夢中になるっつっても限度があるだろ?
某所で久々に二次創作を書いてたせいで間が空きました
申し訳ありません
ダンジョンコアってのはまあ、それなりに綺麗なもんだが、あそこまで夢中になるもんかねぇ?
叩いても割れるだけで加工も出来ねえんだぜ?
まあ、生き物だって話もあるからそれは仕方ねえのかもしれねえけど、モンスター素材だって物によっちゃ素材になるんだぜ?
砕けたコアの欠片とかでもなんか作れてもおかしくはねえだろ?
でも見てる限りじゃ使いようがねえみてえなんだよな……。
つまりは俺にとっちゃあ、鉄鉱石の方がよっぽど魅力的だってこった。
タヌキは宿に戻ってから一心不乱にコアを調べている。
部屋に付いてるテーブルじゃ足りねえってんで、ベッドや椅子やテーブルをどかして、床に色々と広げてやってやがるんだな。
どんだけ集中してるかってえと、エルフが膝の上に抱えてモフり、食事の時も部屋に運んでもらったものをエルフが食わせているって状態なのに全然気にしてねえ。
エルフってのは長寿な分、代謝が低いのかね?
トイレとか、どっちも行ってねえぞ?
俺か?
流石に付き合いきれねえんで、外出て酒を飲んだり飯を食ったり、武器屋を冷やかしたりしてる。
まあ、人間の普通の鍛治師が作ったもんがほとんどだな、並んでるのは。
ドワーフの作ったものは作った先から売れちまうからなぁ。
ただ鋳造の場合は人間が作ったものでもそんなに差が出ねえから、一番安い剣とか槍だとそこそこの物が並んでる。
この町の場合はダンジョンが今は無き「徒労の迷宮」だし、周辺の脅威度が低いからな
安いものが多いし、高いものもステータスシンボルって言うのか?
見てくれを立派にしたもんが多いな。
ドワーフでも凝った細工を武器に付けることもあるが、ありゃ、どっちかって言うと付与や加護なんかのルーンを刻んだのを変に凝り性なヤツが多いから、「ここ、こう飾り付けると良くねえか?」とか「ここをこういじるとこのルーンをこっちの意味にも共有出来て更に良くならねえか?」とかやった結果で、最初から見てくれ考えていじってねえんだよな。
なもんだから「やり過ぎだろ、これ」ってのも結構ある。
その点、人間の見てくれ重視の場合は、完成のビジョンがあって作られることが多いから、人間の買い手にとっては琴線に触れることも多いってこったな。
ドワーフ連中は馬鹿にしてるが、俺は多少は前世の人間の感覚を引きずってるところもあるから、そういう見た目の完成度ってヤツも評価はするぞ?
自分では作らねえけどな!
余所から買ってきた物も多いが、街中で鍛治やってるヤツも居る。
俺の目から見て一番腕がいい鍛治師は剣とかの武器作ってるヤツじゃなくて、包丁を作ってるヤツだったがな。
いやよ、武器とか「大したことねぇなぁ」って見てたらよ、金物屋で売ってる包丁がかなりいい出来でな?
冒険者とかでも武器屋でナイフ買うより、金物屋であの包丁買った方が絶対得だぞ、ありゃ。
思わず買っちまったぞ、ろくに料理もしねえけどな。
なもんで興味引かれて仕事場をちょっと覗かせて貰ったが、俺らドワーフと同じかんじでよ、ぱっと見じゃ分かりづれえけど嬉しそうに鉄を叩いてやがってな、あれ、武器が打てねえとか打たして貰えねえからってんじゃなく「身の回りで使ういい物を!」っていう気持ちで作ってやがんな。
包丁とか、鋏とか、鎌とか、たぶん、使うヤツがよ「ここんとこがこうなってると俺は使い易いんだ」とか言うと、面倒がらずにそれを予想以上に使い易く仕上げて「こりゃいい、思ってた以上だ!」って声を嬉しそうに聞いて満足するタイプだな。
なんか、嬉しくなるよな、ああいうヤツ見ると。
ま、仕事の邪魔すんのも悪ぃんで声もかけなかったがな。
仕事中じゃなきゃ一緒に酒でも飲みてえとこだったな。
俺ぁ、どっちかっていうとゴツいものをガンガン作るのが得意なタイプだからよ、ああいうタイプの鍛治師は羨ましいって言やあ羨ましいわな。
ま、そんな感じで気分良く酒飲んで、飯も食って部屋戻ったら出た時のまんまだ。
仕方ねえんで頭ぶっ叩いて中断させて、トイレの送り出してその間に宿に飯を頼んで、出来た料理を食わせてたら途中で寝やがった。
どうせ、一日、二日でどうこうなるってもんでもねえだろうに……。
まあ、鍛治やってん時の俺を知ってるヤツからすりゃあ「お前が言うな!」ってこったろうけどな?
