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シン・プロセス  作者: 古時計屋
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4.故郷の目覚め

体を揺すられる感覚と共にニーナは目を覚ました。


「大丈夫ですか?ニーナさん。」

 心配そうにニーナの顔を覗きこむように見るミア。何故そのような顔で自分を見るのだろうと顔に手を当ててみると、頬に湿りを感じる。


「ああ、ミア。私、また……うなされてた?」

「はい、かなり。」


 そういって申し訳なさそうにするミア。


「ごめん、そんな気はないんだけど、ミアには凄い気苦労かけさせてるね。」


 そう謝るニーナにミアはあははと笑って、


「あんな事があった後ですしね、仕方ないですよ。」


 そう言われてニーナが思い返すのはグラドボロスの事だった。一昨日、グラドボロスは私たちの魔導車に向けてその巨体を動かしてきた。ニーナと運転手は震え、死の恐怖に襲われた。けれど、その後、グラドボロスはニーナたちに何かをするでもなく、魔導車ごとニーナたちをまたいで、また遠くへと行ってしまったのである。


「うん、思い返すとまだ体が震える。あなたは大丈夫なの?」

「初めてじゃありませんしね、流石に何回か経験を積むといい加減慣れちゃいました。」


 そう苦笑するミアにニーナも苦笑いする。


「それは嫌な話だよね。」

「ええ、困った話です。」


 二人でくすりと笑った後、ミアが思い出したと手を合わせて言った。


「あ、そうだニーナさん。イノリス村が見えてきましたよ。もう十分もあれば到着です。」

 ニーナはそう言われて、すぐに窓を開けて顔をだす。目の前に広がるのは枯れ果てた大地、その少し先に人工の建物の姿がいくつか見えた。


「ああ、そうか帰ってきたんだ.…。」


 ニーナは一人誰にも聞かれないように呟く。その感慨を胸にニーナは6年ぶりに故郷に訪れた。

 村に入ってニーナを最初に迎えたのは、記憶の中とあまり変わらない街の光景だった。確かに地面の色は違うのだが、村の目印でもある大きな生糸工場は記憶通りの場所にあるし、子供の頃よく遊んだ公園もそのままの姿で残っていた。


「村中の人が死んだと聞いていたから、もっと死体が転がっていると思ったんだけどね…。既に前に訪れた人が片付けを?」

「いえ、『魔女領域』に取り込まれた人間は、基本着ていた服も骨も残らずに消滅してしまうんだそうです。だからこの村は6年前からずっとこのままなんだと思います。」

「そっか、骨も残ってないんだ…。」


 そう聞くとニーナは少し悲しくなった。父が生きた人間だったという証はもうどこにもない。


「これからどうされますか?魔女が最初に現れたという場所を調べられます?それともニーナさんの家にいかれます?」


 そう尋ねられニーナは一瞬きょとんとした後、困ったなと頭をかく。


「なんだ、私がこの村の出身だったって事はすでに調べはついていたんだ、そこは頑なに隠したと思ったんだけどな.…。」

「ごめんなさい、皇国の調査機関から既にあなたの素性は聞かされていて、あなたが『魔女領域』で行く場所にこの地を指定した事から、あなたの目的がきっと故郷の訪問なんじゃないかなと思ったんです。ここは『魔女領域』でも特に忌み嫌われてる場所ですし。」

「ふふ、間違いない。そうだね、私は研究という建前で、ここにもう一度訪れてみたかったんだ。魔女が現れてここが領域に飲まれてから、もう二度とこれないと思っていたからね。」


 ニーナは町並みを見る。少しさびれてはいるが、確かにニーナの記憶にある姿と合致していた。ここでニーナ・リアスは育ち、学び、遊び、そして父を失ったのだ。ニーナはその思いを秘めて決意を固めてミアに言う。


「ねぇ、ミア、一つ頼みをしていいかな?」


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