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1000匹狩ればスキルMAX。ドラゴンという絶壁を前に、子供になった元部長が導き出した――「生存戦略」  作者: 月城 蓮桜音


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第5話 たかが水汲み、されど水汲み

 翌朝、私はギシギシと軋むベッドの上で目覚めた。その枕元には、あの子猫が丸くなって眠っていた。


「ここまでよく辿り着いたね。えらいえらい」


 私は子猫の頭を優しく撫でる。「ゴロゴロ」と喉を鳴らす子猫を抱え上げる。うん? 少し重くなったか? いや、まさか。昨日の今日では、さすがに誤差だろうと苦笑いしながら体を起こす。


「水汲みしなきゃ。エリスさんはもう起きてる……みたいだね」


 この部屋は、食堂の二階に位置しているのだが、下からはエリスが料理人に挨拶している声が聞こえてきた。年をとってからは、日が昇ると目が覚めるようになってしまい、二度寝という幸せを享受できずにいたのだが、この世界に来ても二度寝はできないらしいと、少し残念に思いつつ、エリスのもとに向かった。


「おはようございます、エリスさん。水はどこに汲みに行けば良いのですか?」


「おはよう、シュン! そうだねえ……ああ、ドミニク! 昨晩伝えた通り、この子が今日から水汲みを手伝ってくれることになっているんだ。場所を教えてやってくれるかい? これから外へ行くのだろう?」


「あ、はい! えっと、君。僕はドミニクだよ。ついてきてね」


「はい、ドミニクさん。僕はシュンです。よろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げる私に、「ご丁寧にどうも」と返される。キッチン側から外に出ると、そこには茶色い『水瓶(みずがめ)』が置いてあった。


「シュンくん。この木桶でね、あそこの井戸から水を汲んで、この『水瓶』に水を貯めるんだ。『水瓶』は五つあるからね。大変だと思うけれど、頑張ってね! 君が来てくれて、本当に助かるよ」


 ドミニクが指を差した方角に視線を向ける。ええ……。石で囲まれていて滑車がついている、あれが井戸なのだろうけれど……。


「も、もしかして、これまではドミニクさんが一人で?」


「そうなんです! 昨晩、エリス姐さんに、『明日から水汲みはしなくて良い』と言われた時には、小躍りしちゃいましたよ! 今朝起きても少し信じられなくて、シュンくんに会うまで半信半疑だったんだよ! 本当に、ありがとうね!」


 なるほど、かなりの重労働だったんだろう。その井戸は、目測でしかないけれど、食堂の裏口から坂を百メートルほど下った場所にあるのだ。水を汲んでから、この坂道を……。せめて、逆なら少しは楽だったんだろうなあと、目を細めて遠くを見る。


「が、頑張ります……」


 力なく呟く私に、ドミニクは苦笑いしながら「下ごしらえするから戻るね! あとは任せたよ!」と軽やかな足どりでキッチンの裏口に手をかけ、入って行く。


「ゆっくりでもやらなきゃ、終わらないからなあ……」


 私は懐かしい、天秤棒を肩で支えるタイプの木桶を担ぎ、井戸に向かうのだった。


 ★★★


 水瓶は、一つを一杯にするのに、桶に五往復分の水が必要だった。水瓶は五つだから、単純計算で二十五往復すれば終わるはずだった。だがそれは、私が『五十五歳だったら』の話。今の私の体は七歳児なのだ。当然、天秤棒に慣れていない幼い体は揺れ、水は三分の一ほどこぼれてしまう。二十五往復分の三分の一がこぼれるということは……八往復ちょっと分、多く歩かなければならないのだ。


「はあ、はあ……。若いから筋肉痛程度で済むだろうか。五十五歳の私がやったら、間違いなく明日は動けないだろうな……」


 現代人で、多少ジムに行く程度の体力では厳しい水汲みを、若返ってこなしている私……。この世界では、体力も、俊敏性も必要だなあなんて考えながら、必死に水汲みを終わらせるのであった。

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