第35話 超難度カット
(´・ω・`)「宮崎さんが絵コンテを描いている間にも………」
(´・ω・`)「A、Bパートの原画、動画作業は進んでいた」
(´・ω・`)「このA、Bパートには鬼門となる………」
(´・ω・`)「超難度のスーパーカットがあった」
(´・ω・`)「それはオート三輪の荷台とオタマジャクシのシーンだ」
たぶん「どのシーンのことだ?」と首を傾げることだろう
超難度といっているのだから
とても目立つ場面映えするカットだと思われても仕方ない
でも違う
どちらも意識していないと数秒足らずで過ぎるなんてことないシーンだ
でも、そのシーンを作るための苦労は計り知れないものだった
(´・ω・`)「まず、オート三輪の荷台の方から説明すると……」
映画の冒頭、サツキたち家族がオート三輪に乗って引っ越してくるシーン
その走るオート三輪を真後ろから撮らえて遠ざかっていく5秒足らずのカットだ
はっきり言って観てる側はこのシーンに
「苦労するところなんてある?」と思っても仕方ない
じゃあ果たして何が大変なのか?
曲者となったのは積み荷の最後部に縛り付けられた自転車だった
(´・ω・`)「想像してみて欲しい………」
タイヤの真円もスポークもフレームも自転車の部品なにもかも
オート三輪が遠ざかる比率のままに正確に小さくしていく
それも一枚一枚、手描きでだ
しかも途中でオート三輪がバウンドするというおまけ付き
(´・ω・`)「今ならパソコンを使ってアスペクト比を変えれば済む話だが」
(´・ω・`)「当時のジブリにそんな便利なものはない」
(´・ω・`)「ボクは初めてこの絵コンテを見た時から悪い予感がしていた」
(´・ω・`)「だから何度も宮崎さんに自転車の話を持ち掛けたものだ」
・・・
(´・ω・`)「宮崎さん、やっぱりこの自転車のことなんですけど………」
彡(゜)(゜)「またかいな、自転車のなにがそんなに気になるんや?」
彡(゜)(゜)「この自転車は後々でサツキ一家が3人乗りで使うんやから……」
彡(゜)(゜)「その伏線のために描いとることぐらい分かるやろ」
(´・ω・`)「そうなんですけど………」
(´・ω・`)「自転車の場所が………」
彡(゜)(゜)「場所っていってもサツキとメイの前には置けんし…」
彡(゜)(゜)「反対側の横につけたら目立たないやんけ」
(´・ω・`)「そうなんですけど………」
(´・ω・`)「描くのが面倒で………」ボソッ
(´・ω・`)「あの……上ってどうですか?積み荷の……」
(´・ω・`)「荷物を降ろす場面でゆっくり自転車を降ろして目立たせれば……」
彡(●)(●)「あのな!スタッフに楽をさせたらアカンのや!!」
彡(●)(●)「それにこのカットは見た目には分からないスペクタルなんや!」
(;´ᴖωᴖ`)「アハハハ……そうですよね……スペクタルスペクタル…」
苦笑いをしつつボクはこの場を立ち去った
(´・ω・`)「ふぅ………やっぱり怒られたか」
(´・ω・`)「まあでもこれも計算の内さ」
ボクはわざと宮崎駿に怒られるように仕向けていた
何度も自転車の話をして、その上、怒らせることに成功したんだ
きっと宮崎さんにこのカットのことを印象づけれたことだろう
これが後々の布石となったはずだ………なってくれないと困る………
少しだけ時間が飛んで
(´・ω・`)「やっと引っ越しのシーンの原画ができた」
(´・ω・`)「次はこの原画を動画担当に回すんだけど……」
(;⌐■_■) ;⌐■_■);⌐■_■)カキカキカキ
(; ⁎ˆᴗˆ⁎ )( ; ⁎ˆᴗˆ⁎ )( ; ⁎ˆᴗˆ⁎ )カキカキカキ
(´・ω・`) .。oO(みんなとても忙しそうだ………)
こんな中で1人を選んでこの超難度の原画を託そうものなら………
(´・ω・`)「あの………」
(ꐦ⌐■_■)ꐦ⌐■_■)ꐦ⌐■_■)「あん!?」
(ꐦ⁎ˆᴗˆ⁎ )(ꐦ⁎ˆᴗˆ⁎ )(ꐦ⁎ˆᴗˆ⁎ )「あん!?」
(;´・ω・` ) .。oO(みなさんの殺気がすごい………)
「まさか僕に・私に渡すつもりではないですよね!」
とすごい圧を感じる
スタジオジブリ第2スタジオには不穏な空気が漂った
もちろんこの不穏な空気を読めない宮崎さんではない
彡;(゜)(゜)「………ヒロカツくん、ちょっと……」ボソッ
(;´・ω・` )「どうします?このスペクタルな動画?」ボソッ
ボクはここ一番の困り顔を作った
しかし狙い通りだった
このカットのことを印象づけてたことで宮崎さんが直々に解決に動き出した
動画の担当を決めるのは制作ディスクのボクの仕事だ
本来なら監督の宮崎さんの手を煩わせるわけにはいかないのだが………
ボクの様な若造に仕事を押し付けられ、いらない反発を招くくらいならば
監督の指名で選ばれた方がいいに決まっている
彡;(゜)(゜)「この動画はモロちゃん(諸橋伸司さん)に話をつけておくから………」
(;´・ω・` )「………宮崎さんの指名ってことで………いいんですね?」
彡;(゜)(゜)コクリ
(;´・ω・` )「ということで諸橋さん、お願いします………」
(;⌐■_■)「え!………まぁ……宮崎さんがそう言うなら……」
この日から諸橋さんは毎日毎日オート三輪に取り組むことになった
そして終わったのは秋になってのことだった………
諸橋さん、ありがとうございました………




