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第59話 フィナーレ


(´・ω・`)「ふぅ………4月といえど夜はやっぱり冷えるな」

ボクはあまりはしゃぐ気になれず

早々に飲み会を抜けトボトボと帰路についていた

その途中にジブリ本社前を通る


(´・ω・`)「部屋に明かりがついてる………」

(´・ω・`)「きっと中は鉄火場になってて大変なんだろうな」


火垂るの墓組をできることなら手伝いたいけど……

途中から入っても邪魔になるだけだ………


(´・ω・`)「火垂るの墓班のみなさん」

(´・ω・`)「頑張ってください」


そしてまたトボトボと歩き出す


(´・ω・`)「あれ?第2スタジオにも明かりがついてる………」

誰かいるのかな?

でもスタッフのみんなは飲み会で大騒ぎしてるし………

電気の消し忘れ?

………ちょっと覗いてみよう


ジブリ第2スタジオ


(´・ω・`)「あれ?宮崎さん」

彡(゜)(゜)「お、君もここに来たんか……」


(´・ω・`)「はい、あまりはしゃぎたい気分じゃないんで」

彡(゜)(゜)「なんでや?」


(´・ω・`)「トトロは完成しましたけど………」

(´・ω・`)「やっぱりお客さんにどう思われるか心配で」


彡(゜)(゜)「………せやな、実はワイもやねん」

彡(゜)(゜)「とくに子供たちが喜んでくれるか………」


彡(゜)(゜)「子供はなに考えとるか分からんし」

彡(゜)(゜)「これほど手応えが予想し難い仕事はこれまでなかったわ」


(´・ω・`)「トトロは楽しい映画ですし………」

(´・ω・`)「きっと喜んで観てくれますよね」


彡(゜)(゜)「楽しい映画か………」


彡(゜)(゜)「なあヒロカツくん、ちょっと訊くが………」

彡(゜)(゜)「君はトトロをどう見とる?」


彡(゜)(゜)「デスクという肩書から離れて………」

彡(゜)(゜)「制作じゃないヒロカツくんの意見が聞きたい」


(´・ω・`)………

なるほど、二人でトトロの感想戦をやろうってことか

そりゃあ言いたいことはある

でも、話すには覚悟がいる

相手は作品の監督にしてあの宮崎駿だ


(´・ω・`)「感想でいいんですね?」

(´・ω・`)「思ったまま何を言ってもいいですか?」


彡(゜)(゜)「もちろんや」

彡(゜)(゜)「ヒロカツくんの評は………当てになる時があるさかい」


(´・ω・`)「なんですかそれ………それじゃあ言います」


(´・ω・`)「この作品はとなりのトトロというより一歩間違えば………」

(´・ω・`)「となりのネコバスという印象を与えるように思えます」


(´・ω・`)「なにせネコバスの見た目は目立ちますし………」

(´・ω・`)「映画のクライマックスという一番美味しいところでも活躍します」


(´・ω・`)「逆にトトロは『へい!タクシー』とばかりにネコバスを呼んだだけで………」

(´・ω・`)「特になんの活躍もせずそのままフェードアウトです」


(´・ω・`)「もう少し……もう一芝居が………」

(´・ω・`)「トトロにあってもよかったのではないでしょうか?」


(´・ω・`)「あと以前にも言いましたが………」

(´・ω・`)「ネコバスの行先表示についてもやはりひっかかります」


(´・ω・`)「たしかにメイと出れば子供にウケると思います」

(´・ω・`)「でも、なぜネコバスはメイの居場所が分かったのでしょう?」


(´・ω・`)「表示だけならメイの名前を出すことは可能です」

(´・ω・`)「それでもやはり、メイが何処にいるのか?は別問題だと思います」


彡(゜)(゜)………

(´・ω・`)「どうですか?参考になりましたか?」


宮崎さんは何も言わず自分の席に歩いていった


(´・ω・`) .。oO(今回も返事はなしか………)

