蓮の花三輪 登録と兄弟子~主人公視点でお送りします~
第三話、スタートです。
この話で主人公の名前を明かします!
察しの良い方はタイトルでわかったかもしれませんね。
ちなみにですが、主人公の名前の由来をわかる方は作者と話が合うかもしれませんね。あ、由来って言うのは物語上で出てくるものじゃなくて、名前を考えた時、閃いたネタみたいなやつの話です。
とりあえず某アクションゲームが原作のアニメの主人公とだけ言います。
パクリ?いえいえ、リスペクトです!
あ、それと兄弟子の名前も察しの良い方は由来に気づくかと思います。
わからなかった方はタグの「日本の世界観もあり」が仕事してるとでも思ってください(笑)
「どうすんだよこれ……」
俺は人生最大のピンチに立たされている。それはこの腕が元に戻らないことだ。
「またあの騎士さんと同じことなるじゃん」
『なんじゃ?修羅場は終わったのか。つまらん』
「うぉ、びっくりした。いきなり話かけんなよ。……つーかてめぇ、あの騎士さんが来てるのわかってただろ?」
『当然じゃな』
「ふざけんなよ!!なんで教えてくれなかったんだよ!!」
この駄竜……どうしてくれようか……。
『もっと面白くなると思ったのじゃが……つまらんのぉ~貴様は』
「うるせー駄竜!!」
『わしは駄竜ではない!ブラードという名を持っておる!!』
「初めて聞いたわ!」
『初めて教えたからのぉ』
「むかつくわこの駄竜」
『ブラードと教えたじゃろ小僧!!』
「てめぇが小僧って言うからだ!そんなやつ駄竜で十分だ!!」
『ガキか貴様!』
「貴様とかいうやつには絶対教えない!」
『やっぱりガキじゃな』
「うっせー駄竜!!」
にしてもこんなにワイワイ騒いだのいつぶりだっけ……。あ、オヤジが死んで以来か。
「とりあえずこの腕を元に戻せよ」
『いやじゃ、戻したらつまらん』
「ふざけんなよ!!戻せ!!」
『……はぁ~つまらんのぉ。ほれ、戻す為の詠唱を送っておいた。使う時は最初に教えた方を唱えるといい。それと──』
「よし、使うぞ。〖眠れや竜の瞳。その目閉じし時、世の理を視界に写さん〗竜眼 閉眼」
『最後まできか──』
「ん?どうした?」
あれ?無言になった。……もしかして、この詠唱はあの駄竜を黙らせて腕を元の人間の腕にするものなのか。
よし、これで問題は解決したな。
到着したな。故郷の村に一番近い街──シクランの街だ。ここで一泊して明日、王都に向かう馬車に乗るか。
「次の者、ここに来い」
さて、門番の騎士のおっちゃんが呼んでるから行くか。
「次はお前さんか」
「どうも」
「身分証かなんかは持ってるか」
「あー、村の出なんで持ってないですね。一応、村長から仮身分証をもらってます」
「じゃあそれを見せてくれ」
「はい」
俺は背中に背負った鞄から取り出す。
「にしてもお前さん、その服どうしたよ。血だらけじゃないか」
ギクッ……やばい、代えの服着るの忘れてた。
「あ、あぁ、フォレストウルフに襲われたんですよ。それで近くに偶々いた騎士さんに助けてもらったんです」
「そうか、それは大変だったな」
「まぁ、そッスね。でも生きてるだけ得でした」
「それもそうか。お前さんの故郷の村、アスタルーク村の人間は狩りの名手を多く排出してる。その村で育ったなら騎士が駆けつけるまでもつのも不思議ではないな」
自分の故郷が誉められるのは嬉しいものだ。俺は頭をぽりぽり掻きながら答える。
「それほどでもないですよ」
「よし、問題ないな。入っていいぞ。あ、一応この街にも守護傭兵のギルドができたんだ。そこで登録しとくといい」
「ありがとうございます!」
いいおっちゃんだったな。さて、ギルドに向かおう。
