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日本人ならやっぱ米だよな?

今日の仕事は終わったんで、これを更新です。


 なんとも酷い目にあったもんだ。

 あの町もどうなることやら?


 まあ、俺の知ったこっちゃねえんだけどよ。

 あの転がってた死体の中の一つが前の前の町名主だったなんで噂も聞いたが、迷宮から溢れた諸々でそれすら些細な出来事扱いってんだから恐れ入る。

 ただ、あんな災厄の最中にも幸運に恵まれた奴もいて、誰かの隠し財産だったんだろうって金庫を見つけたドブ浚いが居たらしい。


 それもこれも過去の話だ。


 タヌキとエルフと俺は早く立ち去ることを優先してたのが悪かったんだろうな、あの後、ダンジョンにもぐることも無く旅を続けている。

 とは言っても一応の次の目途はあるんだがな?




 ダンジョン……のはずなんだが、こりゃ、どう見ても納屋だろ!

 普通の農家の!


「ここが『納屋のダンジョン』、別名『世界一安全なダンジョン』です」


 どういうこった?


「まあ、ともかく入りましょう」


 中にはなんも置いてないが、どこからどう見ても納屋だろ?


「我も聞いたことが無いダンジョン? だが、いやお主を疑う訳では無いが、これはどう見ても単なる納屋であろう?」

 タヌキの目から見てもそう見えるよな?

 ピックアックスなんか使わんでもゲンコツで壊れそうな壁、床というか地べたそのまんま、上から下まで木の板か土しかねえぞ?


「1階は普通の納屋そのもので、実際に納屋として使われてたという話なんで、いつダンジョン化したのか、正確なところは分かってないんですよね、このダンジョン」

 なんでか知らんが上機嫌だなエルフの奴は?

 こいつが上機嫌だと不安になるのは俺だけじゃないみてえで、タヌキの奴もエルフにだっこ紐で括りつけられつつも不安そうな顔をしている。


 ん? なんてこった、タヌキの表情が分かる様になっちまったぞ!?

 おい、床の扉開けてるが、そこ、どう見ても地下貯蔵庫の入り口だろうよ。

 階段じゃなくて梯子じゃねえかっ!

 穴掘ってる連中はともかく、俺はあんま梯子得意じゃねえぞ。

 

 ……ったく。

 おいおい、なんでまた納屋の中なんだよ?

 もしかして、性質の悪いダンジョンにあるっていうループじゃねえだろうな?

 

「ここからはモンスターが出ますんで、あまりゆっくりと梯子を下りてると危険ですよ」

「いや、ドワーフの手足の短さをなめるなよ?」

「下に行けば行くほど強いモンスターが出てきます」

「いや、下っつってもよ、ここさっきと同じ納屋だよな?」

「納屋ですね」

「下っても上っても同じ納屋なんじゃねえか?」

「いや、別物ですね。試しに床に印付けて下に降りると分かりやすいですよ」

「ふむ、同一物の別位相なのか、はたまた複製なのか、興味をそそられるな」

 タヌキがなんか難しそうなことを言ってるが、要は下り続けりゃコアに着くってこったな?


「とりあえずは2~3階下りてみましょう。ここが『世界一安全なダンジョン』と呼ばれる理由をそこで説明します」

「めんどくせえな、梯子だろ? 飛び降りても平気なんじゃねえか?」

「飛び降りると大ケガしますよ? 何故かはわかりませんが、梯子で下りる高さと飛び降りた時の高さが違うんです。物見櫓のてっぺんから落ちたくらいになるそうです、飛び降りると」

「ふむ、見た目よりかなりしっかりしたダンジョンなのだな」

 めんどくせえだけなのに、なんでタヌキの目が輝いてんだよ。

 これだから学者とか言う訳のわからねえ連中は……。





「さて、運のいい事に全くモンスターに遭遇せずに3階ほど下りて来た訳ですが。ここで問題です。すぐそこのドア。開けるとどこに出るでしょう?」

「スルーし続けてたから、開かないか、開けても無意味なんだとばかり思ってたぜ」

「ふむ、この部屋と同じ納屋が続いているのではないか?」

 どっからどう見ても、最初に俺らが入って来たドアのまんまなんだけどな?


 ……って、どういうこった?

 やっぱ、ループじゃねえのか?

 どう見ても、俺らが入って来た「外」の景色だよな、あれ?


「正解はダンジョンの入り口から出たすぐ外でした。何階下に降りようがドアを開けば外に出られます。これが世界で一番安全なダンジョンと言われる理由ですね。残念ながら一回外に出てしまうと、また1階からやり直しになっちゃいますけど」

 いつもの胡散臭い笑顔のせいで、いまいち信用出来ねえな、やっぱ単に延々ループしてるだけなんじゃねえか?


「いやいや、もう少し信用して下さってもいいでしょう? まあ、タヌキさんが信じてくれてるんで別にいいですけど……」

「出て来るモンスターやトラップの有無次第ではあるが、確かに世界一安全と言えるかもしれんの」



 また梯子を下りると何やら居るな、これは?

「モンスターですね、まだ浅い階ですんで、それほど強いモンスターは出ないはずです」

「ゴーレム? いや植物の気配か?」

 金属や石じゃねえな、土でもねえ……ってバカでかいキュウリじゃねえか!

「矢がもったいないんでお願いします」

 ピックアックスだとかえって面倒だな、見てくれと違って固けりゃ別だが、包丁が一番良さそうなんだが短けえしな、鉈でいっとくか?

 スカスカじゃねえか!

 食っても美味くなさそうだな。

「ドロップはありませんね」

「何を落とすんだ?」

「キュウリですよ、当然でしょう?」





 あの後、ドンドン下に下りてんだが、出て来るモンスター全部農産品じゃねえか!

