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人間、どうやっても慣れねえものはあるわな?

なんでこんなダンジョンにしちゃったんだろう(;^ω^)

 臭えなぁ、臭くてたまらんぞ、おい!

 下水のレベルを通り越して、なんか腐敗の悪魔の迷宮って感じになってやがる。

 迷宮化通り越して異界化してるんじゃねえだろうな?

 地獄とかに繋がっててもおかしくねえぞ?

 

 俺の今の格好はモンスターの内臓を特殊加工して作った全身タイツに、胸まである長靴を履き、フード付のポンチョの様なコートを被った「ドブ浚い」スタイルだ。

 手も手袋で覆われている。

 目もゴーグルで覆ってるし、口元にはマスク、髭もしっかりと隠してる。


 基本的にこのドブ浚いスタイル、一回、もしくは数回の使い捨てだ。

 当然、防御力なんてものは期待出来ねえ。

 このダンジョンも初期には他と同じ様な装備で挑んでた連中も居たようだが、汚れはともかく臭いが取れねえんだよ!

 泣く泣く愛用の鎧を手放した連中が続出して(下取りどころか素材としての買取すら拒否されたって話だ)、以降は徐々に装備が改良されて、現在のドブ浚いスタイルが完成したってわけだ。


 いつもの鎧がねえと、なんか裸でいるみてえで落ち着かねえな。

 こうフル○ンで町を歩かされてるって感じだ!


 武器はどうしようかと思ったんだが、まあフルメンテナンス覚悟でメインウェポンのピックアックスを持ってきている。

 まあ、最悪、潰して作り直しだな……。


 ダンジョンコアまで行くんだろうし、手馴れた獲物の有る無しは特に防具がこれだからな……命に関わる。


 エルフはタヌキがここ用の装備をしてしまうとモフれないため、これまでに見たことも無いほどの真剣さで悩んでたが、自分ごと装備を身につけるという方法でなんとかすることにしたらしい。

 手で撫でられないから頬ずり出来る位置に「設置」したんだと。

 しっかりとガードはされてるみてえだけど、タヌキの奴、ちゃんと呼吸とか出来るんだろうな?

 顔周りは魔法のアイテムで防御するという金+魔力の無駄遣い。


 なんだかなぁ……。

 タヌキもタヌキで意識が外に全く向いていないし、俺は別に積極的にダンジョン攻略とかしたい訳じゃねえんだぞ?

 モンスターぶっ叩くより鉄をぶっ叩いてる方が好きなんだからよ!

 ほんと、オババさまに頼まれたことじゃなきゃ、今すぐ放り出して帰りたいぞ、特に今回のトコみてえなダンジョン入るとよ。


 でもって床や壁がヌルヌルやグチャグチャで覆われてるからよ。

 ぶち壊して時間短縮とか出来ねえんだよなぁ。

 下手にぶっ叩くと汚水溜りに飛び込んだより酷い状態になるからな!

 この短い足でえっちら歩いてくしかねえんだ。


 せめて酒でも飲めりゃ、多少はマシな気分になるんだが、このダンジョンの中じゃ飲み食いは出来ねえわな。

 呼吸だって出来るだけしたくない有様なのによ!


 ランタンじゃなく、松明を持って来た方が良かったか?

 虫がやっぱり多い。

 明かりとしてはランタンの方が圧倒的に優秀なんだけどよ、松明は焼き払ったり武器にしたり出来るだろ?

 炎の付与付けた武器か?

 あれよ、あの付与付けると切れ味落ちたり、耐久度減ったりするんだよ、実は。

 ちゃんとした素材使った武器の場合、魔法的な一時的なエンチャントではそういう不具合は発生しないんだけどよ。付与って形で固定して付けちまうとよ、要は過熱したり、それを冷却したり繰り返すことになるだろ?

 まあ、ちゃんとした素材でちゃんとした鍜治師が打ったものなら、それほど酷いことにならねえけどな?

 元から持ってた数打ちの剣とかに知り合いがエンチャント出来るからとか頼んでエンチャント後付でやったりすると完全にアウトだ。


 まあ、俺個人で言うと一応多少は属性を帯びた武器ってのは作れるんだけどよ、こう槌を叩いてる時の感触がな?

