ep19 トライデント
汗が乾ききらないまま、三人はギルドの食堂へと足を運んでいた。
「ふぅ〜っ、久々の運動気持ち良かったー! 良い汗かいたね」
「いや、お前は大して動いてないだろ……」
サヤが伸びをしながら歩き、ポニーテールがふわりと跳ねる。隣を歩くレインはというと、若干疲労気味で、肩を落としていた。
「にしてもルナちゃん、手加減なかったよね……絶対レインのこと焼き豚にしようとしたでしょー」
「当然です。真剣にやらないと意味がありませんから」
凛とした声で返すルナベールの口調はいつも通りクールだが、その表情は少しだけ柔らかかった。
「ひでぇ……初対面して数時間でこの言われようって……」
「エッチなことしてルナちゃんを怒らせるのが悪い」
「ですです」
「しとらんわいっ!!」
三人をここへ誘ったのは、ギルドの訓練管理も担当するミランダの一言だった。
『お昼はしっかり食べなさい。ギルドの食堂、最近メニューが変わって評判よ』
その言葉通り、食堂の中は思った以上に活気に満ちていた。長テーブルにはさまざまな冒険者たちが腰を下ろし、笑い声と食器の音が飛び交う。初めてギルドに来た時には見かけなかった顔が多くいた。
「おぉ〜っ、めっちゃいい匂いすんじゃん!」
サヤが鼻をひくひくさせながら、掲示されたメニュー板を見上げ、キラキラした目で注文カウンターへ小走りに向かう。
「カリカリ焼きチキンプレート……焦がしバターソース!? ウチ、これにするわ!!」
「ちょ、おまっ……まずは席取ろうぜ。混んできたら座れなくなるかもしんないし」
レインがサヤの勢いに押されながらも、空いていた窓際のテーブルを見つけて指さす。陽光が心地よく差し込むその席は、ちょうど三人分空いていた。
「じゃ、席取り頼む。ウチ、並んでくる!」
サヤがそう言って列に並ぶのを見届け、レインとルナベールは席を確保する。木製の椅子に腰を下ろすと、背中にじんわりとした温もりが伝わってくる。
しばらくして──
「お待たせ〜! これ、ウチのチキン!!」
サヤがトレーに料理を乗せて戻ってきた。焼きチキンの香ばしい匂いをぷわりと漂わせながら、満面の笑みで席に着く。
続いて、ルナベールとレインも順番にカウンターへ向かい、それぞれ注文する。
「私は……じゃがいもと野菜の煮込みスープにします」
「俺は……うん、カツサンドでいくか」
二人も料理を受け取ってトレーを運び、席に戻ると、ようやく落ち着いて座った。
テーブルには、焦がしバターの香りが食欲をそそる焼きチキン、やさしい湯気を立てる煮込みスープ、香ばしく揚がったカツサンドが並ぶ。三人の前に広がるのは、空腹を満たしてくれそうな極上のランチだった。
「やっば、うまそ!! ……いただきま〜すっ!」
サヤがテンション全開でフォークを手にし、かじりつくように口に運ぶ。
「うんま!! これ毎日食べたら幸せなやつじゃん!」
「……本当に、あなたは素直ですね」
ルナベールは、スプーンを静かに置きながらサヤの表情を見つめた。どこまでも真っ直ぐなその物言いに、少しだけ目を細める。
「そ〜? おいしいもんは素直に褒めた方がシェフも嬉しいっしょ?」
サヤは満足そうに口元を拭きながら、笑顔で返す。その無邪気な笑みに、レインもどこか肩の力が抜けたように微笑んだ。
「……あれ、ルナベールじゃね?」
「ほんとだ。あの子が誰かと居るのって珍しいよね……?」
食堂の片隅で昼食を取っていた複数の冒険者たちが、ざわざわとささやき始める。視線の先には窓際で談笑するルナベールの姿。
「ていうか、隣の二人……あれが例の新人か?」
目立つ金髪ギャルと、やや所在なさげな青年。その異質な組み合わせが、周囲の興味をさらに引き寄せていた。
「なんか……視線を感じる?」
レインが気まずそうにサンドをもぐもぐしながら、そっと周囲を見渡す。
「なーんか、めっちゃ見られてるよね? ウチら」
サヤも気づいたようで、フォークを口元で止めながら辺りを見回す。
そんなとき、バタバタッと元気な足音が聞こえてきた。
「ルナベールさーんっ!」
弾けるような声とともに、小柄な少年が駆け寄ってくる。短めの茶髪に、まっすぐな瞳。ギルド最年少のレックスだ。
「ほんとにルナベールさんだ! やっぱいつ見てもオーラが違うっつーか……!」
「こんにちは、レックス。クエストの帰り?」
「うん! 今日は先輩たちと街の門の見回りしててさ、ちょっと早めに終わったんだ! それで食堂に来たら、あれっ? ってなって!」
少年らしい純粋な目で、ルナベールの隣にいる二人をじーっと見つめる。
「もしかして、この人たちが……! フレイおばあちゃんが特別に勧誘したっていう……」