「ここかぁ~」
ギルド──傭兵会館出張所。ここで登録しておくと身分証の代わりで自分のランクがわかるという不思議なカードが貰える。古代の術式を昔の天才が調べて作ったとされているらしい。まぁ、詳しくは知らないけど……。
ちなみにだが俺はさっきのおっちゃんの許可を得て着替えた。そのまま入ろうとしたら全力で止められた。うん、当然だな。俺だとしても止める。つか止められるまで気づかなかった俺って一体……。
「……邪魔」
「へ?」
「邪魔だって言ってるの!どいてよ!」
「あ、あぁ、ごめん!」
俺の後ろに、黒髪を肩口まで切りそろえた、女の子が立っていた。とりあえず退こう。
「ふんっ!」
カランカラン
と、そんな音を鳴らしてドアが開く。
……なんか怒らしたかな?……あ、それもそうか。ギルドに入ったって事はギルドの一員、守護傭兵だ。多分依頼の帰りだったんだろう。そこに見知らぬ男がドアの前に突っ立ている。そりゃあ怒るわ~邪魔だから。
カランカラン
俺もギルドに入った。
「当ギルドは初めてでしょうか?」
「あ、はい」
話しかけて来たのはギルドにいる、傭兵会館受付専門担当部門──通称、受付嬢と呼ばれるお姉さんだ。
「どのような御用でしょう」
「ギルドに登録しようかと思いまして……」
なんか……嫌な予感がする……。
「おいおい!こんなガキが登録だ?家に帰んな、ここは遊び場じゃねーんだよ」
ほら来た……。うわ~……柄悪いな。面倒くさそうな二人組が話しかけて来た。
「しかしこんな棒で何するんだ?冷やかしかよ」
「そんな棒へし折ってやるよ」
……あ?こいつら何言ってやがるんだ?これはオヤジの形見で立派な武器、魔術強化式戦棍──マジックメイスだぞ。どんだけ知識ねぇんだこいつら。しかもこれをバカにした。許さねぇ……。
「……撤回しろ」
「あ~?」
「撤回しろって言ってんだ。聞こえないのか?バカ共」
「……ガキが。調子に乗るなよ!!」
「後悔させてやんよ!!」
「俺のセリフだ。二流が」
キレた。完全にキレた。こいつらマジ泣かす!!
剣や斧を持ってこちらへ来る相手を俺はしっかりと見据える。
……遅い、遅過ぎる。フォレストウルフの方が断然早い。
剣は上段から振り下ろされ、斧は大振りに振る為に横に構えている男がいる。つまり剣で切りつけてその後斧で横薙するつもりか。
まぁ、当たらねぇけどな!!
「アスタルーク式棍棒戦術 1の型 バンブーブレイク」
俺の村は多くの狩りの名手を排出している。
それは何故か。それは森神を信仰しているからだ。森人族が信仰している神様でもあるが、俺の故郷の村の先祖はエルフ達の信仰に深く興味を持っていたらしく、人間も信仰しやすい流派を作り、エルフと共存したらしい。
ちなみに俺の初恋の女の子はエルフだ。……んなことどうでもいいか。森神を信仰し、森と共に生きる。それを体現したからこそ、森から愛される。
だからこそ森を生かした戦術を得意とする攻撃方法が出来る。
バンブーブレイクは森神を信仰すると初めて出来るようになる棍棒戦術の一つで、棍棒をカチ上げる動きと突き上げる動きを連続で行うことで竹と呼ばれる木の生え方を表現している。エルフの森には竹があるらしいが俺の村にはなかった。
ちなみにこの技は体力が続く限り、打ち続け威力があがる技だ。
ガツン、ガツン!ガツン!!ガツン!!!──
「ぐぁ!」
「ぐへっ!」
「や、やめ、ぐわぁ!」
「オラ!!オラオラオラオラァァァ!!」
「「ぎゃぁぁぁ!もう止めてくれ!」」
ふぅ~、すっきりした。武器をバカにするやつは武器に泣く……。お前らの敗因はこのメイスをバカにしたからだ。
柄の悪い二人組はズタボロだ。ざまぁみろ!
