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異世界他殺願望  作者: 朱郷衣紋
2/3

面談

よろしくお願いいたします

気がつくと、上下左右真っ白な空間にいた。

なんとなくだけれど、自分が死んだということが分かった。

真っ白だから天国か?

「君!いつまで立ってるんですか!早く座ってくれませんかね」

驚いて振り返ると、さっきまでいなかった場所に青年がいた。

あと学校の面談に使いそうな机と椅子。

「次もいるんです。早くしてください。」

言いながら不機嫌そうに書類とにらめっこしている。

スーツをビシッと着こなしているので、結構古参の人だろうか。

仕方なく座ると、青年は書類に目を離さぬまま言い放った

「君の死亡要因は自殺で受理されました。ご愁傷様です。」

え?あれはどう見ても他殺じゃないですか?

……まあいいか自殺だろうと他殺だろうと関係ない。

「即刻地獄行きです。…………あれ?あぁ思いだした。今のは無しで。」

ウォッフォン。と咳払いをして続けた。


「最近制度を改めましてね。喜んでください。期間限定ではありますが、自殺者にもチャンスを与えることになったんですよ」


やっぱり他殺を認めてもらわなければと思い始める。チャンスとかなくていいから即刻天国行きに…………。



「ズバリ言いますとね。異世界でもう一回人生を全うしてもらいます。順風満帆でなくでもいいので、ただ正当に生きて自殺をしなければ天国行きが決まります。滅多にいないですが、地獄を選ぶのも選択肢の一つとshi……」

まくし立てるので、慌てて訂正に入る。


「ちょっと待ってください。私は自殺じゃないです。誤解です。トラックに轢かれて……それで」

予想外の言葉に、青年はやっと書類から目を離した。

その後、目をひん剥いた。

「いやぁ、びっくりしました。たいそうな美人ですね。だからといって、決定された内容を変えることはもうできないんですよ。すみません。」

青年はまじまじとみたあとに、再び書類に目を戻した。


「まぁ、いいじゃないですか。異世界に行って人生を全うすれば、天国行きなんだから。」

もう一回人生を…………どうせろくなことないのに、もう一回人生を?

冗談じゃない。やっと楽になれると思ったのに…………。

「不満そうですね。確かに君の歩んできた人生はあまりいいものではないようですが。」

あの書類には自分の人生がかかれているようで、憐みの眼差しを向けられた。

「…………地獄ってどんなところですか。」

真面目に青年に聞いた。返答によっては、地獄でもいいと思った。


「珍しいですね。大抵の人は二つ返事で異世界を選びますが。」

そして過去に浸りだした。

「あそこは憎しみと苦しみしかないところですよ。精神が崩壊してもいいなら止めはしません。」

それは嫌だな。

てことは、もう最初から選択肢なんて…………。

「自殺じゃない人はどうなるんですか?」

苦し紛れに、他の可能性を見つけるべく質問をする。

「人によっては、無条件で地獄行き。それ以外は平等に、天国行きか転生のどちらかを選ぶ権利があります。生前のポイントが高ければ、ちまたで流行りのスキルなどがもらえます。言っておきますが、自殺者にはそういったオプションはつきません。たまにいるんですよね。無双してやる!最強になってやる!と言って早々に死ぬ方が。あくまで、善人の特権であって誰しも、チートや膨大な魔力がもらえるわけがないんです。どこでそんな思想を設けたのかは知りませんが。」

多分、クラスで流行ってたあの長い題名の本だろう。

読んだことはないが。

「早々に死んでしまった人はどこ行きになるんですか?」



「異世界で、全うに生きて特別悪い行いをしてなければ天国行きです。自殺者も同じです。」


ここで一筋の光が見えた。

「その天国はいい所ですか?」


「はい。とても良いところだと聞いています。私は知りませんが」


なんか引っかかる言い方をした。でも覚悟を決めた。


「…………決めました。異世界にします。本当は他殺だったんですがね。」


「他殺だったら、迷わず天国行きだったのに惜しいことをしました。それに君なら、早々に死ぬことはなさそうですね。長年の感がそう言ってます。」

微笑みながら立ち上がった青年は、そう呟いた。

「じゃあ、他殺にしてくだ…」


「無理です」

言い終わる前に即答された。


「それよりも君が危ない思想に走らないか心配です。」


「心配してもらわなくても大丈夫です」

そう言って椅子から立ち上がる。

「例えば…………他殺願望とかね。」


「……………………」


「図星ですか?これは失礼」

不適な笑みを浮かべてぺこりと頭を下げた。



「では、素敵な異世界ライフを」


目の前が真っ暗になったあと、視界が途切れた。




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「驚いたよ。昔の君にそっくりだった。」

青年は、一枚の写真を持っている。


「一応は幸せな家庭に送っておいたが。心配だ。どうにか天国行きと地獄行きを避けることができたが。」

だが、万が一早々に死んだ場合、どうやってこちら側に引き入れるかが問題。

椅子に座ったままぐるぐる回って、急にブレーキをかけた。

「大丈夫だ。君の分まであの子を………………」

それと、書類を見ながら面談する癖を直さなくちゃな。


青年はまた書類に目を通し始めた。

誤字脱字あったらすいません

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