第56話 クレジット
3月中旬
(´・ω・`)「いよいよ終わりに近づいてきたな」
彡(゜)(゜)「ヒロカツくん、ちょっと」
(´・ω・`)「なんですか?」
彡(゜)(゜)「オープニングに名前を入れといたから」
彡(^)(^)「ワイからのご褒美や」
(´・ω・`)「はぁ………ありがとうございます」
オープニングに名前?
なにを言っているんだろう?
意味が分からない
オープニングとエンディングを言い間違えたのか?
でもエンディングのクレジットに制作人の名前が入るなんて当たり前すぎて
ご褒美になるなんて思えない
(;´・ω・` ) .。oO(まさか橋の名前を“木原はし”にしたみたいに………)
オープニングのどこかにボクの名前を使ったんじゃないよな………
あの時も言ったけど
開始早々にボクの名前がでるなんてたまったもんじゃない
そうであるなら抗議しないと………
ξ゜⊿゜)ξ「木原くん!大変!私たちオープニングに入ってる!」
(;´・ω・` )「え!?どういうことですか?」
田中さんからオープニングのレイアウトを渡された
そこにはハッキリとボクたち制作陣の名前が記載されていた
(´・ω・`)「こんなこと前代未聞だ」
ボクの知る限りオープニングとエンディングの両方がある映画で
制作がオープニングにクレジットされている作品なんて一度も見たことがない
(´・ω・`)「なんでこんなことをしたのか問い詰めなきゃ」
その夜
(´・ω・`)「宮崎さん、お話ししたいことがあります」
彡(゜)(゜)「ん?なんや?」
(´・ω・`)「オープニングのクレジットについてです」
(´・ω・`)「どうしてあんなことしたんですか?」
彡(゜)(゜)………
彡(゜)(゜)「ヒロカツくん」
彡(゜)(゜)「二人で始めたトトロがもうすぐ終わる」
彡(゜)(゜)「ヒロカツくんはワイがお願いしたとおり………」
彡(゜)(゜)「楽しく作ってくれた」
彡(゜)(゜)「あれは、ワイからの感謝の気持ちなんや」
彡(^)(^)「よくやってくれた、ホンマおおきに」
(´・ω・`)………
ボクは次の言葉が出なかった
「よくやってくれた」の一言が何にも代え難いほど嬉しかった
かつて何人もの先輩から
「宮崎さんは制作を一切信用しない人だ」と聞いた
実際、宮崎さんはプレイングマネージャーだ
プレイングマネージャーとは監督兼選手という存在を指す言葉
これまで見てきたとおり、宮崎さんは一人のアニメーターとして自分で絵を描く
それでいて作品の監督をしながら、その進行状況を常に把握していて
現在どこまで動いているかを考え
何をどう動かして何日までに揃えてくださいと指示が出せるすごい人だ
(´・ω・`) .。oO(そんな宮崎さんから………)
これほどの感謝の言葉をもらうとは想像もしていなかった
たしかにボクはトトロの制作が楽しくなるように
女性中心の動画班を編成したり
彼女たち含め全スタッフが働きやすいように心をくだいたつもりだ
でもそんなことだけで楽しい職場になるはずがない
常に忙しく緊張感が凄いアニメ制作ならなおさらだ
(´・ω・`) .。oO(楽しい作品を楽しく作るなんて理想論もいいところ)
それこそアニメの中の理想郷………
でも、そんな理想的な世界がジブリ第2スタジオにはあった
なにせ2スタの社内に笑いのない日は1日としてなかった
笑いの絶えない日々だった
(´・ω・`) .。oO(なぜそんなに楽しく作れたのか?)
言い出しっぺの宮崎さんが協力してくれたのも大きい
笑いが絶えないということは、裏を返せばそれだけうるさいということだ
だけど宮崎さんは一度たりともそのことを注意しなかった
喜び楽しんでいる女性陣に気をつかって
ラピュタの時のようにイライラする気配を一切出さず
不機嫌になることも、怒って大声を出すこともなかった………
(´・ω・`)「あれ?待てよ………」
トトロの声を決めるとき、ボクはうっかりトトロが喋ることを忘れていて
そのことを怒られたような………
他にもいくつか………ま、いっか
そんなことより驚くべきことがある
なんとだ、なんとあの宮崎駿がトトロの制作中
タバコの本数を減らす………つまり節煙していたのだ
前作“天空の城ラピュタ”のときなんて
雲に隠れていたラピュタのようにタバコの煙に隠れていた宮崎さん
そんな宮崎さんが節煙に成功していたのだからスゴイとしか言いようがない
けど宮崎さんはどれもこれも無理してガマンしてたはずではないはずだ
スタジオ内が楽しかったからこそ
怒ったり、タバコを吸ったりするほどのストレスが無かったんだと思う
(´・ω・`) .。oO(でもやはり楽しく作品を作ることができたのは………)
トトロという存在がなにより大きかったと思う
前にもどこかで言ったが
描きたいモノを描く………
これほどアニメーターにとって楽しいことはない
みんながトトロを………トトロの世界を描きたいと思っていた
楽しい作品を楽しく作る楽しいスタジオができたのは
まさにトトロが与えてくれた奇跡なのかもしれない