「あ、あなたはもしかしてアスタルーク村の出身ですか?」
「あ、さっきの受付嬢さん」
「ミナリスとお呼びください」
「じゃあミナリスさんで」
「それで、先ほどの質問ですけど」
「あ、はい。アスタルーク村の出身ですけど」
ザワザワ……
おおぉ……なんかざわめいてる。
「あの……なんでこんなに騒いでるんですか?アスタルーク村は普通の村ですよ?」
「何を言ってるんですか!!アスタルーク村の狩人は一人で騎士10人分の力があると言われてるんですよ!!」
「え?いやいや!変人と戦闘狂ばっかですけどそこまで力がある連中なんて5人しか知りませんよ!」
ちなみに俺は戦闘狂でも変人でもない!普通だ!怒ると手付けられないだけの普通のやつなんだ!
「…あなたはその5人と親しいのですか?」
「村長と爺ちゃんと師匠と親友と死んだオヤジですね」
唖然としてる。なんで?
「ものすごい親しいじゃないですか!」
「村長は村の祭事の時しか会いませんし、爺ちゃんは今、村にいませんよ」
「もし……もしですよ?あなたがこのギルドの問題に巻き込まれて怒るとしたら誰ですか?」
うーん、村長は祭事の時しか会わないし、爺ちゃんは放任主義だし……。
「師匠と兄弟子の親友くらいでしょうか」
「師匠のお名前は?」
「ロイド・ヴィス・アスタルークですけど」
「な!滅棍のロイド様ですか!?」
え?滅棍のロイド様?
「……様付けするほどじゃないと思いますよ。飲んだくれですから」
「そうは行きません!」
と、握り拳を作り、力説するミナリスさん。……不覚にもかわいいと思ってしまった……。
「ち、ちなみに兄弟子はシンク・アスタルークって言います。さすがに知らないですよね……。」
「斬棍のシンク……あなたはそんな方と親友なのですか!!」
「……そこまで凶暴じゃないッスよ……怒らせなければ……」
「当代最強と言われる滅棍のロイド様とそのお弟子で斬棍のシンクさんのお二人の活躍は今でも有名です」
「そ、そうなんですね……あ、その二人の知り合いだからって審査とか楽にするのやめてくださいね。そんなことしたら俺、あの二人からリンチにされる……」
うっ、トラウマが……。
「で、ではこちらに来てください」
と、案内されたのはカウンターだ。
「ここに名前と出身、得意戦術などを書いてください。代筆も可能ですが」
「一応、名前と出身、戦術くらいは書けます。まぁ読めても書けないのが問題なんですけどね……」
「大丈夫ですよ。大きな街から来た方以外は自分の名前や出身すら書けない方もいらっしゃいますから」
「そうですか……とりあえず書きますね」
よし、書けた。
「レンカ・アスタルーク様ですね」
「あ、様付けはしなくて大丈夫です。様付けされる程偉くないですし」
「そうですか、ではレンカさんと呼ばせていただきます。ではギルドの規約などを説明しますね」
「お願いします」
こうしてギルドに登録出来た。
え?ギルドの規約?それはまた次回話すことにする。……って俺は誰に言ってるんだ?次回ってなんだよ……。
と、俺が関係ない事を考えてると。
カランカラン
「レンカ」
げっ!あいつは……。
「し、シンク!!なんでここにいるんだよ!!」
「お前を追って来たに決まってるだろ」
「俺は戻るつもりないぞ?」
「知ってるよ。師匠も俺も、村の連中も納得してる。まぁ、メリダおばさんは寂しそうだったけどな」
メリダおばさんってのは俺の婆ちゃんだ。
「ならなんで?」
