少年とアルバム
スカイブルーの車体が風景を切り裂き、タイヤが悲鳴を上げる。
時速は二百キロ超え。
損じれば死神と踊ることになる。
――そんな世界の中である。
「ここで急ブレーキ! 変形! 後フルスロットル! これでこのカーブでのタイムロスを防ぐ! こういったわけです!」
握ったコントローラーに割れよとばかりに力を込めながら、俺は自らの言葉を実践してみせた。
画面の中では今時珍しい荒いポリゴンの車体が、がくがくっと揺れながら華麗なドリフトを決めている。
「……そう」
背後にいる先輩が、低い声で俺に応じた。
彼女は自分の家なのに律儀に正座をし、俺では太刀打ち出来ないような強度を持つ煎餅をガキゴキと音を立てつつ食べている。
先輩の歯並びの良さは、あぁして培われてきたのだなぁ。
そんな感慨に耽りながら、俺は彼女に尋ねた。
「えぇと。……俺無しじゃ生きていけなくなりました?」
「いいえ」
「ですよねぇ」
目を離した隙に、俺の操っていた車体がクラッシュする。
でも良いのだ。先輩の興味が引けない以上、この西暮弟が今更ハマっているレースゲームのランキングを俺一色で染めてやる遊びを続けてもしょうがない。
俺は電源を切ると、いそいそとゲーム機の片づけを始めた。
時は死神メメントさんとの邂逅から二日後。
場所は先輩の家の居間である。
「おい、話が違うではないか」
畳の上に直置きにされたテレビゲームというノスタルジックな光景を前に、俺は独り言を呟くようなトーンで奴に話しかけた。
「レースゲームの魂も外れ……と」
答えるのはもちろん俺の背後に控える悪魔である。
名前はあったはずだがもう忘れた。
俺の背後にいる奴は電子えんま帳にバッテンを描きながら、次なる魂を探している。
つまりは、先輩を恋の虜とし、彼女に生きる気力を取り戻させるような魂をだ。
「次はRPG達人の魂にしましょうか?」
「より地味な方へ進んでどうする。というかゲームはもう良い」
とはいえ捜索は難航。
既に幾つかの魂を試していたが、結果はいずれも芳しくなかった。
「しからば次はこのカタン一級の魂を」
「ボードゲームも一緒……うっ!」
人の言うことを聞かず、次は非電源の魂を渡そうとしてくる悪魔。
奴に叫ぼうとしたところで、例の何者かがのど奥からせり上がってくる感触に俺はえづいた。
「せ、先輩。トイレを貸していただいてよろしいでしょうか?」
何とか第一波を押し戻した俺は、先輩に恐る恐る尋ねた。
「また?」
小首を傾げるあざといポーズをしながら、先輩が問い返してくる。
「また、です。申し訳ない」
既に幾つかの魂を試したということは、このやり取りも繰り返しているわけで。
先輩が不審に思うのも当然である。
俺としては彼女に平伏するしかない。
本当は、役に立たない魂ばかり渡してくるあの悪魔も謝るべきなのだが、先輩には見えないので俺が代わりに謝るしかない。
「……体調が悪いなら帰った方が」
そんな俺を優しい……そう、優しい先輩が気遣ってそう心配してくれる。
「い、いえ! 次こそ先輩を驚かせますから!」
俺が気合いを入れ直してそう答えると、彼女の頬がぴくっとひきつった。
いい加減付き合うのも疲れたので、とっとと帰れと思っているわけではないだろう。
優しさを嫌う彼女が、そんな気遣いを発揮するはずがない。
多分。おそらく。
「そ、それでは失礼!」
自分に言い聞かせながら、俺は居間からトイレへと駆けだしたのであった。
◇◆◇◆◇
「前から、分かっていたが、お前はやっぱりさっぱりはっきり役に立たん、な」
先輩の家に設置されたトイレ。
悪魔は吐き出された魂をゴム手袋をハメた手でつまみ上げると、それを電子えんま帳の中に落とした。
えんま帳の中ではトイレに産み落とされし汚れた魂たちが、まだ清廉な魂達にえんがちょされている。
「いえいえこれらの魂は、使い方さえ間違えなければどれもハーレム間違い無しの一級品の魂たちですよ」
その惨状をおやおやと眺めてから、悪魔はまたしても寝ぼけた事を言った。
「ゲームの魂はまぁ良い。あやとりや昼寝の才能で築けるハーレムとはどんな代物だ」
