幽霊屋敷
俺は祖父の遺産の1つである、ある土地を相続した。というよりは遺族と争って奪ったと言った方が良いだろうか。土地ってのは色々と使い道がある。
しかしどうだ、そこには廃墟があった。土地を運用するにしてもこれを撤去するためのお金がかかる。ああ鬱陶しい、こんなことならちゃんと調べておけばよかった。
そう思いながらもとりあえず何か金目の物はないかとその廃墟を探索していた時に、それは起こった。
棚にあった段ボールが落ちてきたり、シャンデリアが揺れたりしたのだ。
これは誰もいないのに物が勝手に動く、ポルターガイストだ。
俺は超常現象の類はあまり信じないタイプだったが、ここまで露骨に目の前で起きると信じざるを得ない。
さすがに危ないので、その日は退散した。
別の日にも来てみたが、それはまたしても起こった。これは面白い、ここをお化け屋敷にでもすれば儲かるぞ…。
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気がついたら屋敷にいた。どうやらオレは幽霊らしい。手足は透けているし、壁はすり抜けられる。しかし記憶がない。どうして死んだのだろうか、ここに居たということは何か縁があるとは思うが…。
すると男が玄関から入ってきた。そして色々と物色してるではないか。
誰だあいつは。しかしあの顔、不思議と腹が立つ。そうだ、いたずらでもしてやろう。
そいつの頭上から段ボールを落としてやったり、シャンデリアを揺らしたり。
びっくりして慌てふためいてやがる。ざまあみろ。
そのまま一目散に逃げ出したそいつだったが、次の日には戻ってきてまた物色し始めた。ならまたやるだけだ。物を落としたり揺らしたり。また驚いてる。こりゃ面白い…。
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先日思いついた幽霊屋敷計画。俺は屋敷の物を売った金で雰囲気を崩さない程度に改装し、客を呼ぶことにした。
もちろん下見の時や工事中にもポルターガイストは発生した。それによって死者が出るなんてことはなかったが、もし出たとしても知ったことか。やったのは俺じゃなく幽霊だ。
数週間後、予定より遅れはしたが屋敷の改装は終了し、幽霊屋敷として売り出したが、商売は好調だった。なんせ工事の作業員も遭遇したってネタがある。物好きな若者が集まり、そいつらが心霊現象を味わう。そして本当に霊が現れる場所ってことで口コミも広まり、しまいにはホラー番組で生中継なんて話も舞い込んできた。これで話題が広まれば大儲けだ…。
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あの男が誰かを引き連れて屋敷内を歩き回っている。一体何をするつもりだ、鬱陶しい。
するとどうだ、数日後ヘルメットを被った奴らが来て、工事を始めたじゃないか。どうするつもりかは知らんが、邪魔してやる…。
作業員もびびってもたついてやがる、ああ楽しい。しかし幽霊一人の力なんてのは知れたものだ。なんだかんだと作業は進み、どうやら終了したらしい。
だからといって人足が絶えることはなかった。数人のグループが来たり、カップルらしき奴らが来たり。そいつらのビビる姿が面白いから、人が来るたびにオレは脅かしてやった。
しかしでかいカメラを抱えた奴らが来て勘付いた。もしやあの男、オレのことを利用してやがるな。さしずめ幽霊屋敷とか言って売り出してるんだろう。
ふざけんな、あんな奴にいいように使われてたまるか、オレは嫌がらせがしたいだけで、それで喜ぶやつがいるならこれほど苛だたしいことはない。やめだやめ、どこか適当なとこへ移り住むか…。
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テレビ局が来てからだ。撮影を始めた途端にポルターガイストが起こらなくなったのだ。ふざけるな。これで話題になってさらに儲けられると思ったのに、どうなってやがる。おかげで客は全く来なくなり、あまつさえ嘘つき野郎呼ばわりまでされるようになった。実際にポルターガイストを経験した奴らでさえ騙されたとか言う始末。これじゃ商売にならない、まだ改装費も回収出来てないのに。最悪だ…。
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あれから数ヶ月くらいか?適当にウロついてみたがどうやら屋敷の外だと物を動かすことが出来ない。女湯を覗いたり他人の家に入ったりもしたが、何も触れないからそのうちに飽きた。仕方ない、あの屋敷に戻るか…。
玄関から入ると吹き抜けの2階にあいつがいた。腹立つ顔のあいつだ。オレを利用して何かやろうとしていたあいつ。顔がやつれてイライラしてるように見える。何があったか知らないがざまあみろ。
…ん?こっちを見てる、オレのことが見えてるのか?
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あれから数ヶ月、周りから散々に言われ、負債も返せないまま。あの屋敷のせいでこんなことに。
こうなったら徹底的に屋敷を漁って何もかも売りさばいてやる。
しかし大したものはなかった。前に漁った時に大体のものは処分してしまっていた。
落胆しながら帰ろうと玄関前の吹き抜けに戻ったら、1階にうっすらと人のようなものが。
…幻覚か?もしや屋敷の幽霊か?…そうだ、全部あいつのせいだ、クソったれ。あいつがポルターガイストを起こさないから、俺はこんな目にあってるんだ。
だからってあいつに復讐することもできない。ちくしょう。
八つ当たりするように手すりを殴った。するといきなりそこが壊れ、勢い余って俺は頭から真っ逆さまに…。
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うわ、あいついきなり落ちてきやがった。オレの頭上へ真っ直ぐに…。
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そうして男は全てを忘れ去り、オトコは全てを思い出した。
が、後悔しても遅かった。