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現れ、現れる者たち  作者: アズ
見える、聞こえる
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10/24

10話

 目が覚めたのは寝てから一時間経過したあとだった。外は相変わらず雷鳴が聞こえる。もう一度寝ようにも全然寝付けそうにないと分かると私はベッドから起き上がった。その時、自分の髪(耳辺り)が湿っているのに気がついた。私は振り返り自分の枕を見ると、その枕も濡れて湿っているのに気がついた。

 結局、寝ることはその場しのぎで解決策にはならなかった。いや、分かっていた。その前の出来事もなんとかなったが、それは単に色々試したら上手くいったからではない。

 例えば自分が見たものが、実は私の勘違いで実際は違うものだったと仮定して、つまり、私の見たものは心霊現象でも霊でもなかった。そうなれば、私はその起きたことに対し恐怖を感じることもなくなる。だから、心霊があるかどうかを信じる信じないは置いといて、その見えたものは錯覚であるとまずは思い込むことで、私が恐怖する心理から直ぐに心霊へとイメージして更に幻覚を見るという悪循環をまずは阻止することに専念した。だけど、いくら見えているものを否定しても、状況は改善しなかった。あれは何の効果もなかった。

 心理や思い込みによって何かに見える、感じるような気がするとはやはり違う。これは見えている当人にしか分からないことだが、そんな曖昧なものではない。

 この濡れているだって錯覚ではない。実際、紙は染みるし、枕は濡れている。私が小さい時にプールで溺れたのだって泳げないからではない。あれは突然の出来事だった。もう否定しようのない事が起きている。だが、それを上手く説明することは出来ない。

 突然(それは本当に突然)、別の世界に片足入れると、皆の世界と別の世界(皆が知らない世界)の境界が私の周囲で曖昧になる。そして、私の身の回りにだけおかしな現象が頻発する。これをどう周りに説明しろというのか。そんなことをすればおかしなヤバい奴認定され、精神科を勧められるだろう。

 私は出来るだけ普通の人でありたかった。

 でも、本当は私と同じ境遇の人を見つけ、一緒に解決策を考える仲間がいたらと本音では思ってはいる。だけど、それは簡単なことじゃない。それには自分から他人に打ち明けなきゃいけないから。

 匿名を使って色々ネット上で探してみたりはしたけど、どこまで相手が本当なのか分からない。

 例えばアルパカのイラストのアイコンを使っているアカウント名「ひつじ」は自身心霊現象を体験しており、それをネット上で公開していた。理由はそれを見た人達の中に自分と同じ境遇の人の目がとまりコンタクトをとってきてくれるんじゃないかという理由かららしい。確かに、実際私が目にとまり、コンタクトをとろうかどうか本当に迷ったからだ。コンタクトとっているであろうアカウントとはプライベートチャットでやり取りしているようだが、ネット=犯罪に巻き込まれるという私の中にある危機意識が中々踏み出せずにいた。

 最悪ブロックすればいいという発想はあるけど、これに頼るのは私の中で最終手段だった。

 今のところまだ命の危機にあるという感じはない。雑音、たまに何か聞こえ、そして耳が濡れるという現象だ。気になるのは私の顔が皆には心配される程悪いということ。でも、体調は悪いわけではない。これだけならまだ頼りたくはない。

 私は勉強机に向かい、次の授業の予習を始めた。外からは雷鳴が轟いた。





 土日が過ぎて、学校がある日。

 ジリジリジリジリ。

 私はいつものように目覚まし時計に起こされ、目覚ましを止める。

 そして、いつものように洗面所に向かい、歯磨きと洗顔をした。そこに母が洗濯機から洗濯物を取りに現れてきた。

「体調は良くなった?」

「体調は悪くないよ」

 私はそう言って振り返り母を見た。その時、母は私の顔を見るなり悲鳴をあげた。

「え、何?」

「病院! 病院へ行こう」

「なんで?」

「あんた、更に痩せて……どうして……」

 母は私の両肩を掴んだ。

「そ、そんなに悪いの?」

「本当に体はなんともないの?」

「ないけど」

「酷いってもんじゃないよ。今日は学校休んで病院行こう」

 だが、鏡を見ても自分がそれ程までに悪いように見えなかった。

 まるで、私の見えているものが皆とズレているように。いや、ズレてるんだ。





 私は母に強引に学校を休みにされ、車に乗せられると病院へ直行した。

 私はスマホを取り出し、あのアカウントにメッセージを送った。

 もし、母が見えているのが本当に私の身に起きているんだとしたら……

 すると、ひつじから直ぐに返信がきた。

 それはプライベートチャットの招待だった。

 私は数秒考えてからそれを承認した。



〉それじゃ何が起こったのか具体的に説明してくれるかな?



 私は起きたことを淡々とした説明文で返信した。



〉それだけじゃ分からないな。でも、気になるのは一つの霊じゃないぽいな



 一つの霊じゃない? どういうこと? 私は素早く打ち込む。



〉あの、一つじゃないってどういう意味ですか?


〉話を聞いたのをまず整理すると今起きている現象は一つじゃないということ。雑音が聞こえる、雑音が時々雨の降る音に聞こえる、女の声が聞こえる、耳が濡れている、自分の顔が他の人には酷く見える。でも、これら全てが共通しているわけではない。特に最後がね。全部耳に関するのに、最後だけ妙に違いがあるなって。


〉確かに言われてみたらそうかもしれません。


〉確証はないけど、耳に起きていることは多分女の霊。しかも、雨や水にまつわる系の可能性が今のところ高いかな。でも、最後のやつが一番分からない。それだけは君は認識出来ていない。心霊現象でも特にあまり聞かないパターンだ。自分でもこういう経験はないな


〉そうなんですか?


〉ドッペルゲンガーや生霊みたいに本人に自覚ないパターンあるけど、それ事態稀かな。でも、君の聞いた話じゃその2つも当てはまらない。正直、初めてのパターンかも。大抵の心霊現象は自分が知覚して認識するタイプだから。自分が認識出来ないけど、自分に起きている現象……うん、初めてだよこれは。


〉あの、対処法とかは


〉正直に言うと最後のやつに関しては無いね。水女だけならなんとかなりそうなんだけど




 その時、車は左側にある病院へと入っていった。



〉あの、すみません。もう病院についてしまって。暫く返信が出来なくなります。


〉分かった。とりあえず終わったら連絡頂戴。


〉ありがとうございます。終わったら必ず連絡します。


〉了解。




 私はスマホをポケットの中に入れ、私は車を降りた。

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