それに対して、俺は先ほど試した現在胃液だらけの魂を指さしつつも奴に言い返す。
せめて射撃の才能でもあれば先輩の興味を引けたかもしれないが、残念かつ案の定、そういう武闘派な魂は品切れということらしい。
「で、その役に立たない一級品の魂も、もう品切れか?」
よくこんなんで交換業なんぞ務まっているとも思うが、役立たずな物をそれらしく売りつけて儲けるのが、こいつら悪魔のやり口なのだろう。
俺は騙されんぞと内心で決意を新たにして、俺は悪魔に尋ねた。
「いえいえ、とっておきの物があります。手品の魂です」
「それで先輩の気を引けるとは思えんなぁ。まぁいいや」
すると悪魔が相変わらず微妙な魂を差し出してくる。
が、俺はさして躊躇無くそれを飲み込んだ。
どちらにしろ、試せるだけの事は試さねばならないのだ。
◇◆◇◆◇
厠から居間までの渡り廊下には、お池のある立派な庭園がある。
トイレで何か落ち込むことがあった時、この風景を見て心を和ませて欲しいという家主のニクい心遣いだろう。
中に先人がいたときにも、この整った松を見れば十秒分ぐらいは心が落ち着くはずだ。
などと考えながら、俺は愛しき先輩のいる居間の扉を開けた。
――するとそこには、悪魔がいた。
ばさばさばさばさ。
俺の背後から、平和の象徴である鳩が一斉に飛び去っていく。
「おぅわ!」
悪魔がビビって叫び声を上げる。
いや、悪魔は俺の後ろにいる奴だ。
俺の後ろにいる奴は、体を鳩が通り抜けても微動だにすらしなかった。
「何故お前が居る」
改めて前を向き、問いかける俺。
そこには目つきが悪いくせにピンクのエプロンをつけているという、悪夢のような存在。西暮弟が座っていた。
先輩は隣でボキボキと煎餅を食っている。
「な、何故ってそりゃ、ここが俺の家だからだよ」
西暮弟は、心臓に負荷でもかかったらしく胸を押さえながら当たり前のようにそう答えた。
「ということはお前は先輩と同じ屋根の下! 寝起きしたり同じ料理を食べたりしているというわけか!?」
「今更何に驚いてんだよアンタは!?」
「いや、改めて意識すると実にけしからんことだと思ってな」
それは先輩の弟なのだから、一緒に住んでいてもおかしくはあるまい。
しかし実際に並んでいるところを見ると、どこかしらに犯罪的な要素が含まれている気がしてならない。六法全書の隅っこに何かしらこいつの罪状が書いてないとおかしい。
「……はぁそうかい。んで、今の鳩は?」
「先輩に手品を見せようとして庭から集めた鳩だ。お前が不吉な面を見せるからパァではないか」
「そりゃ……すまなかったな」
俺の答えに、西暮弟は疲れたようなため息を吐いた。
先輩に対する礼儀がなっていないとは思うが、俺は寛大なので一度だけ許してやろうと思う。
「姉ちゃんも笑ってないで。何とかしてくれよこの人」
そんな俺の心も知らず、西暮は視線を横に滑らせるとそんな唐変木な事を言い出した。
「へ?」
俺が慌てて先輩の顔を見るも、彼女はいつもの無表情。むしろ口を堅く結んでいる状態であり、一片も笑顔を感じさせる要素はなかった。
お前は見たか? という意味で悪魔に視線を送るも、奴は無言で首を横に振る。
「別に笑ってない」
先輩もこう言っているし、西暮弟の勘違いであることは明らかだ。
俺が抗議の意味で奴を睨むと、西暮は俺の百倍はあろうかという眼力でこちらを睨み返してきた。
「姉ちゃんは昔から笑い上戸なんだよ」
あまりの迫力に、首にあると言われる反射神経が勝手に伸び縮みして首を縦に振ってしまう。
だが、あんな短いやり取りで本当に先輩が笑ったというのだろうか。
いやあり得ない。だったら今日俺が先輩を楽しませようと散々行ってきたことは何だったのだ。
「アルバム見るか? ちょうど引っ張り出してきたところだから」
もう一度疑りモードに入った俺を見、むっとしたという可愛い表現でお茶を濁した方が読者の心臓に良さげな顔の西暮弟が、手元にあった四角い本を引き寄せた。
「な、何故そんな物を」
先輩が狼狽したような声を上げる。
口もあわあわとなっておりやはり狼狽顔だ。
