第34話 茶カーボン
8月上旬
(´・ω・`)「この時期、スタジオジブリではある重大な決定が下された」
(´・ω・`)「なんと!茶カーボンを使用することが決定したのだ!!」
(´・ω・`)「…………なんて言っても」
(´・ω・`)「アニメ関係者でなければ『は?なにがすごいの?』って話だよね」
少し説明すると
そもそもカーボンは何に使われているかという所から始まる
カーボンは鉛筆の線をセルと呼ばれる
透明なプラスチックシートに転写するために使われる
黒カーボンを使えば黒い線が転写されて、茶カーボンを使えば茶色の線が転写される
従来のアニメのセルといえば黒い線が当たり前
カーボンといえば黒と言っても過言ではなかった
他のカラーカーボンはごくたまに特殊なシーンで使うぐらい
(´・ω・`)「じゃあ、なぜ今回は茶カーボンを使用することになったのか?」
それは、日本特有の自然な景色との相性が抜群によかったからだ
これは見比べてみないと難しいんだけど………
一度茶カーボンのセルを知ってしまうと後には戻れないほど
日本の風景との親和性は高かった
ただし何でもかんでも茶カーボンを使用するわけではない
茶色の線は昼間のシーンでしかその効果を発揮しない
だから光のあふれるシーンでは茶カーボン
夜、雨の野外シーン、機械や人でない存在には黒カーボンを使い分けした
この使い分けのせいでシーンの仕分けをする仕事が増えたんだけどね
(´・ω・`)「まあ、こんなことを聞いても『ふーん……』程度だろう」
じゃあ、もっと分かりやすく茶カーボンのなにがすごかったかを言うと
その値段だ
茶カーボンは黒カーボンの倍の値段がかかった
この頃のスタジオジブリは経営が不安定で
資金繰りも厳しかったと思う
そんな中で倍のコストがかかるモノを採用しようというのだ
経営陣と宮崎・高畑両監督はさぞ悩んだことだろう
(´・ω・`) .。oO(たしかに仕事は増える、お金はかかるなら)
従来通りの黒い線でも誰も違和感を覚えてなかったんだし
別に黒いままでもいいじゃんと言われればそれまでかもしれない
(´・ω・`) .。oO(それでも、宮崎・高畑両監督のこだわり………)
作りたいものを作って欲しいと願えばこその茶カーボンである
とボクは思う
そんなこんなで季節は夏も真っ盛りとなっていた
宮崎さんの絵コンテはCパートを終えようとしていた
Cパートの季節も夏真っ盛り
現実で作品を制作している季節とCパートの中で描かれる季節とが
シンクロしていた
窓の外にはコンテで描かれた風景が輝いていた………
彡(^)(^)「トトロは楽しくなるで!」
と、宮崎さんが声を上げる
するとスタジオの全ての顔が“知ってます”と頷いたものだ