 なにも属性無い鉄を叩いてる時の気持ちいい感じにならねえんだよなぁ。

「好きこそものの上手なれ」じゃねえけどよ、そういう付与が好きな奴がやった物の方が出来もいいしな。


 ったく、スライムが虫と共生してるとか、どうなってやがんだよ、気持ち悪い!

 いたずらオモチャみてえじゃねえか!


 このダンジョン、凶悪な命に関わる様なトラップはねえんだが、致命的なもので無い落とし穴がこのダンジョンの特性と合わさると実に性質の悪いトラップとなる。


 巨漢の戦士とかでも頭まですっかりこの汚いドロドロの物体に浸かっちまうことになるんだよ。


 手だれのスカウトとか居ても機械的な作動とかなら察知出来るかもしれねえが、侵入者に反応して作動するのではなく、ただただ単純に開いてる状態の落とし穴のトラップなんで見つけるのが難しい。

 普通に床があるところと見た目は全く変わらねえんだよな。

 な? 酷えだろ?


 ああ、落ちたよ、俺も!

 ドワーフはただでさえ液体に浮かねえからな。

 すぐにピックアックスを床に突き刺したから顔までは沈まずに澄んだが、じゃなかったら大惨事だぞ?


 ドワーフは罠の仕組みとかは調べることは出来ても事前に察知は出来ねえし、エルフもこんなトコに来たがる物好きな精霊さんはいねえしで察知方法がねえんだよ!


 全く、誰だよ、こんなトコ入ろうなんて言い出したの!

 ……まあ、俺なんだがな?

 結局のトコ、目ぼしいダンジョンはこのタヌキは調査するつもりみてえだしよ、早いか遅いかの違いだけで、位置や時間だけ考えるとちょうどいいかなんて思ってたんだが、このダンジョンのこと甘く見過ぎてたな。


「おわっ、な、なんだ、なんでこんなトコに居るのだ!?」

 ようやくタヌキが現状を把握したか。


「お前さん待望のダンジョンじゃねえか」

「お、汚濁の迷宮はパスしようと思っておったのだ!」

「なら帰るか? 俺たちも好き好んでこんなトコ入ってるわけじゃねえからな?」

「いや、すでに中にはいってしまっているのだ、このまま探索を続けたい」


 まあ、それならそれでいいんだがよ、なら、さっさと進んでさっさと終わらせて帰るか?


「あ、こんなトコに精霊が、闇の精霊ですねぇ、ボッチが好きなんで変なトコで遭遇することが多い精霊なんですが、ここに居るとは思いませんでした」


 ボッチの精霊……いや闇の精霊の力を借りて、モンスターを回避してダンジョンを進む。


 各フロアは広いが、その分深さが無いダンジョンなのは有難い。

 

 でもってボス部屋っぽいところに到着だ。


 うん、嫌な予感はするよな、このダンジョンの主だろ?

 見た目、攻撃の仕方、共に精神力を削ってくるだろうな。


 

 予想通りというか、予想以上というか、汚泥まみれのイソギンチャク+ウジムシ+アオイソメでの外観で、ぶった切るとそこから汚泥まみれのミニサイズの同じ形状のものが出て、それをぶった切ると更に小さいサイズの……といったグロのマトリョーシカ。

 外見細かくなんて描写したくねえわな、こんなの。


 硬さ的にはブヨブヨで手ごたえなんてもんは全く無えんで、ピックアックスは仕舞って鉈とナイフの二刀流だ。


 エルフも弓じゃなく、このダンジョンに入る前に買った槍を使っている(ここまでの道中じゃ10フィート棒の代わりにしかなってなかったんだがな)を使ってる。


 主と言いながらも物理的攻撃力は無いに等しいんだが、その外見と「どうすれば倒したことになるのかが分からない」という点で、本当に嫌気の差す主だ。


 切れば切るほど汚物とミニサイズ。

 これ、小さくなったのを全部殲滅とか、魔法でも無えと無理だろうよ。

 

 普段はモフモフ以外に感情を示さないエルフも不快そうな表情をしてるっぽい(顔もしっかりガードしてるからな、お互い表情は良くわからねえ)。

 

 俺の場合、異世界転生だからいいけどよ、異世界転移とかでしょっぱなこのダンジョンだったりした日にゃ人格崩壊するかもな?