「うっ……やっぱ噂回ってんのか……」
レインが気まずそうに目をそらす。
「え、そんな有名だったウチら?」
サヤが軽くウィンクして笑みを浮かべる。
「そりゃそうだよ! だって“異世界から来た”とか“変わった職業”とかって話題になってるよ? なんだっけ……イレギュリストと、レヴナント?」
「おぉ、そんなことまで知られてるのか……」
「フレア婆ちゃんから周知あったから、みんな知ってるはずだぜ! オレ、初めて聞いた時ワクワクしたもん!」
レックスは子どものような無邪気さで笑いながら、拳を軽く握る。
「異世界は……まぁさすがに信じる人なんていないと思うんだけどさ、でもオレは信じてみたいな。だって夢があるし、かっけーじゃん!」
「やっぱ信じられてねーじゃん……異世界」
「てか君……レックスだっけ? ウチらのファン第一号だね!」
そのやりとりを見ていた周囲の冒険者たちも、次第に注目しはじめる。
「ルナベールが……新人と一緒に?」
「あの派手な子、マジでギルドの人?」
ざわめきが広がる中、ルナベールは静かに立ち上がる。
「……せっかくなので、この場にいる皆さんにご紹介します。先日ギルドマスターから通達があったとおり、昨日このギルドに加入された私たちの新しい仲間……幽鬼レインさんと、夜霧サヤさんです。そして、私たちはつい先程パーティを組ませていただきました」
その一言に、食堂の空気が一変した。
「パーティを組んだ!? 優等生で一匹狼の"あの"ルナベールが!?」
「うっそ、マジで……」
「たしか別の男がしつこくパーティに勧誘していた気がするけど、新人を選んだんだな」
「ルナベールが居るパーティなら安泰だろうね」
冒険者たちの視線がレインとサヤに集まる中、二人も立ち上がり、緊張と戸惑いの入り混じった面持ちで口を開く。
「ど、ども……幽鬼レインです。えっと、頑張ります……よろしくお願いします……」
「やっほ〜! 夜霧サヤで〜す☆ ギルドの皆よろしく♪」
そのギャルテンションに冒険者たちが一瞬戸惑うも、空気がすぐに和やかに変わっていく。
「……すげぇノリ」
「でも逆に面白そう」
「今までにいないタイプだね」
レックスがニッと笑って言う。
「うん! なんか三人ともピッタリな組み合わせだね!」
レインはこっそりサヤに耳打ちする。
「……お前、目立ちすぎなんだよ」
「え〜? ウチ、控えめだったよ?」
「どこがだよ……」
ルナベールはそんなやり取りを微笑ましげに見守りながら、一言添える。
「……彼らは色々と普通と違うところがあると思います。でも信頼できる仲間です。どうか皆さん、よろしくお願いいたします」
誰からともなく湧き起こった拍手が食堂を包み込み、あたたかな音の波となって三人を迎え入れる。冒険者たちの輪の中に、ようやく“二人”の存在が、ゆっくりと溶け込んでいくのを感じた。
レックスが足早に食堂の奥へと走り去っていったあと、空気が少し落ち着いたかと思いきや──
「おいおい、珍しいもん見せてくれるじゃねぇの」
そんなぼやき声と共に、ふらりと現れたのは、銀髪で寝ぐせ気味の頭に、ゆるんだ帯とだるそうな目元の男だった。
片手にジュース、もう片方はポケットに突っ込みっぱなし。まるで散歩ついでに迷い込んだような態度で、彼はずかずかとテーブルに近づいてきた。
「ギルマスが直々にスカウトしたっつー異世界コンビさんだろ? どれ、話のタネに冷やかしに来たわけよ」
「……えーと」
レインが戸惑って言葉を探す前に、男は勝手に椅子を引いて腰を下ろした。
「俺はモンベルン。職業はセージ。特技はサボり、趣味は昼寝、モットーは“働いたら負け”でございやす」
「えっ、働いて……ないんですか?」
「なぁにレインくん、仕事よりも大事なもんがあるだろ? 夢だ。夢ってのは持ち方次第で見え方が変わるんだぜ? オレの夢は“汗かかずに飯を食う”だ」
「どうやって!?」
「さぁねぇ。誰か叶えてくれんじゃねぇかなって思って、今日も生きてるよ」
その脱力系トークに、サヤが目を丸くする。
「ねぇ、ウチこの人好きかも。なんか楽しそうに生きてそうで憧れる~」
「おうおう、サヤちゃん? ギャルにそう言われんのは光栄だね。是非とも一緒ゆるりと過ごそうや」
そのとき、後ろから無言で現れたのは、黒衣を纏ったヴァンガード、エジール。鋭い眼光と無表情。不思議な存在感を放ちながら、言葉少なに一言だけ。
「……喋りすぎだ、モンベルン」
「へいへい、そう言うなよ相棒。俺が前座で喋っとくと、あんたの寡黙キャラがより映えるだろ?」
エジールはそれには答えず、代わりにレインたちを一瞥する。
