蓮の花四輪 上目使いはかわいい女の子がすると反則~途中まである女の子の視点からお送りします~
四話目です!
この話では第一ヒロインがでます!
サブタイトルでも書きましたが上目使いはかわいい女の子がすると反則だと思います。
(なんなの……あの人……)
私はシャル。シャル・エスタリック。シクランの街で守護傭兵をしている。シクランの街のギルドに依頼完遂の報告の為、戻って来た。
ギルドの前に立つ変な男を見つけた。何故か血だらけの服を手に持ち、リュックを背負ってメイスを装備したその男はギルドをマジマジと見ている。
まぁ、それだけなら私だって何も思わない。この街で見かけないからギルドへの依頼人か登録しようとしている人だろう。でもドアの前に立たれると正直邪魔。だってドアは人が並んでも二人しか入れない。よけて入ったとしてもぶつかってしまう。
それに依頼終わりで疲れたし、早くご飯食べて汗を流したい。
だから思わずこう言った。
「……邪魔」
「へ?」
(へ?じゃないわよ!!)
私はそう思いながら、睨みつけるようにこう言った。
「邪魔だって言ってるの!どいてよ!」
「あ、あぁ、ごめん!」
どいてくれた。ドアの前に居座るなんて、常識知らず。
まぁ、お腹すいてて、イライラしてるからって見ず知らずの人に当たるのもおかしな話なんだろうけど。
カランカラン
と、そんな音をたててドアが開いた。
「ふんっ!」
入る時にそんな事を言って入った。だってむしゃくしゃしてたし。
依頼報告専用のカウンターで受付嬢の人に依頼完遂の報告をした。その後ギルド内に併設された食堂のいつものお気に入りの窓際に、料理を注文してから座る。
そこで私はふと思う。
(あ、依頼人だったらどうしよう……)
もし依頼で来てたなら私のせいで依頼しなくなってしまう。そんな事しないかもしれないけど不安は払拭できない。一応謝ろうと思い近づこうとすると彼に近づく二人組を見つけた。
(あれって確か……)
あれはCランクのコンビ。ゲイスとフガンの二人だ。柄の悪そうな格好をしているがこれには理由があって、初心者に対する洗礼でもある。もし彼らにびっくりして帰るようなら向いておらず、反抗するようなら、戦ってその初心者の適性を見る。いわば入会試験のようなもの。彼らが近づいたってことは、あの人は依頼人じゃなく登録しようとした人だった。
薄汚い言葉を使いながら、どういう反応をするか見ている二人と面倒くさそうにしている彼。
そんな中、フガンの言葉で彼の態度が一変した。
「そんな棒へし折ってやるよ」
と、投げかけられた言葉に彼は顔を怒りに染めながらこう返した。
「……撤回しろ」
あれは完全に怒っている。まぁ、入会試験の為とはいえ、自分の愛用する武器をバカにされたら誰だって怒る。
それからと言うもの一方的な戦いだった。
フガンの上段の振り下ろしを交わし、後ろに逸れるとこういって反撃した。
「アスタルーク式棍棒戦術 1の型 バンブーブレイク」
アスタルーク式棍棒戦術。多くの狩人を輩出し、守護傭兵にも多くの有名な傭兵達の師や、傭兵として成り上がった者達の出身がこの村で、総人口はこの街の2万人にも匹敵する程らしい。守護傭兵や狩人を生業する者達にとっては聖地とも言える場所。
でも登録したての彼がCランクの二人を相手に、一方的に攻撃するなんて有り得ない。例えあの村の出身であったとしても……。
Cランクならばベテランとも認識されるランクで、下のDランク、Eランク、Fランクが才能のみでしか超える事のできない壁……。それをあそこまで手玉に取れるなんて……。
その後のミナリスとの会話でも驚きが隠せない内容だった。
それは、滅棍のロイド様の弟子で、兄弟子の斬棍のシンク様とは親友だという。
滅棍のロイド様は当代最強と言われていて、さっき彼が使っていたバンブーブレイクであっても貴族の私兵隊一つは軽く落とす事ができる。何せとある貴族がロイド様の奥様を拉致した。その事に完全にキレたロイド様がその貴族の家に突撃して、家そのものをぶち壊したという。
その時、シンク様が苦笑いしながらポツリとこう零したらしい。
『アスタルーク式の入門技であるバンブーブレイクだけでこの惨劇か……。さすが師匠。……引くわ~』
……その後ロイド様に拳骨をもらったと、いまでも各地でその話が語り継がれている。
ちなみにロイド様は貴族に攻撃したが、その貴族は私腹を肥やす輩で、国家転覆を狙った計画書が多数見つかった為、国家転覆を未然に防いだとしてお咎めなしだったらしい。
そしてシンク様は単独でAランクの魔物を二体も討伐した。Aランクの魔物は一体であっても、Aランクの守護傭兵が6人いないと勝てない。準備を万全にして戦ったとしても半数近くが死んでしまう結果になる。それを単独で二体も討伐したシンク様は当時Bランクだった。
そんな二人と関係が深い彼がもし、このギルドの問題に巻き込まれたら。みんなはそんな事を考えて、ざわついている。
でも私はこう考えた。
(もしも彼とコンビ、若しくは團を組んだなら……。私の夢に近付くはず!)