こうよ、調子乗ってる時は「寝てる暇なんかねえ!」って感じがすんのはわかるよ、でもなぁ、締め切りがあるわけでもねえし、「ここまでやったから終わり」ってのもねえだろ、鍛治と違って?
それによ、別のダンジョンのコアとか見つけたら比較しながらまた調べるだろ?
なら、次のダンジョンへ移動した方がいいんじゃねえかなぁ?
なんてことを翌朝起きたタヌキに言ってはみたものの、ありゃ、ダメだ。
取り敢えず、多少は気が済むか、体の調子崩すトコまでやらさねえと収まらねえな、きっと。
ったく、どっかで鍜治場借りられねえかな?
いい鍛治師や仕事を見ると自分も仕事したくなるのが旅の辛いとこだよな。
その後、五日経過したが一向に改善されなかったんで、荷物をまとめて、荷物をタヌキとエルフごと馬車にぶち込んで、別のダンジョンへ向かうことにした。
「タヌキはともかく、お前は動けんだろうが! 自分の荷物くらい持ちやがれ!」
「いえいえ、それだけ信頼してるってことですよ、知らない人に自分の荷物触られるなんて、エルフなら耐えられませんし」
こいつ、即死攻撃食らったとか、頭吹っ飛ばされたとかでも手はモフるのをやめなさそうだな。
暴走する羊の群れん中叩き込んでも笑顔じゃね?
まあ、実際は羊の毛ってけっこう固いからモフモフ対象としては微妙なんだけどな。
タヌキはコアを触らしときゃ大人しいんだけどよ、一緒の馬車に乗ってる連中がギョッとした顔してんだよな、まあ、変な欲かいてるヤツはいねえからいいんだけどよ、噂にはなるだろ?
この調子でコア集めてんとよ、ゾロゾロと下手すんと国レベルの相手とかも来そうだよな?
「精霊さんにお願いして認識を阻害するとか出来ねえの?」
「場所や人を忘れさせるとかなら木の精霊とかでも出来るんですけどね、見た目とかを誤魔化すのはどっちかというと人間の使う魔法の方が得意な分野ですねぇ…………で、次はどこに向かってるんですか?」
「大きくて、それでいて不人気、『汚濁の迷宮』だ」
「『ドブ浚い』ですか?」
これから向かう町の下水とその下にあった古い洞窟が迷宮化した『汚濁の迷宮』は、その名の通り、汚くて臭え。
それでもそれなりに稼げはするんだが、『汚濁の迷宮』に挑む冒険者は『ドブ浚い』として他のダンジョン攻略者から下に見られ、蔑まれてる。
まあ、稼いでる人間は居るから、ダンジョンが無くなっちまうと困るってヤツも居るんだろうけどよ、この先、どこまでタヌキが調べたがるかわからねえし、下手すんと都市として産業になってるレベルのダンジョンを壊す羽目になる可能性だってある。
気にしてたらやってられんわな。
それに『徒労の迷宮』の場合は元々がドロップもろくに無いダンジョンだったからそういうのも無かったけどよ、ダンジョンがクリアされるとクリアした人間がかなりのアイテムを手に出来るだけじゃなく、その時点でダンジョンに吸収されてなかったものも含めて地上に出てくるからよ、ちょっとしたボーナスステージみてえな感じで、余所に移動する軍資金くらいは稼げるもんらしいぞ?
