表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

* 序 *


 少年らしく逞しささえ感じられるようになった貫太かんたの背中が、まだ熱を持たない早朝の眩しすぎる光の中、自宅に面した細い坂道を下り、次第に遠く、小さくなっていく。

 門の前で見送るショーコの胸は、キュウッと締めつけられていた。鼻の奥と言おうか、目と目の間の骨と言おうか、とにかく、その辺りに違和感。軽く息も詰まる。貫太を初めて幼稚園に送り出した時の気持ちに似ている。

「お母さん、僕、戦うよ」

貫太が突然、そう切り出したのは、昨日の晩のことだった。そして、急な旅立ち。

 やがて、坂道を下った突き当たり、中村なかむら家の前の道を左に曲がり、貫太の姿は完全に見えなくなった。

 それでもなお、立ち尽くすショーコ。

 清次きよつぐが家のほうへ体の向きを変えつつ、不器用に、そっとショーコの肩に手を置き、気遣わしげに口を開く。

「お母さん、もう入ろう。あんまり外にいると、体に良くねえよ」


 

 先に立って家の中へと歩き出す清次のすぐ後に続き、ショーコは、1歩踏み出してから、もう一度、貫太が行った坂道を振り返った。

(戻れたらいいのに……)

貫太がまだ幼かった頃に戻れたら、そして、そのまま時が止まってくれたら……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