「これを渡しに来た」
渡されたのは大きめの槍。穂が大きめに作られ、太刀打ちの半分を魔術機構という装置が覆っている特殊な槍。大きさは馬上槍と普通の槍の中間くらいだ。
「これは?」
「変形式魔術機構槍、パイルダムランスだ。お前になら使いこなせるだろうって事で渡された」
「そうか。ありがとう。じゃあまた村帰った時に逢おうぜ」
「何いってんだ?俺もお前と王都に行くぞ?」
待て待て、シンクもくる?冗談じゃねぇ。それに俺にはあの駄竜の右腕がある。シンクや村のみんなに知られる訳にはいかない。
「は?なんでだよ!」
「師匠もお前を心配してんだよ。ここはアニキを頼れ」
「アニキってお前は俺と7歳しか変わらないだろ!」
「だがお前より7歳も上で兄弟子だ。アニキなのは変わらないだろ?」
「反対だ!」
「なら村に連れ戻す」
「……ぐっ!」
これを言われるとな……。仕方ない。なんとかごまかしながら過ごすか……。
「……わかった」
「よし、じゃあよろしくなレンカ」
「あぁ、こちらこそだシンク」
バレないようにしなきゃ……。
「そういえばそこに倒れてる二人はなんだ?」
「俺に絡んだ」
「なんだと?」
ヤバい、シンクがキレそうだ。
「で、返り討ちにした」
「なんだと?」
あれ?なんで?
「ここまで強くなったなら俺と勝負だ」
「ふざけんな!これから色々することあんだよ!」
「ならそれが終わってからだ」
「ちゃんと今度してやるから、すること終わってもしないぞ」
「しなかったら村に連れ戻す」
「わかったよ!」
絶対しないけどな!!どうにかしてシンクから逃げなきゃ。
そういえば、さっきギルドの入り口で怒らせた女の子がこっち見てる。なんでだろう?
設定説明
変形式魔術機構槍
通称、パイルダムランスと呼ばれる魔術機構を仕込んだ槍。魔術機構はその名の通り魔術を術式にして詠唱する事なく、魔力のみで動かせるようにした機構。変形式と付いているのは3つのモードに変わる為。2つ以上のモードが搭載されているものはすべて変形式と付く。
変形式にするには、最大でも3つの術式を組み込まないといけない為、威力は高いが使い手がなかなか現れない武器でもある。
アスタルーク式棍棒戦術
初代アスタルークが作った戦術。槍、弓、斧、棍の4つからなる戦術の内の一つで、対人戦闘向きの戦術。森神を信仰する事で得られる、水、風、土、木の恩恵をフルに生かすことができる。水は槍、風は弓、土は斧、木は棍と相性がよく、相性の良い恩恵の力が使える。
森神
主に森人族、つまりエルフが信仰している女神で、狩りと鍛冶、自然を司っており、土人族、つまりドワーフの中にも信仰する者もおり、人族は信仰していなかったが初代アスタルークが人族でも信仰できるよう、確立したのがアスタルーク派というレンカとシンクの出身地、アスタルーク村の宗教である。慈愛と成功できる難しい試練を与えるとされ、その試練を成功するとさらなる慈愛で力を与えると伝承されている。
アスタルーク村
レンカとシンクの故郷。人族で唯一の森神信仰の村で、狩りの名門。アスタルーク村の狩人は一人いれば騎士10人は倒せると言われる程、凄腕。しかもその噂はあながち嘘ではない。
血気盛んな村人が多く、レンカ曰わく「変人で戦闘狂の集まり」だという。しかしこれは誤解でレンカの周りの者達のみがその傾向が強いだけで、他の村人は自ら戦闘を起こさないが、起きたらやむなし、徹底的に叩きのめすが心情。