プロローグ
「こちら、第35ホーム。お急ぎの方は、駆け込んでご乗車ください。まもなく発車いたします。」
「おっさん!押すなよ!」
「ちょっと、溢れるじゃない!」
「早く発車しろよ!」
罵声が飛び交い、その光景は、異国の満員電車を思い出す。つい最近、発令された参勤交代にここ東京都民1000万人は、新首都の如桜都に大移動を始めた。期間はわずか3日間。この法令は、経済を活発化させるという名目で、国会で可決されたが、彼らの頭のネジは無いに等しい。この知らせを聞いた各国は、愚かな法令で戸惑う我が国を笑日本国と第して嘲ってるらしい。
申し遅れた。この話は徳田家 光が語らせて頂く。新卒2年目のジャーナリストだ。つい2ヶ月前から東京勤めで、借家の手続きを済ませたばかりにこの法令を食らった。私の父は、衆議院議員のはずだ、しかし私はこの目で見た。父は、参勤交代に賛同するだけでなく英断を下した野党議員を罵倒したのだ。この参勤交代には、強制力がある。従わないものは、自分の所有している財産の全てを国に収めるというこれまたおかしな法令だ。日本という国を滅ぼすであろう判断を率先して行い、日本の、いや、世界の恥。私の父から離れるため、この腐った国から出るため、この徳田家は、国際空港に向かう新幹線に乗り込んだ。
先ほども言った通り、満員電車である。その乗車率は、360%。国は混乱し、国外に逃げる人のなんと多いことか。しかしこの時の私は知らなかった。参勤交代令には大きな理由があったことを。