表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

風呂は命の洗濯だよな?

ようやくダンジョンです


「やっぱ、ダンジョンってのは辛気臭くてかなわねえな!」

「ここは特にそうでしょうね」

「ここまで規則的に見えて実はいい加減なダンジョンも珍しいのだがな」


 馬車での旅を終え、町に着いた俺たちは、宿を確保すると翌日からダンジョンの調査を始めた。


 不人気ダンジョンコンテストなんてもんを開催したら、上位入賞間違いなしと言われるこの「徒労の迷宮」。

「徒労」って名前が付いてることから分かる様に、少なくとも現在まで、ろくな見返りが無えって話が広まってる。

 ここに潜るくらいなら、その辺の洞窟がダンジョン化してることを期待して中に入ってみた方がまだマシだと言うくらいなんだから、ショボさが分かるだろ?


 出てくるモンスターはゴーレムオンリー。

 それも劣化アイアンゴーレムというか、鉄鉱石のゴーレムなんだとよ。


 それならそれなりに稼ぎになるんじゃ、と思うだろ?

 鉄の含まれてる量が少ない癖に砕けた石が重い。

 動けなくなるギリギリまで担いで持って帰っても、含まれてる鉄がナイフ一本分にもならねえってんだから話にならねえだろ?


 まあ、単なる石像でそれを砕けばいいのならば力だけは自慢の駆け出し冒険者にはそれなりの稼ぎ所になるかもしれねえが、トロいとは言え動くんだぜ?

 俺らドワーフからすりゃカモだが、剣や槍を使う奴の多い冒険者の場合、自分の武器が潰れてもろくにダメージを与えられなかったなんてこともある相手だ。


 でもってダンジョンの構造が一見、各階同じ作りに見えて微妙に異なってる上に、同じサイズに見えてこれまたちょっとずつ違ってる。

 手本を渡して技能の無い、しかも賢くない奴に複製させたみたいな作りなんだとよ。


 浅い階をうろちょろしてる内はいいんだが、深い階になると「あれ、ここはこっちじゃ無かったっけ?」「あれ? この階じゃなくてあれって上の階だっけ?」と記憶が混乱する。

 几帳面なパーティーは混乱し、勢い優先のパーティーは帰り道が分からなくなる。


 ダンジョンでのボーナス、宝箱も出ない。


 発見当初は「それでも先に進めば!」と期待も込めて攻略されていたが、どれだけ進んでも同じ調子。

 欲にかられた連中ですら心を折られて、ついた名前が「徒労の迷宮」ときたもんだ。

 俺らが中に入ろうとした時、おそらくは半分休暇みたいな扱いで門の側に立っていた兵士が「物好きな」と呆れた目をしてやがったな。

 

 兵士は町から派遣されて、勝手に中に入らない様にしてるんだが、不真面目なヤツだと行くフリして寝てるんじゃねえのか?

 ここの町はダンジョンを利用するために出来た町じゃねえ。

 滾々と水が湧き出る泉を、ちょうど旅の途中にいい位置にあるからと利用出来るように周囲を整備し、そこに人が集まって村となり、さらに町になったという話だな。


 でもって人が増えたんで周囲を更に開発して、ってやってたらダンジョンを掘り当てちまったってわけだ。


 だから、ダンジョンの扱いは非常に軽いんだな。

 無くて構わない、特に害は無いからそれほど気にしない。

「徒労の迷宮」の名が知られ過ぎて、冒険に憧れる年頃の町の子供ですら入ろうとは思わねんだとよ。

 どんだけショボいんだって話だよな。


 まあ、タヌキのお守りだから仕方ねえんだけどよ、いい加減嫌気はさすわな?


 罠すらねえから緊張感もねえし、ゴーレムはタヌキのトコに居たの以下だしなぁ。


「なあ、結局、一番奥まで行くんだろ? このまま歩いてなんてどんだけかかるか分からんだろ?」

「とは言っても他に道は無いではないか!?」

「いやよ、無けりゃ作りゃあいいだけじゃね?」

「作るって……まさか?」

「この辺行けそうだな……どっせぇ!! ありゃ、意外と脆いな、この床」

「見事に開いてますねぇ、下の階までそれほど高さもありませんね」

「な、な、なにをしてる! ダンジョンの床や壁は壊せないハズなんだぞ!?」

「いや、壊れてんだろ!?」

「ここからどんどん真下に行けば早く済みそうですね」

 フルエも同意してんだろ?

