何が似合う?
コーヒーカップにいっぱいに入っているコーヒー。
苦い匂いが鼻腔をくすぐる。
その匂いがなんだか、面白くて、気持ち良くて、懐かしくてずっとかいでいた。
コーヒーは、まだ熱かった。
スプーンでグルグルとコーヒーを回す。
意味のない行為だけれど
それがまた、幸せ。
私は角砂糖を取り出す。
ハートの形をした、
真っ白で、綺麗な角砂糖。
それをトプンと、コーヒーに沈める。
角砂糖は、まだ溶けない。
コーヒーは、湯気を出した。
スプーンでコーヒーをかき混ぜる。
グルグル
グルグル
角砂糖は溶けて、コーヒーに吸い込まれて行った。
もう見えない。
用済みになったスプーンを
お皿の上に乗せてコーヒーカップに口を添える。
コーヒーは、愛想をつかしたように
冷め切っていた。
ゴクゴクと、一気にコーヒーを飲み干す。
甘ったるい味が、口の中に広がり
嫌な気持ちになった。
コーヒーも
角砂糖も
無くなった。
ここにあるのはスプーンだけ。
スプーンは、悲しむように
コロリとお皿の上で横になっている。
「スプーンとコーヒー。
コーヒーと角砂糖。
どちらがコーヒーに似合う?」
ハートの形の角砂糖を取り出しテーブルに置いた。
砂糖もミルクも入っていない
コーヒーもテーブルに零した。
角砂糖は、コーヒーに埋れて行き
やがて、
テーブルの端から床に零れた。
スプーンは、コーヒーに混じることなく
遠く離れたお皿の上で
輝きを増した。
「正解は
コーヒーと角砂糖でした」
床に溜まったコーヒーと
床に溜まった赤いものが混じった。




