SOS 181 白雪3
情報収集の定石は飲み屋の男だ。
それも若い男が適している。
理由は様々あるものの、そういう手合いは
大概の話は世間話から
掘り出すことが出来るからだ。
体質的にシロは普通の酒精では酔わない。
それは訓練ではなく体の耐性が有るからだ。
故に幾ら酒精の強い酒を進められても
それで潰れる事は無い。
あしらう必要のある相手には
そういう勝負で
カタを付けることもある。
今も二人目の挑戦者を
のしたところだ。もちろん代金は
そっち持ちだ。
店主もこういう稼ぎは大好きなので
大いに煽る。
「おいおい! 情けない野郎共だなぁ!
お姫様が呆れてるぜ!?」
しかし、二人目が完璧に沈められた様子を見て
次の野郎共は尻込みをしていた。
そこに、独りの優男が軽やかに登場する。
「やっふー、お待たせ。
麗しの姫君よ」
「……初めまして。王子サマ」
「おいおい、ピースかよ!?
どっから聞きつけて来たんだ?」
店主が呆れた声を出す。
「美女の居るところが
俺の安住の地さ。
さあさ、一緒に飲もうではないか」
「……まあ良いですけど。
……どうせならアレにしましょうよ」
シロが指差したのは髑髏と悪魔が画かれた
禁断の酒精。その名も《羅獄》。
周りの男連中が青ざめる。
それは値段が理由ではなく、
その酒精の殺傷能力が
余りに強い事が原因だった。
「おっ! 羅獄? 通だねお嬢さん」
一方のピースは楽しそうに笑う。
「……あー、お姫様?
今更一応確認だが――」
「とっくに成人してます。それに
羅獄は経験済み」
どよめきが起こる。羅獄生還者の女子など
天然記念物みたいなものだった。
「……ったく、人死には勘弁だぜ?
それじゃあ、独弾で――」
「散弾よ」
「いや、待て待て待て待て!
さすがにヤバいだろう!
死んだらどうする!」
「三発入れれば、
一発入れられるわよ? どうする?」
直球で淫靡な誘いに、ピースはニヤリと笑う。
「行くに決まってんでしょう?
俺のお姫様」
『ダン! ダン! ダン!』
と食台に叩きつけるように
二人はそれを三回、一気に飲み干す。
羅獄は食用のりとシロップ、
高純度の香辛料と酒精を混ぜたもので
喉と胃に居座り続ける。
三回目が終了した後、
酒場には一時の静寂が訪れる。
直後、二人は同時に食台に突っ伏した。
「だから言わんこっちゃねえ!
ヤベエ! 下手すれば営業停止どころか
懲罰モンだぜ!?
おい、手を貸せお前ら!」
酒場は再び慌ただしくなった。