タヌキの言ってたことだから、何時の時代の話か、一般的な話なのかってのは分からねえけどな?
出るモンスターは虫系、ネズミ系、そしてスライム系。
前二者はいいが、スライムは厄介だな。
鎧は着ねえで全身タイツっていうか、ぴっちりとした物を着て、その上から合羽みてえなのを着るのが良さそうだ。
虫の群体に服の中まで入り込まれるとかあるって話だからな。
パッと見、人型のモンスターで実は虫の群体とか、リビングアーマーのようで実は虫の群体とか、スライムに擬態したり共生したりしているヤツさえいるってんだから虫嫌いの人間にとっちゃ地獄だな。
スタンピードやオーバーフローが起きたら正に地獄絵図だ。
マンホールに殺虫剤より酷いことになるぞ?
あと、モンスターじゃない虫もいるらしい。
ゴキブリとかはダンジョンでもモンスター化しねえんだと。
ゴキブリのモンスターも居るんだが、それはゴキブリがモンスター化したものじゃなく、ゴキブリの姿をしたモンスターで全くの別物らしい。
なんか説明してるだけで気持ち悪くなってくるな……。
ちなみにスタンピードってのは「なんらかの原因でモンスターが集団で暴走すること」、オーバーフローはダンジョン内からモンスターが増えすぎとかで「溢れてくること」だからな?
スタンピードが起きても外までは溢れて来ないこともあるし(これが原因で全滅する冒険者のパーティーはたまに出る)、オーバーフローが起きてもダンジョンに生息するモンスターの傾向によってはスタンピードが起きなかったりすることもある。
ゴーレムとかの徘徊って言うか巡回するタイプのモンスターなんかだと、活動範囲が広がって外に出てくるようになるってだけで、外に押し寄せるって感じじゃねえってこったな
。
この内、オーバーフローを故意に起こすのが「ダンジョン・テロ」な?
昔の戦争でどっかの国がやったって話だけど、要は町レベルの自爆テロだ。
その時は攻め込まれて滅亡寸前の最後のあがきだったらしいが、攻め込む際に使えねえかと考えるヤツも居て、それが盛大に失敗したのが『樹槐の迷宮』ってトコだな。
オーバーフローを起こさせるための魔道具がダンジョンと元々ダンジョンに居た植物型モンスターが変な融合の仕方をして、ダンジョン自体が捕食型超巨大植物モンスターになっちまった。
敵味方、無関係な人間、動物、モンスター、全部食われたらしい。
どこからダンジョンの内側かっていう明確な境界線が見ても分からねえんで(普通の植物への擬態や地下での潜伏で)、今でも時々旅人なんかが食われているらしい。
流石にあそこは調査しねえよな?
自殺行為通り越して、狂人認定しか受けられねえよ?
ま、そんな感じで利用するダンジョンの質とやりようによっては国が結構簡単に滅ぶ。
具体的なやり方はタヌキなら知ってるだろうが、俺は別に知らねえし、知りたいとも思わねえ。
間に三泊して目的地へ到着。
タヌキは荷物だったが、道中俺とエルフは不寝番とかもしたんで駅馬車のオヤジには感謝されたりもした。
ダンジョンのイメージに反して町の方は清潔で綺麗だ。
ありとあらゆるゴミはダンジョンに押し付けられるからな。
町のそこここにはダンジョン直通の廃棄穴がある。
これのせいで、このダンジョンの低層の場合、いきなり頭上からゴミや汚物が降ってくるんだよ。
余計、冒険者からは敬遠されるって訳だ。
なんでも放り込める穴とか言うと星新一のショートショート思い出すけどな、俺なんかは。
「ん? なんで我はこんな所に居るのだ?」
やっと状況認識したのか、タヌキ……。
その内餓死するんじゃねえか?
女神転生のVRMMOものというネタが浮かんでしまって(;^ω^)
完結させるまでまだまだ時間がかかりそうなので、生存報告替りに更新です