第30話 愛情
ある日
彡;(゜)(゜)「うーん……」
(´・ω・`) .。oO(珍しく悩んでいるな……どのシーンだ?)
宮崎さんが悩んでいたのは
サツキとメイが入院しているお母さんのところを訪れたシーンだ
(´・ω・`) .。oO(メイはお母さんを見るなり………)
駆け込んで膝にしがみつき、躊躇なく素直に甘える
一方サツキはお姉さんとしてメイと同じように甘えることができない
サツキは家ではお母さんの代理として頑張っているという
一種の少し大人を演じているのだ
(´・ω・`) .。oO(お母さんはもちろんそれを見抜いている)
そんな娘の気持ちを汲んで、妹の前で甘えさせるわけにはいかず
頑張っているねと直接には言葉にできない
でも子供ながらに我慢している娘に愛情は示したい
では、そんな状態でメイの前で甘えさせず
どうやって言葉以上に愛情を交わし合うシーンを作るか
(´・ω・`) .。oO(そこで宮崎さんは……)
お母さんにサツキの髪を梳かせることにした
メイはサツキに梳いてもらってもサツキは誰にも梳いてもらえない
だからこそサツキの髪を梳くお母さんの気持ちがより伝わるのだ
彡(゜)(゜)「ヒロカツくん、どう思う?」
彡(゜)(゜)「髪を梳くだけのシーンやが……伝わると思うか?」
(´・ω・`)「伝わると思います」
彡(゜)(゜)「ん?ずいぶんとハッキリ言うな。なんでや?」
ボクは趣味として怪談やその体験談を集めている
その中にサツキとお母さんの似たような次のエピソードがあった
ある女性が子どもの頃、お母さんはずっと入院していた
だからお母さんとは病室のベットでしか会ったことがない
ところが病室に入ると、いつもすぐ側まで呼び寄せるのになぜか
後ろを向かせると、自分の愛用しているブラシを手に黙ったまま髪を梳きだす
お母さんは髪が長いが、その女性はショートヘアだった
だから梳くのは簡単、すぐ終わる
それなのに、ずっとずっと何度も何度も髪を梳いてくれる
その間中、正面を向かせてくれないから、病室の壁ばかり見ていた
どんな顔で自分の髪を梳いてくれているのか?
その最中の顔をお母さんは一度も見せてくれなかった
髪を梳く長い時間、ほとんどポツリポツリと独り言を喋るだけのお母さん
部屋に入った時と出て行く時にしか見ない笑顔
やがてお母さんは退院することなくこの世を去った………
しかし………とこの女性は続けた
長々と顔すら見た覚えもないのに、母親の愛情を見失ったことはなかったという
「だから私は片親だったけど、それでいじめられたことも多かったけど……」
「寂しいと思ったことはないし、一度もグレなかったんですよ」
と女性は誇らしげに笑った
宮崎さんはボクの話を黙って聞いていてくれた
(´・ω・`)「宮崎さん……親子はこれでいいんです」
(´・ω・`)「ボクはこのままであって欲しいです」
彡(゜)(゜)…………
彡(゜)(゜)「ええ話やな……」
宮崎さんはそう一言呟くと机に向かった