短いつきあいではあるが、先輩が鉄面皮と言うわけではないことは、俺にも分かる。
というか可愛らしい。
「倉庫の整理するって言ったろ。あそこ大分埃っぽいから」
だがそんな可愛らしい姉の様子にも、この弟は贅沢にも何の感慨も無いようだ。
奴は呆れたような表情を彼女に向けたまま、俺にアルバムを手渡してきた。
「大丈夫か? こんな物見たらお前の小さい頃の写真が無いことに鋭い俺は気づいてしまうぞ」
「俺は橋の下から拾われて来たわけじゃねぇよ! 見ろ!」
それを受け取った俺が心配して言ってやると、西暮は顔を真っ赤にして抗議してくる。
軽いジョークではないかと笑って見せてから、俺はアルバムを開いた。
「ほうほう」
後ろからのぞき込んできた悪魔が、興味深げな声を上げる。
俺が適当に開いたページ。そこはちょうど家族の集合写真であった。
すらっとした和服の美人。そして組頭と呼ぶに相応しい、凶悪犯めいた顔の紋きり袴の男。
更にその腕には、彼をミニサイズに落とし込んだような、赤子の防衛機能であると言われる可愛さとは無縁の赤ん坊が抱かれている。
「なんというか……遺伝子というのは残酷だな」
「うるさいほっとけ」
かーちゃんの遺伝子がまるで入らなかったらしい西暮に同情の目を向けると、奴はふてくされた表情でそっぽを向く。
その仕草はまるで可愛くないので再びアルバムに目を落とすと、美人の母親にすがりつくように、小さなお子様がもう一人写っていた。
目元は若干父親に似ているが、そのふくふくとしたほっぺは幼児に興味のない俺でもお菓子の一つぐらいは買い与えたくなる愛らしさだ。
「あぁぅアルバムはちょっと」
「これが先輩ですか?」
「あ、うぅ、うん」
先輩がうねうねとしながら何やら俺に請うてくる。それに被せるようにアルバムを向け尋ねると、先輩は唸りはとも返事ともつかないような声を上げた。
弟と違ってまるで恥じるところのない立派な幼児っぷりだと思うのだが、まぁ幼少期の写真というのは誰でも恥ずかしい物だからな。
「ほほう。これは七五三ですかな?」
などと納得しながらも、先ほどから先輩の冷めた表情ばかり見てきた身としてはもっと色々な彼女の表情が見たい。
俺は先輩の対面に座ると、分かり切ったことを彼女に問いかけていく。
「うん、多分……」
それに対し、先輩は居心地が悪そうに答えた。
ふふふ、もっとよく見てご覧なさい。
とまるで変質者のようなことを考えながらページをめくっていく俺だが、写真の中の先輩は確かによく笑っている。
時より前歯が抜けたり口の中に物を詰め込んだりしているが、大抵はお子様らしい、何の不安もなさそうな笑顔だ。
小学校入学、遠足、旅行。この家は格式ある風貌をしているくせに、父親と息子の顔は恐ろしいくせに、やたらとアットホームなようで、写真も節目ごとによく撮ってあった。
「そこは俺が卒園の時の写真で……」
「そかそか」
「……露骨に飛ばすなよ」
そして写真の中の時も進んでいき、そこに写る先輩の姿は徐々に凛々しさを増していく。
俺は彼女が十歳ぐらいに差し掛かった辺りから、この娘との結婚を真剣に考え始めていた。
いやでも俺には先輩がいるし。いやいやこの先輩も捨てがたい。
そして、アルバムも終盤に差し掛かった頃……。
「あ」
俺は思わず声を上げてしまった。
それは、先輩が中学生の頃の写真だった。
先輩はいかにも剣道少女という体の、ポニーテールに切れ長の目。
しかし口元には、今の俺よりも年下だというのに無条件で甘えたくなるような、聖母の笑みが浮かんでいる。
そしてその視線の先には、彼女の腕にすがりつく子犬のような少女が写っていた。
数ヶ月前まで小学生だったのだなと納得させる小さな体に、まるっきり小学生のようなまんまるとした笑顔を浮かべている。
屈託のないその笑顔は、俺に憧れの二次元人について語るときともまた違う微笑ましさだ。
――それは間違いなく、中学時代の中見沢あげはだった。
ふっと、俺まで笑みがこぼれる。
「……」
ふと気がつくと、先輩がそんな俺を見つめていた。
「いや、あのですね先輩……」
別に中見沢に見とれていた訳じゃないのよ?
