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第十話 「ゼロとの修行開始。アイツの観察力半端ねぇ。」

 「よし。今日も修行始めるぜ~。ユキヤ君、ついてきな。」

 朝食後の腹休めもなく、ゼロはそう言った。

 「いや、いきなり過ぎだろ。飯食った後じゃ、動けねぇって。」

 「大丈夫よ。最初は魔力の使用法についてのお勉強だから。」

 「レミアに大体のことは教えてもらったんだが。」

 「俺様が教えるのは、コントロールとか実践的な奴よ。レミアちゃんに教えてもらったのは、基礎だけっしょ?」

 「まぁ、そうだけど…。」

 「てことで、さっさといくぞ。」

 そう言うとゼロは森の奥の方へと入っていった。僕はあわてて追いかけた。五分後、僕らはきれいな泉のある少し開けた場所にでた。

 「ユキヤ君の戦闘スタイルは、この前の模擬戦で大体分かってる。そして俺様は、決定的な弱点を見つけたのよ。」

 「弱点?」

 「そう、弱点。まず第一に溜が長い。絶風閃だっけか?あれは確かに威力はデカく、リーチも長いから強力な技だといえる。けどよ、最初の一発目で出すには十分だが、戦闘中に連携で使うには向かない。第二に牽制技がそれしかない。せっかく風属性持ってるのに、上手く使えてないから牽制が絶風閃でしかできない。だからこそ、今から魔力コントロールの修行を始める。これさえ出来れば、もう少し戦術の幅が広がるからな。」

 ゼロの奴、あれだけで何でこうも分かっちまうんだよ。僕だって気付かなかったのに…。確かに、ゼロの言ってることはあってると思う。今までその隙を突かれたことがなかったから、気付かなかっただけだ。この際だから、しっかり弱点を補おう。

 「成程。そんな弱点があったのか。で、僕は何をすればいいんだ?」

 「とりあえず、武器とか使わなくても魔法使えるようになれ。こういう風に……、なっ。」

 ゼロはそう言うと、木の方に掌を向けた。すると掌に魔法陣が現れて、そこから火の玉が出現して、木の方へ飛んでいった。そういえば、遺跡でレミアも似たようなことやってたな。

 「掌から魔力を打ち出すだけだ。今のは溜はいらねーし、基礎だから、すぐ出来ると思うぜ~。やってみ?」

 僕は言われたとおりにやってみた。十分後、ようやく出来るようになった。しかも魔力の使いすぎで、かなり疲れた。ヤベェ、昨日一昨日の方が楽かもしんねぇ。

 「思ったより時間かかったな。どうも、モーション無いとだめっぽいな。しゃ~ね~から、手を軽く振ってみ?」

 僕は言われたとおり、手を振るモーションをつけてみた。すると、一発で出来た。何で?

 「やっぱな。ユキヤ君はどうも空気中の魔力を上手く取り込めないみたいな。だから手を振って、風の勢いを付けなきゃいけないわけ。しゃ~ね~から、その辺から魔力を取り込んで、浮いて座禅組んでろ。二時間保つようになったら、次にいくぞ。」

 そう言うなりゼロは岩に寝そべって、眠り始めた。僕は仕方なく、ゼロに言われたとおり座禅組んで浮き始めた。だが十分後、僕はその場に落っこちた。魔力を使い切ったらしい。そこで、ようやくゼロがこんなことをさせたのかわかった。そう、これは魔力を取り込むことに適したものだった。座禅組んで浮くこと事態は難しくない。だが、それを長時間保のにはかかる魔力の量が大きすぎる。その魔力を補給するのには空気中からしか出来ない。魔力を取り込むことが苦手な僕には、最適の修行法だ。これを指示したゼロの奴を見直したいところだが、あんな態度だからやめた。

