なだけだからな。

 「レイネス。貴方は今、失礼なことを考えましたね?」

 「何のことだかわからないな。」

 クッ。コイツ、相変わらずの読心術だ。いい加減に人の考えを読まないで欲しい。

 「それは無理ですね。」

 「……………………。」

 ダメだ。僕には勝てない、コイツには。

 「そんな事より、早く準備をして下さい。出発しますよ。」

 よく見ると、ロアは既に準備を整えてるようだ。僕としたことが少々、寝坊してしまったらしい。

 「すまない。今すぐに終わらせる。リア、お前も早くじゅ…、何でもない。二人とも、先に外に出ててくれ。すぐに追いつく。」

 どうやらリアは、僕とロアがつまらない掛け合いをしている間に、準備を終えたようだ。クソ、これじゃ僕はお荷物じゃないか。

 二人に先に行ってもらい、僕は急いで準備をした。

 五分後、僕は用意を終えて二人と合流した。

 「おや、思ったより速かったですね。では行きましょう。」

 「それより、船はどうするんだ?」

 「あれ?レイさん忘れちゃったんですか。昨日、船乗りの人と話したじゃないですか。あの人に船を出して貰うんですよ。」 そういえば、昨日の情報を話してくれた奴が確か船乗りで、名前が………ジェフ?とか何とか言っていたな。成程、そいつに乗せて貰うのか。昨日もなんか乗らないかどうか聞いてきたからな。名前を出せば船代が安くなるらしい。

 「おい。アンタら、もう船を出すから乗ってくれ。船は出すが、護衛は頼んだぞ。」

 「おい、どういう事だ?」

 「実は、今日の船の護衛をしてくれる傭兵さんたちが、怪我でダメらしいんですよ。だからわたしたちが代わりに護衛をすることになったんです。勿論、船代もタダです。」

 そういうことなら、ギルド員である僕らにとっては依頼になるのだから、良いのか。これも仕事だからな。

 「じゃあ、頼んだぜ。アンタらだけが頼りなんだからな。」

 そうして、僕らの乗った船は『フォード』へと出航した。

 しばらくは、何事もなかった………訳じゃなかった。

 「クッ。僕としたことが………うぷっ。」

 「大丈夫ですか?レイさん。」 そう、僕は船酔いを起こしてしまった。情けないこと、この上なしだ。

 「おや~。大変ですね~、レイネス。」

 「貴様、絶対に……楽しんで………いるだろう?」

 爽やかな黒い笑みを浮かべているロアを横目に、僕は横になった。…………このままじゃ、本当に足手まといだぞ。

 「ウワァァァ。魔、魔物が出た。た、た、助けてくれーーー。」

 船首の方から、声が聞こえてきた。どうやら魔物が出たらしい。

 「いきますよ、リア。レイネスは待機して下さい。」

 「僕のことならば心配はいらない。戦える。」

 僕はそう言いながら、ふらつきながら立ち上がった。

 「レイさん。無理しないで下さい。大丈夫です。わたしとロアさんで何とかしますから。」

 「そう言うわけにはいかない。僕も戦える、お前よりはな。」

 僕を心配したリアの声は少しばかり震えていた。

 「戦えると行った以上は、戦ってもらいます。ですが、危なくなったらすぐに逃げて下さい。貴方は貴重な戦力ですから。上官としてはそう言います。一人の仲間としてなら、休んでもらいたいですがね。」

 「フン。知ったことか。どちらにしても、僕はまだ死ぬつもりはないからな。」

 そう言って僕らは、船首の方へ向かった。 

 そこには魚人と言うべきか、奇妙な容姿をした魔物が十匹ほどいた。その近くには、他の乗客だった物が転がっていた。リアは涙目で吐きそうになりながらも、その光景から逃げ出さなかった。僕やロアは不謹慎だが、このような状況は見慣れている。 「それでは、私とリアは後方から攻撃を、レイネスは私たちに攻撃が及ばないようにして下さい。では、頼みましたよ。」

 僕はロアの指示通りに壁役となった。ここは海の上。ユキヤやレミアだったら有利にコトを運べるが、僕には鬼門以外の何者でもない。しょうがない、目眩ましにしかならないが、闇の系統の魔力を使うか。

 僕は魔法陣を出現させ、そこから高密度の闇の霧を発生させた。

 「狙えるか?ロア。」

 「大丈夫です。この程度なら。リア、レイネスと共に前に出て時間を稼いで下さい。」

 ロアがそう言うと、僕の横にリアが出てきた。

 「奴らの内、一匹でもあの闇から出たら、出た奴を狙え。」

 「そんな、一匹一匹倒すので平気なんですか?」

 「問題ない。言った通りにしろ。」

 「わかりました。」

 僕らは、闇の中から出てくる魔物共を攻撃して押し戻し、一カ所に集めた状態を保った。

 「二人とも、下がって下さい。」

 僕らはその言葉を合図に、ロアのところまで下がった。

 「吹き荒れる風、渦巻く水。彼の者を飲み込め。」

 ロアがそう言うと、船の上に小さな竜巻が起こり、魔物たちを飲み込むと海に入ってゆき、水を飲み込み大きな竜巻を引き起こした。それにより魔物たちは絶命したようで、それが消えると魔物の死体が海に浮かんだ。

 「相変わらずに、全属性を使える才能は衰えないな。」

 「私の取り柄ですからねぇ。そう簡単には、鈍らせませんよ。」

 「!!レイさん、後ろっ!!危ないです。」

 僕はこの時、油断をしていた。まさか、生き残っているとは思ってもいなかった。僕は瀕死状態の魔物の攻撃を腹に喰らった。それは僕の腹をきれいに貫通していた。

 「喰らいなさい。」

 ロアがライフルで魔物を倒したが、僕の傷は魔物の腕が抜けたことにより、血が滝のように溢れ出てきた。

 「ぼ、僕とした、ことが……、こんな………、初歩的……な、ことで、命を…落とす……とはな。」

 「レ、レイさん。しっかりして下さい。わたしが、助けますから。」

 「無理に、決ま……って、いるだろう。」

 僕は、自分のバカさ加減を思い知った。僕はこんな所では、死ねないのに、自分の不注意でこんなヘマをやらかして。………母上、すみません。僕は母上の敵を打てそうにありません。こんな、不甲斐ない息子で、すみません。

 僕は目をつむり、朦朧とした意識の中で、そんな事を考えていると、傷口に不思議な力が流れてきた。

 「絶対に、絶対に、絶対にレイさんは死なせません。」

 僕がうっすら目を開くと、リアが何かを喋っていたが、口の動きしか見えず、声は聞こえなかった。

 そういえば、僕はユキヤを助けるという約束もしていたな。それなのにこんな所で、何もしないままに死ぬのか。フッ。僕という男は、どうしようもない男らしい。

 ユキヤ、レミア、ロア、ゼロ、そしてリア。僕はコイツ等を残して、先に行くのか。心残りはあるが、これも受け入れるしかない。

 そんな事を考え、僕は意識を手放した。

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