 スルーしてきたけど、ダンジョン内の彼方此方に人の死体っぽいものも転がってたしな。


 入り込んで来て死んだのか、それとも死んでから投げ込まれたものはわからんが、死者の扱いとしては最低級であると言っていいだろう。


 タヌキのお供でこんなことやってるんだから、どっかのダンジョンでくたばる可能性ってのはそれなりに高えけどよ、このダンジョンでだけは死ぬのは嫌だな。


 あ、戦闘状況はってか??

 現実逃避だ現実逃避、関係無えこと考えて作業的に手足を動かしてんだよ!

 セオリー通りに敵を良く見て、相手の行動の先を読んで、なんてやってたら逆に精神的におかしくなっちまぞ、こいつの相手は!


 倒しきるまで出られねえんなら、倒すまで殺し続けるしかねえだろ!



 

 …

 ……

 ………



 あー、なんだ、これって終わったのか、おい?


 ははは、どこの出来の悪い童話だよ、汚物まみれの迷宮のコアルームが綺麗なお花畑とか、逆に幻覚を疑っちまうよな?


 で、ここのコアも持っていくのか??


 まあ、そのために来たんだからな、ただ、後のこととかちゃんと考えてるんだろうな?


 聞いちゃいねえよ、このタヌキ。

 エルフも外に戻ってモフり倒すことしか考えてねえし……。


 

 まあ、前に説明した様な気もするが、ダンジョンコアを破壊したり、コアルームから持ち去ったりするとダンジョンが崩壊し、中のもので吸収されきってねえものが地上に出てくるわけだ。



「ぎゃああああ、ダンジョンが溢れたぞ!」

「いや、ダンジョンが消えて中のものが……お前、こっち来んな、やめろ抱きついてくんな~!」

「くそっ久々の非番で気持ちよく飲んでるところを……エロエロエロエロ、オエッ」

「む、虫が虫が店の中に!」

「せっかく買ったおニューの靴が!」


 まさに地獄絵図だな。

 さっきまでダンジョン内に居た俺らにすりゃ、だいぶマイルドになってる感じだけどな?


「どさくさ紛れに今着てるもん捨てて、荷物持ってトンズラすんぞ!?」

「そ、そうですね、バレたら大変なことに」

「が、学問のための尊い犠牲なのだ……わ、我が悪いのではないぞ!?」


 どうせ、町で収まりきらず、下流の川に流れていくんだ。

 ダンジョンで汚くなったものは、一足お先にそこで捨てて行けばいい。


 あー、ピックアックスはなんとか手入れと木で作った部品の交換で済むが、鉈とナイフは捨てる感じだな。

 まだ5年はもったのになぁ……。

 馴染んで来てかなり使いやすくなってたのによ。


 いったん川の下流でゴミとなってしまった諸々を捨て、それから町を大きく迂回して、今度は上流側で体を洗って、ろくに休憩もしないまま、ダンジョンとか関係無しに早く到達出来る場所といった感じで旅立つ。


「普通に攻略しただけでダンジョンテロになっちまうトコもあるんだなあ……」

「ダンジョンは攻略するためにあるものですからね、仕方ないですよ」

「やはり、ダンジョンの構造や傾向とは関係なく、コアには共通する要素が多いな、となるとダンジョンの形成というものは考えられている以上に周囲の影響が大きいということか?」

 まあ、大して罪悪感持ってない俺が言うのもなんだけどよ、全員罪悪感無しってのも、町に住んでた奴にしてみりゃ酷え話だよな。


 でもよ、ああいう形でダンジョンを利用してた以上、単に先送りにしてただけで、いつかは必ずこうなったってことだ。

 物事から目を逸らして、先送りにするってのはおっかねえな?


 さーて、次はどこに行くか?

 景気良くどかーーんとぶち壊せるトコがいいよな!?




あんまり描写したくないダンジョン&ボスでした

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