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SOS .004 招待

 意識を飛ばしかけたものの、シルビアは何とか持ち堪える。

すぐ横にうずくまっているソアラも一応無事だった。


 怪我の程度が擦過傷や打撲ぐらいで済んだのは僥倖だ。


「…相っ変わらず、加減出来てないわね」

「ごめ…」

 普段の言葉遣いも出ないほど、

シルビアもほどほどに参っていた。


 ソアラに至っては申し訳なさそうなのと、

シルビアより着地にてこずったので

しばらくは動けそうになかった。


 しかし、ことはそれだけでは終わらなかった。

ソアラの放った飛弾が

落下の際に横の壁も抉っていたらしい。


 バラバラと舞い落ちてくる中小様々な岩粒を避けるため、

シルビアとソアラは悲鳴をあげる体に鞭を打ち、

側道へと移動する。


 すぐには動けないソアラをシルビアが引きずり、

何とか一息をついた。


 側道で一旦座り、近くに

毒性や危険性の強い植物や生物などの有無を確かめ、

最低限の灯りを点ける。


 身体の異常を確認するためだ。


 灯りに余計なものが寄ってこないよう、

薄暗い紫色の光を灯す。


 シルビアは僅かな時間で検分を終わらせる。

「ソアラ、そっちはどうです?」

「…えっ…と」


 歯切れの悪いソアラにイライラしながら、

シルビアはもう一度聞く。


「ぼさっとしてないで、早く」

「……ごめん」


 その音感に妙な響きを感じ、

シルビアは灯りをソアラに向けた。

 致命傷は無い、

けれど致命的なことが起きていた。


 足の骨を折っている。


 いまにも泣きそうな表情のソアラを無視して、

シルビアは考える。

 その後、シルビアは迷うことなく自分の武器を取り出した。


 《神鉄如意(ディフェリ・アニマス)》と銘打たれた固有武具だ。


「《略・治癒(フェレ・メディコ)


「シ、シル「黙って下さい」」


 シルビアにとって神鉄如意に収められている神導力は

文字通りの生命線だ。失うほどに、死ぬ危険は高くなる。


「…打ち身までは自己責任でお願いします。

とりあえず、骨は繋ぎました」

「…ご、ごめ「煩いですよ」」


 シルビアがぴしゃりと打ち切る。


「動けないあなたと動けるあなたなら

後者を選んだだけです。

さあ、早いとこ地上へ帰還しましょう」

「う、うん」


 ただ、シルビアはその帰還を楽観視出来ない理由があった。

 それは、この《洞穴》自体が罠

という可能性があると理解していたからだ。


 その思考を覗き見ていたように、

突如二人の周りに炎が灯る。


「……えっ!」


ソアラが驚き目を見張る。


 炎は熱くは無くただの光源として役割を担っていた。


 まるで行先を誘導するように、

奥へ奥へと続いていく。


「……最悪な招待状ですね」


 シルビアが溜息を吐いた。


 神鉄如意をいつもの形状に戻し、

腰周りに付ける。


 シルビアは生まれつき自分で生成した神導力を

体外に放出させることが出来ない。


 故に、特別にあつらえた固有武具に神導力を補充し、

武具を媒介として神導術を使用している。


 利点としては、武具の形状を変化させることで

汎用性の高い神導術を使えること。


 欠点としては、補充分の神導力が無くなれば、

その時点で固有武具はただの鈍器になり下がる点だ。


 ソアラはそれを知っており、そのため

自分の不手際を補うために、固有武具を無駄遣いさせたことを

申し訳なく思っていた。


 とはいえ、ここでうじうじしていることが良いはずも無い。


「行くしかありませんね」


 シルビアの言葉に、ソアラは黙って頷いた。








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