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ep65 覇王

「……え?」


 誰もが、思考を止めた。

 視界に広がっていたのは、崩れ落ちていく隕石。

 あまりにも突拍子もない出来事に、理解が追いつかない。


 そんな中、ホログラム越しに、レックスが満面のドヤ顔を浮かべていた。


「ほら、届いたでしょ?」


 レックスがニカッと笑って指を立てる。


「レ、レックス……あんたがこれやったの!?」


 サヤが目を丸くして叫ぶ。


「へへーん! どんなもんだ――」


 ゴンッッ!!


「いってぇぇぇ!!?!」


 画面がグラついた直後、頭を抱えながらレックスが叫んだ。

 その背後から、聞き慣れた声が響く。


「こら、レックス! 調子に乗んないの! あんた何もしてないじゃない」


 映像の端に映り込んできたのは、腰に手を当てたサンシャインだった。

 呆れた顔で、まるでお母さんのように叱っている。


「サ、サンシャインさん!? あの……今のって、いったい何が……」


 ルナベールが混乱した様子で訊ねる。


「ああ、それね。今のは――」


 そのとき。

 静かだった空気に、低く響く男の声が割って入った。


「……喧しい。まだ終わっちゃいないぞ、童共」

「ひっ……」


 サヤが思わず肩をすくめる。

 その声の主に、ルナベールが目を見開いた。


「ジンさん……!? まさか今の攻撃……」


 問いかけに、ホログラムの向こうで腕を組んだジンが、鼻で笑う。


「はぁ、バレちゃったか……俺の手柄にして驚かせようと思ったのに」

「あんたそれ1番嫌われるやつよ」


 冷ややかな目でレックスを見るサンシャイン。


「実はさ~」


 レックスがぽりぽりと頬をかいて言った。


「今朝、ルナベールさんから連絡もらった時に、たまたまギルドに待機してたジンに頼んだんだよ。“様子だけ見てくれ”って。ほら、ジンってスナイパーやってるだけあって"目"が良いからな」

「いやいやいや、ちょっと待て! 俺たちが今どこにいると思ってんだよ! さっき聞いたら3,000キロは離れてるって話だぞ!?」


 レインが目を見開いて言う。


「問題ない」


 ジンはまるで当然とばかりに言い放った。


「たとえ万里を越えようと、星の裏へ逃げようと、天獄へ駆け込もうと……俺の《千里眼》に映らぬものなど存在せん。俺の眼が捉え、そして俺の覇王眼穿撃(アウル・レガリオン)が撃ち抜く……ただそれだけのことだ」


 彼の眼は、空間・時間・距離といったすべての制約を無意味にする“神域の千里眼”。これによって星の裏側すら見通す視界と観測能力を有しており、「狙撃可能である限り、逃れられる獲物は存在しない」と断言される。そのことから"覇王"と呼ばれ、現在最もエグゼアに近い実力を持つと言われるS級冒険者。それが、ジン・イグナレオス=ゼイリュオン。


「街に落ちる隕石だけを狙う。あとのことは、レイヴン……お前に任せるぞ」


 レインの目が見開かれる。


 思わず息を呑んだ。ギルド最強の一角、S級冒険者の頂に立つジンが、自分に“任せる”と言った。


 心臓がドクンと鳴る。責任の重みが肩にのしかかるのを、レインは全身で感じていた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 

 ——ギルド 赤蓮の牙の屋上


 彼は微動だにせず、両腕を静かに組んだまま空を見つめる。


 その視線の先、遥か3,000キロ先にある空の一点へ──狙いはすでに定まっていた。


「――照準は定まった。我が覇王道に逆らうものなし――」


 ジンの足元に、淡く輝く魔法陣が現れた。それは一つ、また一つと増え続け、空間に浮かぶようにして幾重にも重なっていく。


 数十枚、いや数百……それら全てが、ただ一つの直線へと収束していた。


 魔力の波動が渦巻き、辺りの空気が震え出す。まるで雷雲の核がそこに存在するかのように、重く、鋭い緊張が支配する。


 最前列の魔法陣が淡い光を放ちながら回転し始めた。


 それは起動の合図だった。


 ズン……と低く、鈍い音が大気を震わせる。


「──最大開放」


 魔力が一気に流し込まれる。


 先端の魔法陣が閃光を放つと同時に、背後のすべての魔法陣が連鎖的に発光しはじめる。


 そして──


「《天星穿(ヴェルグランド)滅界皇光(ノヴァ)》」


 ズギィィィィィィィィン――!!


 放たれた光は、まるで星を貫く意志の具現。


 重ねられた全ての魔法陣を通過するたび、そのエネルギーは膨れ上がり、圧縮され、純粋な破壊の槍となる。


 極太の黄金のレーザーが、空を裂いた。


 その軌道は寸分の狂いもなく、まっすぐと。


 遥か彼方──天を覆う隕石の中心へと、一直線に突き刺さった。


 ズゴオォォォン……!!


 最後の爆裂音が空を割り、ついには──


 隕石そのものが、光の中で“消えた”。


 残されたのは、黄金の尾を引く光の残滓と、その先に広がる蒼穹の空だった。

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