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死の予測 ~流れ着いた先は敗戦寸前の国でした~  作者: リザイン
第1章 漂流、そしていきなり戦場
2/18

1-2 漂流

「……」


 次に気がついたときわかったことは、ハルトはうつ伏せで砂浜に打ち上げられているということだった。

 口の中に砂が入るが、砂を吐き出すことすらできないほど体が動かない。

 一体どのくらい漂流していたのだろうか。

 どうにか息はしているようだが、顔を上げられない以上ここが砂浜である以外の情報が何も入ってこない。

 少しして、遠くから声が聞こえてきた。 


「ああーーっ! ねぇねぇおねぇちゃんおねぇちゃん、あそこに誰か倒れてるよ!」


「本当ね。けどリエル、触ってはダメよ。もし死んでたら汚いもの」


 な、なんだ? 何か足音が近づいてくる……。

 やがて、その足音はハルトのすぐ近くで止まった。


「つんつん、おーい、生きてますか~?」


「見たことのない服装ね……どこの国のものかしら」


 声からして、女だとわかる。顔を見れていないのでなんともいえないが、まだ若いだろう。

 とりあえずハルトは自分が生きていることを示すために、必死で身じろぎした。


「うわっ! おねぇちゃん今この人動かなかった?」


「もしかしたら生きているのかもしれないわね…」


――もしかしたらじゃなくて生きてるっつーの!

  

 しかし、毒のおかげで体がまともに動けないハルトは、その意思を伝えることができない。


「とりあえず、レイナ様に言ってくるー!」


「ええ、そうしなさい。私はこの男を見張っておくから」


 そう言うと、やたらと1人の足音が遠ざかっていく。

 とりあえず、早くこのうつ伏せから解放されたいと思うハルトだった。


「さて……と、とりあえず危ないものがないかチェックしようかしら……」


 そう言うと、ハルトは初めてうつぶせから仰向けにさせられる。

 ようやく息苦しかったのが解放されたハルトは、少し安堵すると、その少女と目があった。


「ひゃああ!? お、起きていたのね……びっくりしたわ」


 女の子はびっくりして飛び退く。

 そして胸に手を当てて落ち着かせると、


「体、動かせないの?」


「あ、ああ……」


  (あれ? 声も出せるようになった…うつ伏せだったから声を出しにくかったのか……。

   相変わらず体は動かせないままだが)


 ハルトは、目の前にいる女の子のことをまじまじと見つめる。

 年はまだかなり若い。12、3歳ぐらいといったところだろうか。

 髪を1つくくりにして、メイド服を着ている。


(惜しい……まだあともう少し身長があれば……)


 しかしそれでも中々可愛らしい少女だった。

 

(ん? いや、待て。なんでこの子はメイド服なんか着ているんだ……?)


 宴前に見た、筋骨隆々のメイドを思い出し、思わずげんなりしそうになる。

 

(ま、まあいい)


とりあえず、その件については今はいいだろうと判断したハルトだったが、


「おい……何しているんだ」


 ハルトの体をまさぐり始めた女の子に、彼は訝しげな顔色を浮かべつつ言った。

 女の子はしばらくハルトの体をまさぐり倒したあと、立ち上がって、


「危険物がないかの確認。どうやら、腰に下げている剣以外、特に何も持っているわけではなさそうね」


 と言った。

 

「危険物って……あのな」


「とりあえずもうじき私達の当主、レイナ様が来るわ。その時に貴方の処分が決められるでしょうね」


「しょ、処分……!? おい、待てよ、それはつまり俺死ぬってことか?」


 いきなり物騒なことを言い出した女の子に、ハルトは思わず焦りを隠せない。


「さぁ……それはレイナ様が決められること。だけどどういうわけであれ、レイナ様の領地に関所も通らず侵入したわけだから、相応の覚悟はしておくことね」


 淡々とそう説明する女の子。

 燃えるような赤い髪の毛とは対照的に、その言動はひどく冷めたものだった。

 そして表情は感情の起伏に乏しい。

 さっきハルトと目があったときは心臓が止まっているんじゃないかと思うぐらい驚きの感情を見せたのだが。

  

「冗談じゃない、こんなところで死んでられるかっ!」


 どうしてかはしらないが、ハルトは漂流してきたのだ。

 そしてこの通り、心臓も動いており、生きている。

 それなのにこんなところで殺されるわけには行かない。

 ハルトは身じろぎをして逃げようとするも、まともに動くことができない。

 女の子は嘆息すると、こう言った。


「無駄よ。それに、もうレイナ様が来たわ」


「何……?」


 時すでに遅し。

 遠くから足音が近づいてきて、ハルトの目の前で止まった。


「この人が?」


 そうしてハルトのことをまじまじと見つめるその少女は、本当に当主かと思うぐらいまだ年が若いように見える。

 ハルトと同じか、下手すれば低い。

 銀色の長い髪は太陽の光に照らされてきらきらと輝いているように見えた。

 背筋はまっすぐ伸びており、ワンピースの上に更に服を羽織っているという珍しい服装に身を包んでいる。

 しかしその堂々とした振る舞いは、気品を感じさせるものがあった。

 彼女が貴族であることは一目瞭然である。


「うん、そうだよー! 私が見つけたんだっ」


 と言って今度は別の子がハルトの目の前に現れた。

 先程のメイド服のこと同じように髪を1つくくりにしているが、その服装はまるでこれから戦いにでも行くような渋い服装をしており、腰に剣を下げ、左目には黒い眼帯をつけている。

 しかし、その身長は先程のメイドの子と同様とても小さく、一歩間違えれば幼女と言っても過言ではないあどけない顔立ちをしていた。

 先程のメイドの子と顔があまりにもそっくりなため、ギャップを感じてしまう。


「確かに、全く見たことのない服装ね……。だけど、どうやらこの人が動けない原因はサザン草の毒で間違いないと思うわ」


ハルトを見るなり、なぜか瞬時に状態異常を当てる少女。

 

「とりあえず、私の屋敷に運んで治療しましょう」


「いいんですか? こんな男を屋敷に招いても」


 そう言ってハルトのことを指で指すメイド服の女の子。

 そこには人を指すことにたいする遠慮というものがまるで感じられない。


「今はそういうこと言ってる場合じゃないでしょう。ほら、リエル、シエル。

 彼を私の屋敷にまで連れて行っておいて。その間に私は解毒用の草を探してくるから」


「わかった! じゃあおねえちゃん、足持って。私は腕を持つから。じゃあえっと……、暴れられても困るから――」


 次の瞬間、ハルトの頭の中におよそ3秒後首元に攻撃されるという情報が流れてこんできた。

 しかし、動けないハルトはそれに対応することができない。

 そして首元に思い切り手刀を喰らわせられ、そのまま気絶してしまった―――――。


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