今でもギリギリなのに、こんなのに欲情したらロリコンのステータスが3ぐらい上がっちゃうからね?
などと弁明しようとした俺だが、その前に。
ばたん。と、先輩がいきなりアルバムを閉じた。
「ぎゃー!」
その間に置いてあった指を挟まれた俺は、ぎゃぁと悲鳴を上げた。
「な、何をなさるんです!?」
俺が見つめると、先輩はふぃと目を逸らした。
そして、口の中で「ごめん」と謝る。
その反応からすると、別に俺が中見沢のほうばかり見ていて嫉妬したわけではないようだ。
彼女はただ、中学生時代の自分と中見沢を見たくないのだ。
あいつを、無かったことにしたがっているのだ。
それに気づいたとき、なんだか俺の心からピンピンと棘が生えた。
「先輩……!」
その衝動のまま、俺は今度こそ先輩に一言言おうとした。
少々語気が荒くなってしまった俺の声に、先輩の肩がびくりと震える。
その1cmにも満たない振動で、自分が言いたかったセリフは脳から転げ落ちた。
「この指をアルバムから引き抜くと……ほら、花が咲きます」
そこで俺は、即興の手品で場を和ますことにした。
指の先に咲かした人工の花を、先輩の前に差し出す。
だが、先輩はそれを受け取らない。
何とも言えない。自分へのダメージを省みないのなら白けたと言っても良い空気が流れた。
「すまない。その、ちょっと失礼する」
俺が二の句も第二の手品も出せないでいると、先輩はそう言って立ち上がった。
そして、形の良い尻を見せながら、居間から出て行ってしまう。
一人取り残された俺は、花を胸ポケットに差すとため息を吐いた。
そもそも俺は、先輩になんと言おうとしたのだろう。
先輩は中学時代の出来事に傷ついているわけで、あの反応だって当たり前ではないか。
そう自分に言い聞かせるのだが、胸ポケットに咲いたもやもやは晴れない。
「アンタ、隣にいた女の事知ってるのか?」
俺がセンチな気分に浸っていると、いつの間にか横にいた西暮がそう問いかけてくる。
「一応な」
返事をするのも億劫で、俺ははぐらかすように西暮へそう答えた。
お前とも同じ学校に所属していて、しかも俺が脅迫している相手だ。と言っても良いのだが、今の俺にその辺りの面倒な経緯を説明する気力はなかった。
「あの、その人ってまた姉ちゃんと会ったりできないのかな?」
そんなことを考える俺に対し、西暮はこちらを窺うように、恐ろしいことに上目遣いでそう尋ねてきた。
「会ってどうする?」
それに対する俺の声は、我知らず堅くなる。
別にこいつが中見沢を拐かしてどこぞへ売ってしまうのではないかと警戒したわけではない。
「ただその、姉ちゃんと話して……その、誤解を解いてやれないかなって」
西暮は、俺が危惧したとおりのことをこちらに提案してきた。
「やめてやれ。今の先輩と話しても、お互い傷つくだけだ」
そっぽを向いて俺が吐き出すと、そのそっぽにいた悪魔がわざとらしく目を丸くする。
それを睨んでから、俺は考えた。
今の先輩は中学時代の自分を――つまりは中見沢との青春の日々をもまるまる間違った物として扱っている。
そんな状態の先輩と中見沢を話させても、良い結果にはならないように俺には思えた。
俺の思い込みだろうか。この前つけた空気読みの魂を未だに引っ付けたつもりになっているだけだろうか。
俺が普段はまるで悩まない、自らの正しさなどという題目に反問していると、西暮は怖い――もとい真剣な顔になってこちらに尋ねてくる。
「あんた、姉ちゃんが剣道を辞めた理由も聞いたのか?」
「……この前本人に聞いた」
お前が聞くのなら本人からにしろと言ったのだろうが。何か文句があるのか?