 もう少し広げた方が荷物とか引っ掛からなくていいよな?

 そのまま飛び降りようとしたら、フルエが止めてなんかブツブツ言いだした。


「精霊さんにお願いしました。しばらくは降りても階段一段抜かした程度で済むはずですよ」

「おう、なんか知らんが助かった!」

 飛び降りたが、なんか落ちるまでゆっくりだったな。

 確かに衝撃とかねえわ。

 これが精霊魔法ってやつか?

 エルフが使うっていう。

 無くてもなんとかなるっていや、なるが、便利なもんだな、おい。


 まあ、いいや、次も掘っとくか。

 時間で効果が無くなるなら、効果が残ってる内にガンガン行くべきだろ?


 


 普通に降りたのが五階分で、ショートカットしたのが16階分だから、ここが地下21階ってことになるな。

 タヌキがすっかり大人しくなっちまったんで、残念エルフがモフり倒してやがる。


 取り敢えず一番下まで行けばいいんだから、途中の階はなんも見てねえ。

 どうせ、どの階も間違い探しみてえな似通い具合なんだろうしな、見ても意味ねえだろ?


 魔法が切れる前にってんでムキになって掘ってたから、キレたトコで一休みってこったな。

 律儀に進んでたら、今頃まだまだ上の方だったろうし、まだ一個目のダンジョンに何か月もかけてらんねえだろ?

 どうせ、ここが終わればまた別のところって言い出すんだろうしよ!

 いやよ、俺も鍛冶屋だからな、必要な手間ってもんがあるのは分かってんだよ?

 でもよ、無意味にだらだら歩くのが必要な手間とは思えねえよな?


 じゃ、喉湿しの一杯ひっかけて再開といくかね?


「ええい、それを寄越せ! 素面ではやっておれんわ!」

「何しやがる! このタヌキ! 人の酒を取るんじゃねえ!」

「五月蠅い! 我にだって飲みたい時はあるんだ!」

「でしたら、タヌキさん、こちらの果実酒はどうです? なかなかエルフにも人気の高いお酒ですよ?」

「ええい、なんでもいいわ! 寄越せ!」


 う~ん、なんでこんなダンジョンの通路で酒盛りになっちまったんだろうな?

 たまにだけど、ゴーレムだって来るんだぜ?


「よいか、ゲッタ、我は賢者として名高いムジーナなんだぞ? ダンジョンのことなら誰よりも知り尽くしてるんだ! 我の言うことにもっときちんと耳を傾けるべきなのだ、お前は!」

 あーあ、酔っぱらいは面倒だな、おい。

 タヌキの酒は絡み酒かよ!

 フルエはなんか嬉しそうだし……こいつ、タヌキが酔い潰れる時間を計算してやがるな?

 あんだけモフってまだモフり足りないのかよ!?

「わ、我はな、我は……ぐぅ」

 ニコニコしてんだが、フルエの表情の裏に「計算通り!」ってえらく歪んだ笑顔が見えた気がしたぞ?


 ……ま、まあいいか、俺には影響はねえしな!

「おう、じゃあ、再開といくか! 穴が開いたら『精霊さん』ってヤツを頼むわ!」

「分かりました、早く終わらせて町でひとっ風呂でも浴びたいですしね」

「お、あの町風呂あんのかよっ! 昨日の夜入りゃあ良かったな!」

「風呂好きのドワーフと言うのもなかなか珍しいですね」

「いやよ、風呂入ってさっぱりした後、冷てぇ酒を、こうキュ~っとな、やるとな、極楽なんだよ、これが!」

「ほう、それは良さそうですね!」


 そっか、風呂があるのか!

 やる気が出て来たな、おい!

 あの鉱山じゃ夢の夢過ぎて、存在忘れかけてたわ!

 なら、さっさと終わらせるに限るよな?

「どっせぇ!!」





「あー、まあ、曲がりなりにもダンジョンなんだから、こういうのも居るわな……」

「ちょっと大きいですねぇ」

「な、な、な、なんで我はこんなトコに居るのだ!? あ、あれは迷宮の主ではないかっ!?」


 酔い潰れたタヌキはそのままに俺とフルエは垂直にダンジョンの攻略を進めた。

 まあ、穴掘って落ちてったとも言う。

 あー、帰りとか面倒くせえな。

 タヌキも賢者とか言うなら出口まで一発で戻れる魔法とか使えねえかな?

