第2章 :とりあえず、いったんここまで。
【英国、サセックスへの道中の馬車で話す二人】
ジョン・H・ワトスン博士:「・・・空気がうまいねぇ。
狩りができるぞ。
・・・釣りだってできる。
しかも、『サセックスで1番の料理』を味わえるとはね。
ホームズ!」
シャーロック・ホームズ:「(寒そうにひざ掛けの毛布をいじくりながら)そのうえ、『レジナルド・マスグレーヴ』がいる・・・。」
ワトスン:「・・・古くから続いてる家の倅なんだろう?」
ホームズ:「(めんどくさそうに)大学の同級生だよ。
『プライドが高すぎるから』と、友達からは敬遠されていたが・・・ぼくに言わせればそれは、『臆病な本質を隠すため』にすぎんねぇ・・・。
とにかく彼の、『青白くて骨ばった顔』や、『頭の動かし方』を見ると、ぼくは、アーチの付いた灰色の道と、封建時代の城の『残骸』を思い出す。」
ワトスン:「フン! そりゃ、ずいぶん手厳しいね・・・なら、なぜ『招待』を受けた・・・?」
ホームズ:「何も『事件』がなかったし・・・部屋を片付けると、君はしょっちゅう『おどすから』だ。」
ワトスン:「ハッ! 『しょっちゅう』じゃないだろう。」
ホームズ:「だから、決心したんだよ。
このさい、週末を利用して整理しようってね・・・『初期の仕事』を。」
ワトスン:「初期の仕事・・・?」
ホームズ:「ああ。君と知り合う前の、初期の仕事ってことだな。」
ワトスン:「(ホームズの持ってきた金属製の小箱を指さしながら)そのころの記録があるのか?」
ホームズ:「んー。『ヘマした事件』も、『なかなか面白い事件』もある。
たとえば・・・『アールトン殺人事件』。」
(ここで、ワトスンがメモを取り出し、ホームズの文言を書きとめ始めた)
ホームズ:「ご印象に、『バムベリー事件』。
『ロシア情勢をめぐる事件』。
『ヴィゴレッティと悪妻が引き起こした事件』の記録も、全部ある。
世にも珍しい、『アルミの松葉杖事件』も。」
ワトスン:「『アルミの松葉杖事件』・・・?」
ホームズ:「・・・ひどく風変わりな事件だったよ。」
ワトスン:「はぁ・・・それなら、もっと前に見たかったな。」
ホームズ:「ふん。・・・そうだろうねぇ。
君がマスグレーヴと骨董品を見ている間・・・ぼくは、『記録の整理』でもしてるか。」
ホームズと私(= ワトスン)は、
イギリス屈指の家柄を誇る、
マスグレーヴ家に招かれ・・・
サセックスにある、その広大な屋敷を訪れた。
・・・当主の『レジナルド・マスグレーヴ』が、
ホームズのカレッジ時代の、いわば『ご学友』ということで、
この招待となったのである。
マスグレーヴ家は、
そのむかし、
チャールズ二世の『お側近く』に仕えたという、名門中の名門であるが・・・
今回の訪問で、私が楽しみにしているのが、
マスグレーヴ家の執事で、
『博学ぶり』を知られた、ブラントンに会うことだった。