 それから一時間後、ようやくコツを掴めてきた。今、丁度三十分は浮いていられてる。この調子だったら、後一時間半いけるんじゃねぇか。そんなこと考えていると、草のこすれる音と、木が倒れる音が聞こえてきた。音の方に目をやると、熊のような魔物が現れた。普段だったら速攻で倒しにいくが、今座禅を解いたら折角掴んだ感覚がなくなりそうで、動くかどうか迷った。すると、魔物が襲ってきた。

 僕はしょうがないから、体内の魔力を使い、僕の周りから突風を起こした。魔物は吹き飛び、木にぶつかった。

 「ユキヤ君、もう座禅解いていいぜ。その代わり、魔力だけであの魔物を倒せ。」

 突然ゼロがそう言ってきた。

 「何だよ、起きてたのかよ。だったら助けろよ。」

 そう言いながら、僕は座禅を解いた。そんな事を言っても助けてくれないだろうし、意味がないのは分かってるが、一応言っておいた。お約束って奴だ。とりあえず、言われた通り魔力だけで戦ってみるか。

 僕はまず、右の掌を魔物の方に向けた。そして瞬時に緑の魔法陣を展開し、そこから風の刃をとばした。それは魔物の腕を切り落とした。切り口から血や体液が、止め止めなく流れている。それでも魔物は絶命せずに、こちらに向かってきた。僕は今度は左の掌を魔物へ向けて、魔法陣を展開した。今度の魔法陣は紫だ。そこからは、一筋の雷撃が魔物へと向かっていった。正確には、魔物の傷口にだが。魔物は感電したらしく、動きを止めた。僕はトドメに、両手をかざしてさっきの倍のサイズの緑の魔法陣を展開した。そこからは、さっきの倍以上ある風の刃が飛び出した。それは魔物を二つに切り裂き、跡には見るも無惨な死体が残った。

 「合格だな。予想外ではあったけどよ、目的は達成したんじゃね?」

 言われてみれば、何時の間にか魔力を自由に使えるようになっていた。

 「本当だ。まるで気付かなかった。自然に出来たから、特に違和感もなかったし。」

 「魔力コントロールはもう終わりでいいな。よし、次は剣技だな。」

 「剣技って何やんの?」

 「俺様の剣技は基本的に、連撃で相手に反撃させないやり方なワケよ。でもそれじゃワンパターンで相手に読まれたら終わりだ。 だから俺様はレイ君みたいにヒットアンドアウェイとか、ユキヤ君みたいな一撃の重さが売りの剣技も出来るようにしている。て、ワケで今から手数の多さで敵を圧倒する剣技、俺様の使っているリンデル流剣術を教える。」

 「ゼロの剣技ってちゃんと流派あったんだ。」

 「当り前よ。我流でやっていた時もあったけどよ~。やっぱ、基礎が出来てるメジャーな流派の方が色々と便利なのよ~。」

 どうやらリンデル流は手数の多さを売りにした基本は一刀流のものらしいが、ゼロのような応用の二刀流もある特殊な物らしい。ゼロも元は双剣士ではなく、片手剣士だったらしい。なので片手剣での剣技も教えられるらしい。

 「まずは縦斬り、斬り上げ、一拍置いての横斬りの連携を三十回やってみ?」

 言われた通り、三十回やってみた。するとダメ出しを喰らい、結局百回やることになった。流石に百回やると、腕も上がりずらくなってくる。それを耐えて、なんとか百回終わらせることが出来た。