 ド○クエなら賢者じゃなくても使えるぞ?


「なぜ、お前らはそんなに落ち着いているのだ! いいか、あれはダンジョンの主、そのダンジョンのモンスターすべてを合わせたより強いモンスターなのだぞ!?」

「いや、ゴーレムだろ?」

「大きいだけで属性は土だけ、炎とか他の属性を持ってると苦労するかもしれませんが、工夫が足りませんよね」


 まあ、フルエの言う通り、あのサイズで燃え盛ってでもいたら厄介だったわな。

 鍛冶屋がいくら熱には強えって言っても火の塊でぶん殴られたら痛えだろ?

 

「とどめはお願いしますね、精霊さん、お願いします」

 足を凍らせた訳か、やるな、精霊さん!

「ま、必然的に体が転がるわな……でもって、コアはココか、頭とかありきたり過ぎんだろ……どっせぇい!!!」

「い、一撃だと? ……ってなんで我がヤラレ悪役みたいなセリフを言わなくてはならないのだ!」


 ダンジョンの主より前世の釣りゲームでやった川の主の方が手強いな!

 しかも徒労の迷宮の主に相応しく、倒しても何も出しやしねえ!


「ま、まあ、いい。目的はダンジョンコアだ。我が調べる間、平気だとは思うが周囲を頼むぞ!?」

「これで終わりでいいんだよな? 早く帰って風呂入って酒飲もうぜ!」

「まあまあ、最後はダンジョンコアを持ち去るか壊すかすれば、外に出られますから」

「な、何故、それを知っているのだ、我くらいしか知らないハズだぞ?」

「故郷の森の近くにダンジョン出来て、邪魔なんでコア壊しました。持ち出してもってのは旅で知り合ったグラスランナーに聞きました。なんか綺麗なんで欲しくなったらしいですよ? その時、コアも見せてもらいましたけど、私が壊したのよりは小さかったですね」

「非常識はゲッタだけでは無かったのか……」

「なあ、ならよ、コア持って帰って調べてもいいんじゃねえか!?」

「ふむ、ゲッタにしては一理ある……」

「ドワーフの意見にしては冴えてますね」

 あんま、変なこと言うとぶっ壊しちまうぞ、そのコア?


「うむ、予定より早いが町に戻るとするか!」

 そうしよう、風呂が待ってるからな!




 日本人の感覚からするとぬるめのお湯だが、もしかするとドワーフの体になった影響かもしれねえんで、その辺ははっきりとは言えねえな。

 俺とタヌキとエルフは貸し切り状態で広い浴場を独占している。

 水が豊富な町とはいえ、浴場は更に火も使うんで結構な値段がする。

 普通の旅人や町の住人はあんまり入らねえみてえだな。


「あー、溶けるなぁ……」

「川や湖での水浴びもいいものですが、お風呂もやっぱりいいですね」

「我は魔法で清潔でフワフワな毛を保っておるのだがな、まあ、これはこれでいいものだな」

「そ、その魔法はぜひ、広く広めるべきですよ! 道理で手触りがいいと思いました!」


 横でモフラーが至高のモフモフの為の魔法の普及を叫んでいるが、気にならないくらい風呂はいいなぁ……。


 こうして裸の付き合いってのは、前世では経験があるが、転生してからは初めてだな。

 ドワーフは風呂に入るって概念がねえからなぁ……。

 神話だと神が土と岩を捏ねて命を吹き込んだのがドワーフと言われてるから、「水とは相性が悪いんだ!」って自己正当化してやがるしな。

 ま、確かにドワーフで泳げるヤツはいねえから、水と相性は悪いんだろうが、風呂はまた別だろうよ。


 タヌキは水をはじいてるんだかなんだか、普段と変わらねえな。

 濡れて貧相になったら笑ってやろうと思ってたのによ。

 エルフは顔以外けっこう傷があるな。

 やっぱ、旅を一人でだと、それなりに怪我もするってことか?

 

 風呂を堪能した後は酒と食事。

 精霊さんが凄えってのは理解したんで、フルエに頼んで酒を冷やしてもらう。


「くはぁ~! この一杯の為に生きてるって気がするよな!」

「ほほお、こうして冷たくして飲むのもいいものだな」

「あー、染み渡りますね、これは!」


 やっぱ、風呂と酒のセットは最高だよな!



サービス( ̄- ̄) シーン…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