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ep6 過去と未来

 ガララ……。


 重々しい音を立てて、冒険者ギルドの扉がゆっくりと開かれる。

 その瞬間、それまで騒がしく賑わっていた室内が——ぴたりと静まり返った。


 ビールジョッキのぶつかる音、歓声、笑い声……すべてが止まる。


「……あれ誰」

「見ない顔だな」

「あの女の子凄い派手ね……」


 酒と汗と血の匂いが混じる空気の中、レインとサヤは視線の嵐に晒されていた。


「……うわ、めっちゃ見られてるし……」


 サヤが小声で肩を寄せてくる。

 その瞬間、ギルド内の目線が一斉にレインの隣へ注がれた——というより、サヤの胸元へ一直線。


 露出度の高い服から溢れんばかりの豊満な胸。健康的な褐色の肌に金髪が映え、異世界のどんな美女も霞んで見えるほどだった。


 レインは喉を鳴らしてから、小声で言った。


「……舐められるなよ。堂々としろ」

「言われなくても、ウチはいつでも全力☆」


 レインは深く息を吐き、受付の方へと足を踏み出した。

 サヤも少し緊張した面持ちでその隣を歩く。


 その間にも、背後からはヒソヒソと囁き声が聞こえてくる。


「……カップルでしょうか?」

「さぁな。どっちにしろ強そうには見えないが」

「この辺りじゃ見ない格好だよね……田舎からきたのかな?」


 耐えるように奥歯を噛みしめながら、レインはカウンターへ到着した。

 そこにいたのは——


 顔面に一本、大きな傷跡を走らせた巨漢の男。


 無言。

 ただただ、こちらを睨みつけている。

 その瞳から発せられる圧が、空気の密度を一気に変える。


「コッワ……」

「えっと……あの、俺たち……」


 レインが勇気を振り絞り、口を開く。


「……冒険者になりたいんですが」


 しかし——


 巨漢の男は無言のまま、ゆっくりと首を横に振った。


「え……?」

「……どゆこと……?」


 サヤが困惑の顔でレインを見る。


「す、すみません! 俺たち、冒険者になりたいんですけど……!」


 再びレインが声を上げるが、巨漢は相変わらず口を開かない。

 代わりに、無言で——天井を指差した。


「……ん?」


 二人が視線を上に向けると、そこにはぶら下がった木製の看板。


 【苦情・相談窓口】


「……場所、間違えた……?」


 サヤがぽつりと呟いたその時、巨漢は今度は左手を持ち上げ、隣のカウンターを指差す。


「あ、そっちか」


 二人は慌ててそちらに移動する。

 看板には、こう書かれていた。


 【新規冒険者登録・昇格受付窓口】


「……こっちだったね」


 サヤが苦笑する。


「そうだな……ってか、あの人、喋ってくれよ……」


 レインは冷や汗を拭いながら、改めて窓口に立つ。


「すいません、冒険者に——」


 言い終える前に、


「ああん!? なんだオマエらァ!」


 受付嬢の怒鳴り声が爆発した。


「ヒィッ!?」

「うわっ、ビックリしたぁ!!」


 レインとサヤが同時に飛びのき、肩をすくめて目を見開く。


 受付カウンターに立っていたのは、目元に刃物のような鋭いアイラインが走り、長い赤髪をひとまとめに結んだ女。腕を組んだまま、鋭く睨みつけてくるその姿は、まさに“鬼”。