毎度思うけど、やはり返事がないのは残念だ

たしかに答え合わせは大事だ

でも答えを求めるやり取りの方が面白さは遥かに上だ

何より感想を言い合うやり取りは考え方を鍛える

これは相手が格上であるほど面白く

たとえ言い負けたとしてもその方がずっと面白い


彡(゜)(゜)「ヒロカツくん、ちょっと」

(´・ω・`)「はい」


彡(゜)(゜)つ「これならどうや?」

(´・ω・`)「えっ!?」


宮崎さんから6枚の絵コンテを渡された

トトロはもう終わったというのに

まさかコンテで回答されるとは思わなかった


(;´・ω・` ) .。oO(ヤバい………余計なことを言ったかも………)

完成した作品………それも試写会のあったその日に

監督から新たなコンテを渡される制作デスクの気持ちなんて言いようがない

強いて言えば、光あふれる天国から、暗黒の地獄へと

真っ逆さまに落とされる気分だ


彡(゜)(゜)「早う見てくれや」

(;´・ω・` )「はい………」


宮崎さんに渡された絵コンテのシーンはまさにクライマックス

トトロとサツキが大クスの木のテッペンに姿を現したところから始まる


トトロは大クスのテッペンでゆっくりと周囲を見渡す

なにをやっているのか分からないサツキ

でもその見つめる先にはメイがいるのかと思うと、自然にサツキも周りを見る

しかし地上はたそがれていて暗くなっている

トトロとサツキの足元

大クスのテッペンだけが夕陽に明るい

するとトトロの顔がピタッと止まる

「えっ!?どうしたの?」とサツキが問いかける

そこへトトロが顔を前のめりにしてギンッと3倍くらいの大きさに眼を開く

ビュンと早いトラックアップ、いわゆるズームアップ

田んぼが写る

ビュンとさらにトラックアップして七国山に続く道

さらにビュンとトラックアップすると

六地蔵の前でトウモロコシを抱えたまま立ち往生しているメイ

そのメイがヘタッと腰を下ろす

メイを発見!!

ここまでを逆再生でビュンビュンと引いて見せ

トトロは元の顔に戻る

そしてサツキに対して“あっち”と腕を上げる


ここから本編に戻ってネコバスを呼ぶために

トトロはグオォォォォと吠える


つまり、ネコバスはサツキを乗せてメイに向かうが

そのメイを発見する活躍はトトロに渡すということだ


彡(゜)(゜)「………どうや?」

(´・ω・`)「いいですよ………いいですよ!イケます!!」


ボクはコンテを手に急いで机に戻り、電卓を叩いた


(´・ω・`)「公開まで10日と少ししかないから………」

(´・ω・`)「もちろん劇場には間に合わない」


(´・ω・`)「でも、ビデオソフト板なら………」

(´・ω・`)「販売時のサプライズとして追加できる!」


必要な人、必要な枚数、必要な時間

どれだけあれば足りる?

これから作画や仕上げ、編集に音、アフレコ

今からだと大変だけど………やってやれないことはない!


(;`・ω・´)「えーと………」カタカタカタ


「ヒロカツくん………もうええんや」

「トトロはやはりこれでええんや」


(;`・ω・´)「いや!そんなのもったいない………」

振り返る


彡(^)(^)

そこにはサッパリとした笑顔の宮崎さんがいた


(´・ω・`)「………………はい」

ボクはもう何も言えなくなった

宮崎さんの新しいコンテにボクはたしかに魅力的に感じた

話の辻褄は合うし、トトロも主役としての活躍もできる

いいことづくめだと思った


でも、宮崎さんのサッパリした笑顔を見て………少し考えが変わった

トトロとはそのようなことをする生き物だろうか?

世話を焼きすぎたトトロは人間臭く映らないだろうか?

自然な生き物のトトロが不自然にみえないだろうか?


そういった疑問が頭に浮かぶ

それでもやはり………俗物のボクは新しいコンテに後ろ髪を引かれ未練が残る


(´・ω・`) .。oO(ともあれ監督がいいと言うならいいのだ)

宮崎さんが必要と言うのなら死ぬ気で頑張る

必要がないというなら必要ない

それだけのことなのだから


宮崎さんとボク

二人で始まった“ふたりのトトロ”はこうして幕を閉じた


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