 肉ねえのか肉!

「これはなかなかいい野菜ですね」とか嬉しそうな顔してんじゃねえよ、このケモナーエルフが!

「いえ、私はケモナーではなくモフラーです。動物は恋愛や性の対象にはなりません!」

 んな、どうでもいいこと力説してんじゃねえよ!

「それはどうでもいいとして、後どのくらい下りればいいのだ? 我としては、そろそろ少し休憩したいのだが?」

「そうですね、以前下りた時は地下80階まで下りましたので、もしそのすぐ下がコアだったとしても後30階ほどはありますね」

 最低で30階、下手すりゃ100階あってもおかしくねえってことか?

 横の広がりが無い分、深さに回ってりゃ、200階や300階あるかもしれねえ……。

『徒労の迷宮』に比べりゃ、本来ならマシなんだろうが、あっちはショートカットしたしな。

『汚濁の迷宮』?

 ありゃ、比較対象にしちゃいけねえもんだろう。

 過去形の存在になって良かったってもんだ。

 思い出させんじゃねえよ!


 

 

 あれから5階下に降りて、モンスター(空飛ぶトマトだった)を倒してタヌキがグロッキーなんで休憩だ。

 エルフが鍋出して、ドロップ品の野菜を煮込んでいる。

 あのモンスター共のドロップ品だと思うと複雑だが、いい臭いだな、クソっ!

 タヌキはだっこ紐から一時解放されて、すげえ明るい顔をしてる。

 頼んだ訳じゃねえが、俺の分もあるみてえだし、酒くらいは出すか?

 途中の村で仕入れた村で飲んでる大麦の酒を分けて貰ったヤツだが、これ樽で何年か寝かせるといい酒になりそうなんだよな。

 今はちょっと尖ってる。

 まあ、酒をじっくりと味わうんじゃなしに、食事のお供で飲むんなら十分なんだがな?




 あれから70階ほど下りて来たが、流石の俺も疲れて来たな。

 同じ深さでも階段なら平気なんだがよ、延々梯子だぜ?

 エルフやサルなら楽勝だろうがよ、ドワーフやタヌキには苦行だぞ?

 タヌキの奴なんか疲労で寝落ちして、いいようにエルフにモフられては魘されてるしな。

 相変わらずモンスターは農産物だが、大地の恵みへの冒涜と言っていい様な、歪んだ姿をした連中で、歯ごたえが多少出て来たな。

 でもって落とすのは相変わらずの野菜だ。


「この辺りからドロップ品の味が良くなるんですよね、生でいただいても十分な美味しさです」

 素材にうるせえエルフと違って、ドワーフにゃ分からねえよ!

 味噌でもありゃもろきゅうで一杯とかいいんだけどよ。

 旅の間にどっかに似たもんねえかと期待してたんだが、今のトコ米も味噌も醤油もモドキすらねえな!

 まあ、ドワーフになっちまったから、おこわとか崎◯軒のシウマイ弁当のご飯くらい固くねえとお米も楽しめねえだろうけどな。麦と混ぜるとか、玄米のままとかでもいいかもしれねえ。

 あー、米食いてえな……。




 おい、このダンジョン潰すの無しだ無し!

 これ、どう見ても米じゃねえか!

「なんです、それ? 麦じゃないですよね?」

「ふむ、中身は綺麗な粒だな。ゲッタはこれが何か知っているのか?」

 う……ここで前世だのなんだのの話になると面倒なことになるな。

 しかも、俺は料理が出来ねえ……。

 在り物煮たり、焼いたり程度は出来るんだが、米の炊き方なんか知らねえ。

 林間学校とか、カレーの具を切る役だったしな。

 出来る奴がいねえならともかく、出来る奴が居るときゃ出来る奴にやってもらった方がいいだろ?

 どうするか……。

 待てよ?

 今の俺はドワーフだ。

 これならいけるか?


「これを蒸したものを発酵させると透明でうめえ酒が出来るらしい」

「ドワーフが目の色変えるお酒ですか? 興味はありますが、いかんせん量が少な過ぎでしょう?」

「うむ、これでは流石に酒を造るのは難しいな」

 く、くそう。

 転生して初めて米を手にしたのに……。

「ともかく、これは俺が貰うぞ?」

「食べ方も育て方も分かりませんから構いませんよ」

「うむ、ダッタが酒以外の何かを欲しがるのは珍しいからな、我もかまわん」

 なんとか確保だけは成功したけど、時間が経つと米の味って落ちるんだよな?

 新米だの古米だの古古米だの。

 鍛冶の道を選んだことにゃ後悔はねえが、おいしいごはんは食いたかった。

 なんとかならねえもんかな?



 


 あの後、2回休憩して、ようやく最下層の様だ。


 出てきたのは巨大な……案山子だな、こりゃ。


「精霊さん……」


 エルフが助力を願った火の精霊の力で、あっさり消し炭となった。


 いや、上の階で出たトウモロコシやらカボチャやら長ネギやらが合わさってドラゴンみたいな姿になったモンスターの方が、よっぽど強かったじゃねえかよ。


「さて、初めて入り口では無いドアが出ましたね、あの奥がコアルームでしょう」

「うむ、我の研究が更に進むな」

 あーあ、ここ残ってりゃ、米がこの先も手に入ったかもしれねえのにな……。

 あの後、小豆とか里芋とかは出て来たけど、米は一回も出てこねえ……。


 まあ、タヌキどもの好きにすりゃいい。

 俺ゃ酒が飲めりゃいいわ……くすん。




日本人の「集団」、あるいは前世が米農家ならなんとかなったでしょうが

料理スキルも酒造スキルも農業スキルも無いドワーフが少量の米を手に入れてもねぇ……

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