「……何の用だ?」


 低く、ドスの効いた声。


「あ、えっと……」


 レインは喉を鳴らし、震える声で言った。


「冒険者になりたいんです。ここ、ギルド……ですよね?」


 その言葉に、受付嬢の眉がぴくりと動く。


「冒険者だと……? お前が言う“冒険者”とは、一体なんだ」

「……え?」


 突然の質問に、レインは言葉を詰まらせる。

 サヤも「え、どういうこと?」と首をかしげた。


「いや、だから……」


 レインは戸惑いながらも、慎重に言葉を選ぶ。


「えーっと、魔物を倒して、依頼をこなして、お金を稼ぐ職業……っていうか……そういうやつ、です」


 一瞬の沈黙ののち——


「……ぷっ」

「ははっ!」

「なんだそりゃ!」

「そこら辺のならず者集団と一緒にされちゃ困るなぁ」


 ギルド内の冒険者たちが、次々に笑い出した。


「ちょ、なに!? なんで笑ってんの!?」


 サヤがむっとして膨れっ面を作る。

 レインも頭をかきながら呟いた。


「……そんな変なこと言ったか……?」


 その時、受付嬢が冷たい声で告げた。


「……ただの冒険者になりたいだけなら、他のギルドをあたんな。ここは、そういう志の低い連中が来る場所じゃないんだ」

「え、でもここ冒険者ギルドでしょ?」


 サヤが眉をひそめて、受付嬢に食い下がる。


「ここに来て試験受ければ、冒険者になれるって思ったんだけど」


 その問いに、受付嬢は腕を組み、ゆっくりと息を吐いた。

 そして、鋭い目をレインとサヤに向ける。


「……いいか、坊や、嬢ちゃん。よく聞きな」


 ギルド内にいた冒険者たちも、ざわめきを止めて耳を傾ける。


「ここのギルドはな、お前らが想像している普通の冒険者ギルドじゃないんだ」


 受付嬢の声に熱がこもっていく。


「身命を賭して民を守り、国を守る――」


 その視線が鋭くレインたちを射抜く。


「そして、いずれ来たる“脅威”に立ち向かう世界の英雄エグゼアを志す者たちが集う場所——」


 彼女は拳を胸元で握り、声を張り上げた。


「それが、冒険者ギルド《赤蓮の牙》だ!」


 一呼吸ののち——彼女はギルド内の冒険者たちに声を投げた。


「そうだろ、お前たち!!」

「おおおおおおおおおおおっ!!!」

「エグゼア万歳!!」

「赤蓮の牙に栄光あれぇ!!」


 一斉に雄叫びを上げる冒険者たち。

 天井が震えるほどの熱狂に、レインとサヤはただ呆然と立ち尽くしていた。


「な、なんだこのテンションは……」

「え、ちょ、怖いんだけど……」


 二人の顔が引きつっていくのを見て、受付嬢はフッと鼻で笑った。


「お前らのその腑抜けた顔を見るに、エグゼアを目指す志どころか——」


 彼女は冷たく言い放つ。


「一般教養すら持ち合わせてないようだなぁ!!」


 バンッ!!


 彼女がカウンターを叩くと、背後の扉が魔法の風圧で開き——


「出直してこい!!!」


 ギルドの外に、レインとサヤの身体が容赦なく吹き飛ばされた。


 バンッ!!!!!


 無様に尻もちをつく二人。扉は無情にも閉ざされる。


「痛ったぁー……なっ、何あれ!! ギルドってもっとさ、こう……親切なところじゃないの!?」


 サヤがプンスカ怒りながら立ち上がる。


「……はぁ……」


 レインはその場に崩れ落ち、項垂れる。


「やっぱり俺は、この世界でも不幸から逃れられない運命なのかもしれねぇ……」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 広場の噴水の縁に、レインはドサリと腰を下ろした。サヤもその隣に、投げ出すように座り込む。


「……なんかもう、色々としんど……」


 顔を上げると、噴水の水がキラキラと夕陽を反射していた。その美しさが逆に胸に刺さる。


「……なんなんあのギルド。ノリが軍隊じゃん。ウチのキラキラした異世界ライフが一気にゴリラモードなんだけど」


 と、サヤがぶつぶつ文句をこぼす。


 ギルドでは門前払い、異世界に来てから水も食べ物も口にしていない。気づけば、胃がきゅるきゅると音を立てていた。


「……腹減ったな」

「だよねー! ウチ、さっきからずっと空腹MAXなんですけど!」


 サヤは不満げにほっぺを膨らませる。


「つーかさ、あの屋台の人たち、マジで冷たくない? ウチが『なんか余ってませんか~?』って可愛く言ったのにさ、全スルーだよ? 前の世界だったら、おじさんたち秒で財布出してたのに!」

「いや、それ……言い方変えても物乞いだからな? さすがに無茶あるだろ」

「え~? 今までなら余裕で通じてたのに~。こっちの世界、ケチばっか。な~んでうまくいかないんだろ」

「……うまくいかないのは、俺のせいかもな」

「は? なんで?」


 レインは肩をすくめ、乾いた笑みを浮かべた。


「……俺さ、生まれつきの不幸体質なんだよ。昔っから何をやっても裏目に出る。幼稚園の頃には蛍光灯が俺の頭に落ちてくるし、小学校の入学式で靴踏まれて転んで歯が折れたし……。遊んでた友達が急に骨折したり、ペットが死んだりして、だんだん誰も近づいてこなくなった」


 サヤは目を丸くしているが、レインは淡々と続けた。


「中学では修学旅行で乗ったバスが事故って、俺だけ病院直行。高校の時は、自転車のサドルが折れて頭ぶつけて記憶飛ばした。バイト先じゃ俺がレジに立つ日だけ万引きが出るし、親戚の葬式じゃ、手を合わせた瞬間に仏壇が倒れた」