という意味で俺が横目で睨むと、西暮はそんな物はどこ吹く風といった様子「ふぅん」と呟く。
そして、俺が睨み疲れたタイミングで不意に問いかけてきた。
「で、その後輩とうちの姉ちゃん。どっちが好きなんだよ」
その不意打ちは、戦争であれば三日で片がつけられるほど見事な本土強襲であった。
「阿呆か! あんな薄い奴お前の姉様に比べたらボリュームが3倍ぐらい違うわ!」
気づけば俺は、自分でも過剰だと思うほど声を荒げ、西暮に抗議していた。
最新のテレビ事情とは違い、女性はある程度厚みがあった方が俺は好みだ。という意味なのだが伝わったかどうか激しく不安である。
「「ふ~ん」」
それに対し、西暮、そして悪魔までがあからさまに信じていないような声を出した。
ダメだ。やはり伝わっていない。
「お前は、この!」
西暮……のほうは怖いので、悪魔の首をぎゅうぎゅうと絞める俺。
「おい、空中に向かって何やってんだアンタ」
そんな俺に西暮は奇妙な――しかし見慣れた生物を見るような視線を向ける。
「ていうかお前、そんなのほほんとした話をしている場合か」
それにムカッときて、俺はつい西暮にそうこぼしてしまった。
「え、何が?」
もちろん奴は、きょとんとした顔である。
「何がって……その……」
悪魔の首から手を離すと、俺は自らの発言の落としどころに困って耳たぶをいじった。
ついでに耳を突然大きくしてみるも、西暮は無反応である。
まさか死神(しかも美少女)がお前の姉ちゃんの魂を狙っているとは言えまい。
言うなと言われたわけではないが、俺を見るこいつの目からすると信じてもらえるとは思えない。
「俺がお前の義兄になれるかどうかの瀬戸際だろう」
代わりに俺は、西暮の心を動かせるような一言を考え、先ほど言い掛けた言葉と差し替えた。
「心情的にはなれないのほうに一票投じたいんだけど」
義兄と聞くと西暮は反射的に頬がひきつってしまうようでピクピクとやりながら、そんな風に渋る。
「とにかく、なんかお前の姉ちゃんが喜ぶこととか思いつかんのか!?」
「えーと、やっぱりライバルが出来ることじゃないかな?」
焦れったく思いながら生産的なアイディアの提案を促すと、奴はひきつった頬をならすように掻きながら、そんなことを言った。
「ライバル?」
「自分が本気で戦えるような……」
女子の欲しがるものとしてはあまりに不適切な品物に思わず聞き返す俺。
それに対して西暮は何やら恥ずかしそうな態度でそう答えた。
「少年漫画かお前の姉ちゃんは」
「そういう部分は多分にあります」
どうやら本気で言っていやがるようだ。呆れた俺のつっこみに対し、奴はため息を吐いてそう返す。
そのため息は、自分も諦めるから諦めろと言っているかのようだった。
「つーかそれができんから、こうして小細工をしてるのではないか」
先輩のライバルになれるほど強いのならば、こうしてゲーゲーやりながら様々な魂を試したりしていない。
西暮に釣られる形でため息を吐くと、当の本人が恨めしそうな顔で俺を見た。
「……小細工とやらで人のゲームのランキング塗り替えないでくれ。後どうやったのか教えろ」
俺がいない間に確認したらしい。
怨霊のような瞳で、西暮は俺に迫ってくる。
奴の前に万国旗を出現させ、俺はそれを止めさせた。
「うっさい自分で考えろ。まったく、お前も大概役立たずだな」
ぽかんとしたアホ面を晒す西暮を置いておき、俺はちらりと背後に立つ悪魔を見る。
役立たず一号扱いされても、奴は変わらずにニコニコしていた。
なぜ俺の周囲は、こう微妙に頼りにならない奴らばかりなのだろう。
大体先輩にだってそういう筋肉イズパワーな部分だけではなくて、もっとこう、可憐な乙女な部分があるはずだ。
そういう部分についてフューチャーできる人材を探さなくては。
そんな考えを巡らせた俺は……。




