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不死の皇帝、冒険者になる。放せ、朕はもう帝国には戻らぬ!  作者: おいげん
第二章 神子と聖女。こいつら狂ってやがる!

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第15話 不死の皇帝、神子に見初められる

 白い石造りの大きな神殿の奥にある応接室。そこに今朕は軟禁されている。

 いや、出ようと思えば造作もないことだけども、流石に異端審問官の前で魔法をぶっ放すわけにはいかない。

 これは逮捕なのか。だがアレはやむを得ない暴力だったはず。町中での抜刀は両成敗だったらお手上げだ。


「ローエン様……このたびは、本当にありがとうございました」

「い、いえ。当然のことをしたまでです」


 白磁の花瓶があることに驚く。この世界の調度品はほぼほぼ木製だったので、相当に力を入れている部屋であることが証明されていた。


「私が未熟なため、多くの犠牲を出してしまいました。そして使徒様である貴方様にも多大なるご心痛をおかけしたこと、ここに謝罪致します」


 そういってペコリと頭を下げる。そのまま神官帽がぺとっとテーブルに落ちた。

 キサラは慌ててかぶりなおすと、顔を赤らめて目を閉じる。


「何度も言うが、気にしないでもらいたい。俺は今仕事の途中なんだ、このまま行かせてもらえると助かるんだが」

「それは……できなくなりました」

「え、な、なぜ?」

 コホンと可愛らしく咳を払うと、キサラは自らのことを語り始めた。


「私は表向きには新米の異端審問官としてこの大聖堂に住まわせていただいています。失礼に当たるかもしれませんが、この両の目をご覧ください。ディアーナ教の聖典において、左右異なる色をもつ白髪の女性は神子しんしとして次代の指導者になることが宿命づけられています」


「つまり、キサラが次のディアーナ教の教皇になるのか」


「きょうこう……使徒様のお言葉はわかりかねますが、教徒をまとめるもののことです。私自身は神聖な力に乏しく、霊験あらたかな聖遺物を前にしてもその神威を正しくくみ取ることができません。そのため指導者の代理たる聖女に布教や祈祷をお願いしているのです」


 つまりディアーナ教には組織的代表としてキサラ。今は別の人間がそうだろうが、指導者としての立場の者がいる。それが『神子しんし』という名前なのだろう。

 そして信者を新たに増やしたり、あちこちで祈りを捧げる現場責任者として『聖女』という存在がいるのか。

 それ組織の分裂フラグだけど、まあよそ様のことだからあまり口を出しても仕方がないか。


「斯様に能力不足の私ですがローエン様を目の前にしたとき、体から発せられる神気を強く感じました。おそらく他のものが目にしても私と同じ見解になるでしょう」


 うん、まあ。それは正しいよ。だって朕、創造神といつでもコンタクトできるし。それ以前に不老不死だしね。神様パワーがてんこ盛りで詰まっているのだから、わかる人にはわかるのか。


「俺はそんな大層な人間じゃないですよ。毎日ギルドの仕事で猪を狩っているだけです。あとは荷物運びとか」

「その仕事は何にも代えがたいものでしょうか」

「いや……そういうことはないと思う。他にやれることがあれば手伝えるかもしれないけど、そう期待しないでほしいかな」


 キランとキサラの目が光った。いや、人間って期待を抱くとすっごい目が潤むんだよね。分泌物専門家じゃないけれど、何かそういう仕組みがあるのだろうか。

「実は大切な仕事を任せたいのです」

「ほう……。俺にできることだといいんだが」


「私は今配偶者を欲しているのです」

「あ、そうなんだ。大変ですね」


「配偶者になってほしいのです」

「なるほど、それは……んん?」


 いや、そうはならんやろ。


「ははは、俺の緊張をほぐしてくれたんですね」

「子供は五人がいいのです」


 ごめん、もう一回言うわ。そうはならんやろ。


「ローエン様にはその責任があるのです。もうこれは動かしようのない確定事項なのですよ」

「ちょっと待ってください。俺はただキサラを助けただけで、そんなおかしいことは何もしてないはずでは」

「聖なる血をいただきました」

 

 確かに。この子朕の血をごっくんしてたわ。

「ディアーナ教の聖典第五章四節にあります。『貞淑たるもの、汝他者の水を奪うことなかれ。与えられしときは生涯を以て使えるべし』と」

「いや、朕は――俺は別にそういうつもりで……」

「ディアーナ教徒にとって聖典は絶対です。ローエン様は私に聖なる水、血液をお与えになりました。私は一生を尽くしてお側で仕えなくてはいけません」


 一神教怖すぎ。その聖典ってどこの誰が書いたんだよ。ちゃんとデータとか統計とかとって、それが一番適切な結果って確認したのかな?


「あーえー、俺はちょっとまだ結婚とかは考えていないんだ。申し訳ないけれど、もっと冒険者でいたいというか」

「なるほど。冒険者というのは大切な身分なのですね。誰か!」

 キサラが一声上げると、彼女の初登場と同じようにペストマスクを被った女性が五人出てきた。


「お呼びでしょうか、神子キサラ様」

「ローエンの冒険者登録を抹消してきてください。それから生活用品を一式用意するように。神殿の奥の院に特別室がありましたね、そちらの準備を」

「かしこまりました」

「かしこまるな。なあキサラ、ちょいとそれは横暴が過ぎるのでは――」

 

 ガチャリ。

 ん? これ、鉄の輪……手錠?


「あの、何を……?」

「ローエン様。今日からお仕事もお食事もご寝所も厠も水浴びも心配いりません。全部、このキサラ・シャルロウが責任をもってお仕えしますので」

「待った待った。俺は帰るところ……いや、うん。何でもない」


 余計なことを言うと地下教会が燃やされそうだ。あの人たちに迷惑をかけるわけにはいかない。


「ローエン様、お顔の傷が開いてしまっています。私にお任せください」

「な、おい!」


 んむ、ちゅぱ。れろ。ごっくん、


「また聖なる水を賜ってしまいましたね。私は『どれだけ時間がかかっても』、ローエン様が『私のことを見てくれるまで』、誠心誠意お仕えする所存です。『絶対に』お外には出てはなりません。『契り』を結ぶまで『一日中』お世話いたしますので、ご安心ください」


「ヒェッ」


 キサラは神々しく輝いていたオッドアイの光を消して、暗くほほ笑んでいた。

「末永くかわいがってくださいませ、ローエン様」


 ニチャァ……。

 すまん。朕気絶するわ。

お読みくださりありがとうございます!

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