 言葉の端々に笑いを混ぜてはいるが、その声に熱はなかった。


「極めつけは……お祓いに行った神社が火事になったことかな。“これはもう呪われてるんじゃないか?”って本気で思ったよ」


 ふ、とわずかに笑って、レインは俯く。


「……俺、自分が誰かと一緒にいるだけで、そいつを不幸にしてる気がするんだ。母さんのときも、そうだった。会いに行った、たった一回の面会のあとで……死んだ」


 サヤは、何も言えずに彼を見つめていた。


 レインは小さく息を吐いて、サヤから視線を逸らした。


「だから最初ウチを置いて1人で行こうとしてたの?」

「ああ……。だからさ、今回もたぶんそう。異世界に転生したって、俺の人生はどうやら不幸なままらしい。俺がいるから、サヤも上手くいかないんじゃないかって思ってる」


 冒険者になって、異世界で人生をやり直すはずだった。なのにこれも全部、自分の“運の悪さ”のせいだとしか思えなかった。


「……悪かったな、サヤ。お前を巻き込んじまって。最初から言っておけば……お前1人だったらもっとうまくいっていたはずなんだ。だから俺とはもう——」

「そんなの関係なくない?」


 サヤはキッパリと言った。


「不幸なのは、レインのせいじゃない。生まれとか、運とか、そういうのは選べないんだからさ。気にして生きてたら、人生もったいないじゃん」

「……」

「ウチもさ、ずっと“いいこと”なんてなかったよ?」


 レインが顔を上げると、サヤは少し遠くを見ていた。珍しく落ち着いた声だった。


「見た目のせいで、ちっちゃい頃からずーっと変な目で見られてさ。中学の時には男の先生に変なことされた。誰にも言えなかった。高校じゃ男子に勝手に“経験人数ランキング”とか作られて、気づいたら1位になってたの。ウチのこと何も知らないクセに」


 いつもの軽口とは違う、少し沈んだ声だった。


「クラスの女子には『ぶりっ子』だの『天然のフリしてる』だの陰口叩かれてハブられてさ、机に落書きもされた。“ビッチ”とか“売女”とか、ね。親には『目立つな』っていつも言われてた。でも一人になりたくなくて、無理して明るくしてさ」


 レインの顔が曇る。


「高校の時、夜道でストーカーにつけられて。警察に言っても“被害届がないと動けません”って。結局、あたしの家に押し入ってきた。……そしてその男に殺された。 動画撮られて、全国に出回って。“呪いの女”だってさ。笑えるよね。生きてても、死んでても、呪われてるって」