私の夢。それは母さんが創設したレギオンの復活。母さんの結婚と共に消えちゃったけど、娘の私がもう一度甦らせる。それが私の夢。だからなんとしても彼を引き込む。
(あ、でも……)
そう。彼にとって私の第一印象は最悪だ……。 これじゃあ引き込むなんて無理……。
いやいや!諦めない!私の夢を彼にも手伝ってもらいたい。自分勝手なのはわかってるけどどうしても叶えたい!
そう思いながら彼を見ていたら目があった。
逸らそうかと思ったけど、またそれで印象が落ちたら元も子もない。
私は意を決して話しかけた。
「……ねぇ?ちょっと話があるんだけど……いい?」
◇◆
「……ねぇ?ちょっと話があるんだけど……いい?」
と、話掛けられた。まぁ、女の子と話を聞くのを断るなんて俺には無理だから、了承する。
でも、シンクがいるんだよな。
「いいよ。でもこいつもいるけどいい?」
と言って、後ろにいるシンクを指差す。
「し、シンク様!?」
あれ?気づいてなかったの?まぁ、いいや。とりあえず同席していいか了承を取ろうかと思って彼女に話そうとすると俺が何か言う前にシンクがこう言った。
「あぁ、俺の事は気にしないでいいよ。しばらく話でもしてて」
そう言うと、ギルドを出て行った。
よし!逃げれるぞこれで!
カランカラン
「逃げるなよ?」
と、一度戻ってきて言うと、また外に出た。
ちっ!お見通しか……
カランカラン
「その通り!お前わかりやすいからな」
うぉ!びっくりした!
俺を脅かしたセリフを吐いて出て行った。
あいつ……俺の心読めるのか?
カランカラン
「読める訳じゃない。お前がわか──」
「早く行けよ!!」
思わずツッコミを入れてしまった。
するとニヤニヤしながら出て行った。
……いつかあの金髪碧眼のイケメンを絶対泣かしてやる……。
とりあえずシンクの事はほっといて彼女の話を聞こう。
と、思って振り向くと彼女は硬直していた。
「あなた……シンク様にあんな口聞いて大丈夫なの?」
なんだ、そんな事で固まってたのか。
俺は頭の後ろをがしがしと掻きながら答える。
「いつもの事だよ。気にしないで」
「そう……」
まだ慣れないらしい。まぁ、ミナリスさんの話を聞く限り、師匠もシンクも有名だからな。
……と、言っても師匠は飲んだくれだし、シンクに至っては俺の初恋の女の子の彼氏だ。……それ以来年上の女の子を好きになれないようになったのは言うまでもない……。まぁ、もう割り切ってるからいいんだけどさ。
そんな事より話だ話。
「それで話って?」
「あ、そうだった」
……忘れてたのか……。
すると彼女はもじもじしながらこういった。
「ごめんなさい!」
へ?なんか告ってもないのにフられたみたいなったんだけど……。
「えっと……何が?」
「さっき……ひどいことしたし……」
「そんなことしたっけ?」
……特に思い当たる節はないな。
「……邪魔とか言っちゃったし……その後感じ悪い態度を取ったし……」
「あぁ、その事か。別に気にしないでいいのに」
「それでも!……これから頼み事をする上でうやむやにしたくなかったし……」
そんな事気にしなくていいのに。
「そっか。じゃあ解決って事で頼み事って?」
「え?」
「え?って。俺は気にしてないし、君も気にしない。それで解決って事でいいんじゃない?」
「……うん。ありがと」
……可愛い女の子の上目使いは反則だと思う。
「……それで頼み事って?」
咳払いをして頼み事とやらを聞く。お金貸してとか以外なら聞こう。
……でもさっきの上目使いをされたら断れる気しないな。最悪シンクにたかろう。
「私と……コンビ組まない?」
「いいよ」
即決した。
やっぱり可愛い女の子の上目使いは反則だ。断れる気しないし断ろうとも思わなかった。
設定解説
名字
レンカ達の住む大陸では、名字は全ての人間にあり、名字を持つのは貴族だけと言うのはレンカ達の住む大陸の隣の大陸の人間だけです。
名字の付け方は3つあり、レンカやシンクのように村や町の名前が名字になる場合です。日本で言うと「東京 太郎」みたいな感じです。次に王族や貴族から功績を称えられ、新たに名字を付けられる場合です。この場合、功績次第で貴族になることもありますが騎士爵なので一代限りです。ですが名字は残りますので、そのまま使い続けることができます。最後に王族から名付けられる場合です。これは騎士爵以上の貴族になった場合のみ、そうなります。滅多におきることはないです。
シクランの街
シクランの街はアスタルークの村に近い事もあり、守護傭兵にとっては、王都の次に聖地とされています。何故アスタルーク村が近いだけで聖地かというと、アスタルーク村は、エルフの森と魔物の森に挟まれている為です。村とはついていますが、町並の規模と人口で、エルフの森に流れる魔物を狩り、流れないようにしてるとされ、魔物の森に住む魔物は多種多様な魔物がおり、遭遇すると生きて帰れないような魔物もいるため、滅多なことでは人は入らず、稀にアスタルーク村の住人が出入りしてる程度な為、シクランの街が聖地となっています。