面談
よろしくお願いいたします
気がつくと、上下左右真っ白な空間にいた。
なんとなくだけれど、自分が死んだということが分かった。
真っ白だから天国か?
「君!いつまで立ってるんですか!早く座ってくれませんかね」
驚いて振り返ると、さっきまでいなかった場所に青年がいた。
あと学校の面談に使いそうな机と椅子。
「次もいるんです。早くしてください。」
言いながら不機嫌そうに書類とにらめっこしている。
スーツをビシッと着こなしているので、結構古参の人だろうか。
仕方なく座ると、青年は書類に目を離さぬまま言い放った
「君の死亡要因は自殺で受理されました。ご愁傷様です。」
え?あれはどう見ても他殺じゃないですか?
……まあいいか自殺だろうと他殺だろうと関係ない。
「即刻地獄行きです。…………あれ?あぁ思いだした。今のは無しで。」
ウォッフォン。と咳払いをして続けた。
「最近制度を改めましてね。喜んでください。期間限定ではありますが、自殺者にもチャンスを与えることになったんですよ」
やっぱり他殺を認めてもらわなければと思い始める。チャンスとかなくていいから即刻天国行きに…………。
「ズバリ言いますとね。異世界でもう一回人生を全うしてもらいます。順風満帆でなくでもいいので、ただ正当に生きて自殺をしなければ天国行きが決まります。滅多にいないですが、地獄を選ぶのも選択肢の一つとshi……」
まくし立てるので、慌てて訂正に入る。
「ちょっと待ってください。私は自殺じゃないです。誤解です。トラックに轢かれて……それで」
予想外の言葉に、青年はやっと書類から目を離した。
その後、目をひん剥いた。
「いやぁ、びっくりしました。たいそうな美人ですね。だからといって、決定された内容を変えることはもうできないんですよ。すみません。」
青年はまじまじとみたあとに、再び書類に目を戻した。
「まぁ、いいじゃないですか。異世界に行って人生を全うすれば、天国行きなんだから。」
もう一回人生を…………どうせろくなことないのに、もう一回人生を?
冗談じゃない。やっと楽になれると思ったのに…………。
「不満そうですね。確かに君の歩んできた人生はあまりいいものではないようですが。」
あの書類には自分の人生がかかれているようで、憐みの眼差しを向けられた。
「…………地獄ってどんなところですか。」
真面目に青年に聞いた。返答によっては、地獄でもいいと思った。
「珍しいですね。大抵の人は二つ返事で異世界を選びますが。」
そして過去に浸りだした。
「あそこは憎しみと苦しみしかないところですよ。精神が崩壊してもいいなら止めはしません。」
それは嫌だな。
てことは、もう最初から選択肢なんて…………。
「自殺じゃない人はどうなるんですか?」
苦し紛れに、他の可能性を見つけるべく質問をする。
「人によっては、無条件で地獄行き。それ以外は平等に、天国行きか転生のどちらかを選ぶ権利があります。生前のポイントが高ければ、ちまたで流行りのスキルなどがもらえます。言っておきますが、自殺者にはそういったオプションはつきません。たまにいるんですよね。無双してやる!最強になってやる!と言って早々に死ぬ方が。あくまで、善人の特権であって誰しも、チートや膨大な魔力がもらえるわけがないんです。どこでそんな思想を設けたのかは知りませんが。」
多分、クラスで流行ってたあの長い題名の本だろう。
読んだことはないが。
「早々に死んでしまった人はどこ行きになるんですか?」
「異世界で、全うに生きて特別悪い行いをしてなければ天国行きです。自殺者も同じです。」
ここで一筋の光が見えた。
「その天国はいい所ですか?」
「はい。とても良いところだと聞いています。私は知りませんが」
なんか引っかかる言い方をした。でも覚悟を決めた。
「…………決めました。異世界にします。本当は他殺だったんですがね。」
「他殺だったら、迷わず天国行きだったのに惜しいことをしました。それに君なら、早々に死ぬことはなさそうですね。長年の感がそう言ってます。」
微笑みながら立ち上がった青年は、そう呟いた。
「じゃあ、他殺にしてくだ…」
「無理です」
言い終わる前に即答された。
「それよりも君が危ない思想に走らないか心配です。」
「心配してもらわなくても大丈夫です」
そう言って椅子から立ち上がる。
「例えば…………他殺願望とかね。」
「……………………」
「図星ですか?これは失礼」
不適な笑みを浮かべてぺこりと頭を下げた。
「では、素敵な異世界ライフを」
目の前が真っ暗になったあと、視界が途切れた。
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「驚いたよ。昔の君にそっくりだった。」
青年は、一枚の写真を持っている。
「一応は幸せな家庭に送っておいたが。心配だ。どうにか天国行きと地獄行きを避けることができたが。」
だが、万が一早々に死んだ場合、どうやってこちら側に引き入れるかが問題。
椅子に座ったままぐるぐる回って、急にブレーキをかけた。
「大丈夫だ。君の分まであの子を………………」
それと、書類を見ながら面談する癖を直さなくちゃな。
青年はまた書類に目を通し始めた。
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