「……サヤ」


 レインの声に、サヤはにっと笑い返した。


「不幸って、ずっと続くわけじゃないって思ってる。絶対いつか、帳尻合うって信じてる」


 ふっと視線を空にやり、サヤは続ける。


「だからこの世界では、思いっきり生きるって決めてるんだ。ここで、あたしの人生の続きを歩むの。ちゃんと、自分で選んで、自分で進む」


 サヤはぱっと明るい笑みを浮かべて、指を立てた。


「禍福は糾える縄の如し」

「……?」

「幸せと不幸は交互に来るって意味! だから不幸が続いたら、そのぶん、めっちゃデカい幸せが来るってこと!」


 日が沈みかけた空。オレンジの光を浴びたサヤが、まるで光をまとっているかのように見えた。


「……綺麗……」


 思わず漏れた独り言。褐色の肌に夕陽を浴びたサヤは、まるで空と一体化しているようで、目を逸らすのが惜しいほどに輝いていた。


「ん? なんか言った?」


 サヤが首を傾げてのぞき込んでくる。その笑顔に、思考が一瞬だけ吹き飛ぶ。


「あっいや、別に……。ありがとう、サヤ。俺も……この世界で幸せな人生を歩みたい。今まで不幸だった分……いや、それ以上の幸せを掴んでみせる」


小さく拳を握りしめるようにして、レインは自分に言い聞かせるように言った。声にはまだ少し震えが残っていたが、それは希望の重みだった。


「うん、その調子!」


 サヤはグッと親指を立てて笑う。眩しい笑顔。空の色に負けないくらいの強さを持っていた。


 だが——


「でもな……」

「ん?」


 レインはひとつ息を吸い込んで、叫ぶように吐き出した。


「幽霊のお前に殺されたっていう、最悪の不幸は忘れねーからな!!」

「いや~ん、まだ根に持ってるの~? レインったら女々し~い!」


 サヤがおどけて舌を出し、わざとらしく手をひらひらさせる。夕陽を背にしてふざけるその姿が、まるで無敵の子どもみたいで、レインの怒りに油を注ぐ。


「このヤロウ、人殺しといて何笑ってんだぁ!! お前にも俺を幸せにする責任があるんだからなっ!!」

「きゃーっ、ごめんなさーいってばー!」


 広場の噴水の周りを、軽快に駆けるサヤ。その後をレインが怒鳴りながら追いかける。


 ふたりの笑い声が、広場の夕暮れに溶けていった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 


 空が茜色が一段と濃くなった頃、噴水広場にカツカツと靴音が響く。


 音の主は、小柄な一人の老婆だった。

 白い髪をひとつに束ね、背中を少し丸めながらも、手には立派な木製の折りたたみ椅子を抱えている。


 老婆はゆっくりと噴水の前まで歩いてくると、椅子を置いて、腰を下ろした。


「……?」


 サヤが眉をひそめる。


 レインも目を細めて見つめる。だが、その瞬間——


 キーンコーンカーン


 噴水の中央にある時計の鐘が響き渡る。


「おばあちゃーん!!」


 それと同時に周囲の路地から、一斉に子供たちが走り出してきた。

 五人、十人、いや、それ以上——サヤとレインのすぐ横を駆け抜け、歓声と笑い声を上げながら老婆のもとへと集まっていく。


「な、なになに!? どしたの!?」


 サヤがぽかんと口を開けている間に、老婆は静かに手をかざした。

 次の瞬間、光が空中に集まり——


 ぱんっ と柔らかく弾けて、空中に一つの箱が現れた。


 その箱はゆっくりと地面に降り立ち、ぱかりと開く。

 中には色とりどりの、キャンディやクッキーがぎっしり詰まっていた。


「おお〜……魔法でお菓子作った……!」


 子供たちは慣れた様子でお菓子を取り出し、それぞれ好きな場所に座り込むと、頬をふくらませながらモグモグと食べ始めた。


 老婆は続けて、今度は両手を軽く振った。

 すると、空間に魔法陣が浮かび上がり、その中心から小さな人形たちが飛び出してくる。まるで人形劇の舞台が魔法で組み上げられていくような、美しく幻想的な光景だった。


「……ねぇ、アレってさ」


 サヤが身を乗り出して言った。


「もしかして公園でやったりする紙芝居的なやつかな? 懐かしいね〜!」

「紙芝居……そんなのあったか? あーでも昔母さんがよく観に行ってたとか言ってたな」

「え、昔? お母さん?」

「うん……」

「……」

「……ん?」


 サヤは少しだけ睨むような目でレインを見たあと、フンと鼻を鳴らし、長い髪をひらりと揺らしながら子供たちの集まりへと近づいていった。

 そのまま、子供たちの少し後ろに、ぽすんと座り込む。


 少し離れた場所にレインも座り、様子を見守る。


 その時、サヤの目の前に座っていた小さな男の子が、すこし体をズラして隙間を作った。


「……?」


 サヤが戸惑うと、男の子はちょこんと首をかしげながら言った。


「ねぇちゃん、ここ座っていいよ」


 その一言に、サヤはぱっと笑顔を浮かべた。


「キミ優男だねぇ~、ありがと♪」


 彼女が腰を下ろそうとしたその瞬間——

 男の子がじーっとサヤの胸元を見つめながら、ぽつりと言った。


「ねぇちゃんおっぱいデッカいね」

「……おっp……」


 サヤの全身がフリーズした。

 周囲の空気が一瞬止まり、レインが喉を押さえて耐えきれず、ぷっと噴き出す。


 顔を引きつらせながら、サヤは無理やり作った笑顔で言った。


「……あ、ありがと。でも……もっと他の褒め方、ないかなぁ……?」


 男の子はきょとんとした顔のまま、クッキーをかじった。

 サヤは顔を真っ赤にして、その場に座り込む。


「……もぉ……」



 パン、パンッ。



 軽やかな手拍子が響いたかと思うと、おばあちゃんの周囲に魔法の粒子がふわりと舞い上がった。木でできたような質感の人形たちは、手足をバタつかせながら整列し、舞台の中央に立った。舞台そのものも、魔法の光が形を取り、まるで本物の劇場のように柱と幕が現れる。


「今日は新しいお友達がいるようね。それなら今日のお話は……」


 おばあちゃんが優しく目を細めると


「創世記のお話ー!」


 子供たちが口を揃えて元気な声で叫ぶ。


「あの空の色が変わるとこ好き!」

「ボクは双子の神様がケンカするとこー!」

「私はそのあとに出てくる四匹の“動物”が好きー!」


 次々に叫ばれる子供たちの声に、おばあちゃんはくすくすと笑いながらうなずいた。


「まぁまぁ、みんな本当に創世記が大好きなのねぇ」


 サヤがレインの方を見て、小声で囁く。


「……創世記?」


 レインは少し身を乗り出し、離れた場所から様子を見守りつつ、呟くように返す。


「たぶん、この世界における神話とか……伝説の始まりの話じゃないか?」


 サヤは「へぇ〜」と頷きながら、子供たちの列に混ざってそっと足を崩した。レインもそのまま姿勢を正し、静かに耳を傾ける。


「それじゃあ始めるわね」


 おばあちゃんは人形劇の幕をゆっくりと開けながら、穏やかに語りはじめた。




「むかしむかし、世界にまだ空も大地もなかった頃——双子の神がいました」

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