 「よし。だいぶ良くなってきたな。んじゃあ、次は斬り上げ、斜め右斬り下し、斜め左斬り下しを百回だ。」

 その後も休憩を何度か挟み、日が暮れるまで続いた。その頃には、僕の腕は悲鳴を上げるを通り越して、使い物にならなかった。もう、腕が上がらねぇよ………。

 「今日はもう止めだ。流石にこれ以上やったら、明日は修行にならないからな。早いとこレミアちゃんと、ユーノのところに戻ろ~ぜ~。」

 ゼロは、そう言うなり一人で先に戻っていった。僕も急いで、ゼロの背中を追いかけた。

 「はい、あーん♪」

 僕は今、ニコニコ顔のレミアにあーんをしてもらっている。何故こうなったかというと、あの後ゼロ一人で野営の準備をし、レミアたちと合流した。そこで夕食となったのだが、僕の手は使い物にならなくて、僕は食べることが出来なかった。どうやって食べるか困っていると、親切にもレミアが食べさせてくれると言う。僕はそのことに感謝して、そうしてもらえると助かると言った。そして今に至るのだが、こうしてみると結構恥ずかしい。しかも、ゼロと常識人である筈のユーノもニヤニヤ顔でこっちを見てくる始末だ。とてつもなく、食べづらい。それでも仕方ないから、顔を真っ赤にしながらもその状態で食べきった。今の僕、勇者じゃね?

 「よかったな~、ユキヤ君。レミアちゃんみたいなカワイイ娘に食べさせてもらえるなんて。俺様も、ユーノに偶にはそういう事してもらいたいぜ~。」

 「なっ///、何であたしがそんな事しなきゃならないんだよ。このアホゼロが。バカ言ってんじゃないよ。」

 「あらあら、ユーノちゃん。照れちゃって。もしかしてまんざらじゃなかったりする?」

 ゴスッ。ゼロがそう言った瞬間、ユーノの拳骨がゼロの頭に直撃した。

 「った~。殴んなよ、この怪力女。冗談に決まってんだろ~。本気にすんなよ。」

 「フンッ。あんたが悪いんだよ。自業自得だね。」

 そんな感じで夕食は終わり、僕らは寝た。

 次の日、三回目の筋肉痛での目覚めを体験した。あれはもう、生き地獄だって。動かなくてもイテェもん。

 「じゃあ、今日は昨日より三倍キツい、メニューにするから。ユキヤ君、死ぬなよ。」

 その宣言通り、修行は厳しかった。もう、マジで死にそうだよ。

 昼過ぎに僕は、ようやく基礎連から解放され、奥義を教えて貰うことになった。

 「まずは一番簡単な技、連翔斬だ。これは相手を斬り上げで打ち上げて自分も飛び上がり、空中で三回斬りつけるってやつだ。まぁ、すぐにマスター出来ると思うぜ。」

 ゼロがまず、手本を見せてくれた。空中では右横斬り、斬り上げ、斬り下しの順だった。僕もそれをやってみたが、ゼロの言う通り、これは比較的楽に修得できた。この後、さらに三つ程教えて貰い奥義の修得は終わった。

 「最後に魔法剣の使用法だな。魔法剣って言うとユキヤ君の絶風閃みたいに、剣に魔力を込めて繰り出す技の総称だ。これも上手く使えば、魔法と剣技を併せてより強力な技にすることが出来るぜ。これについては特に修行はないけどな。だから自分で身につけてくれや。流石に適正属性は違うからな、教えたくても教えられねぇのよ。だから、これについては勘弁してくれ。んじゃあ、適当に自主連しててくれや。俺様はもう戻るから。」

 そう言うと、ゼロは去っていった。僕はしょうがないので、少し休憩した後にいろいろ試してみた。けどなかなかしっくりくるのが見つからなかった。その日はそれ以上成果は上がらなかった。まぁ、でもまだまだ時間はあるし気長にやっていこう。

 今日は腕が上がらないなんて事はなく、問題なく夕食は食べれた。

 「明日で修行は終わりだ。てことで、明日は俺様とユーノ、レミアちゃんとユキヤ君でチームを組んで、模擬戦をやりてぇんだけど。どうよ?」

 「あたしは賛成だね。二人がどれくらい強くなったか知りたいし、自分の訓練にもなるからね。」

 「わたしも特に問題無いから、だいじょぶだよ。」

 「僕もやっていいと思う。てか、やりたいな。」

 「んじゃ、決定~ってことで、今日はもう寝よ~ぜ。」

 こうして明日、模擬戦をやることになった僕らは、この日は早々と眠りについた。


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