「……お前たちは期待されてる。見せてみろ、力を」とだけ言い残してテーブル脇に立つ。
さらにその後ろから現れたのは、紅い髪を高く結び、長弓を背負った少女──クリスティン。
まっすぐな視線をレインとサヤに向けると、短く呟く。
「あなたたち、異世界から来たという噂は……本当?」
「本当っちゃ本当だけど、信じるかどうかは……」
レインが言いかけたところで、
「信じる」
クリスティンは即答する。
「……私には、わかる。違う匂いがする。異なる場所から来た者の匂い」
「え、ウチもしかして臭い!? シャワーしたんだけどなぁ」
サヤが思わず肩を抱くと、
「大丈夫サヤちゃん、それオレも最初に言われた。でも俺の場合“酒臭い”って意味だったが」
「いやそれアンタ個人の問題だろ」
「御名答」
モンベルンがにやけながら肩をすくめ、ジュースを啜る。
「それにしても、こうして並んで見るとわかるな……うん、俺たちのパーティ、見事にバラバラ。やる気ないやつと、感情を出さないやつと、口数少ないやつ」
「それなのに、上手くバランス保ってそうってとこがすごいよね」
サヤが感心すると、
「ま、噛み合わない歯車ほど、回り出すと止まらねぇのさ。──“腐れ縁”、ってやつだな」
モンベルンは軽く肩を伸ばして、にやりと笑う。
「んで──アンタらはどうなんだい? パーティって感じはまだ薄いけど、これからってとこか?」
「……そう、だな」
レインが答えようとしたその瞬間──
「おーい! ここだな!? 新人たちが集まってるってのは!」
「もう、シャルさん! だから声が大きいって言ってるでしょ!!」
賑やかな声が響くと同時に、勢いよく食堂の扉が開いた。大きく手を振りながら現れたのは、筋肉質な長身女性。長い白銀の髪を背中で束ね、快活な笑顔を浮かべている。
白地に黒帯のような戦闘服に身を包んだその姿は、まるで戦場帰りの武将のような風格すら漂わせていた。
「シャルロード、参上! 異世界の仲間って聞いて、オレも一目見てぇと思ってさ!!」
その後ろから肩を怒らせて追いかけてきたのは、三つ編みの黒髪少女──サンシャイン。
年下ながら落ち着いた口調と鋭いツッコミ、整った顔立ちに少しキツめの目元が印象的なシーフだ。
「はいはい、声が大きすぎます! 食堂では静かにって何度言ったら……」
「サンシャイン、堅いぞ! 新人と仲良くするには、まずは拳を交え──」
「交えません! なんでいつもいきなり戦おうとするんですか!! 戦闘狂なんですか!」
モンベルンがジュースを吹きかけながら笑う。
「おいおいシャル姉、自己紹介代わりのバトルとかどこの戦闘民族だよ」
「オレが闘うのは“絆”ってやつとだ! ……いや、まぁ普通に魔物とも戦うけどな! ンッハハ!」
「……ハァ。ちょっと何言ってるか分かりません……」
サンシャインはこめかみに手を当ててため息。
サヤはというと、そんなシャルロードの雰囲気に一発で惚れ込んでいた。
「うっわ〜この人、めっちゃ姉御って感じするーっ!!」
「おお、お前なんかギャルいな!? オレ、ギャルは好きだぞ! 自由で、まっすぐで、芯を持っていて、ちょっと破天荒なとこがたまらねぇ!」
シャルロードがサヤの肩を抱きながら豪快に笑う。
「え、ウチらもう今日から姉妹ってことでいい?」
「よし! サヤはオレの妹分だ! 困ったらガンガン頼れ!!」
「その場のノリだけで人間関係を築かないでください!」
サンシャインのツッコミがビシィッと突き刺さる。
レインは完全に圧倒されていた。
「な、なんかここのギルドの人らってすげぇキャラ濃いな……」
「お前が地味だから余計そう見えるんだよ」
モンベルンが肩をすくめる。
「こっちは普通にしてるんですけど!? 普通じゃだめなの!?」
「いや、それが一番損する世の中なのよ、ってお前たちにとっちゃここ異世界なんだよな。俺が世渡りを教えてやろうか?」
モンベルンがすっとぼけたように呟くと、エジールが一言。
「……騒がしすぎて、疲れる」
「エジールってなんかクールなタイプだね〜」
サヤがちゃちゃを入れ、クリスティンがすっと視線だけでツッコミを送る。
「そういや、お前らのパーティ名って決まってんのか?」
口火を切ったのはモンベルンだった。ジュースを傾けながら、気だるそうにレインへ目を向ける。
「え? あ、いや……まだ……」
「なにぃ? まだ決めてねぇのか!」
「だってついさっきパーティ組んだばかりだし」
シャルロードが椅子の背に肘を乗せて、興味津々な顔で身を乗り出す。
「名前ってのはなぁ、魂だぞ魂! オレたちは《雷雲の牙》だ!」
「“雷雲の牙”……って、また中二感すごいな……」
「うるさい! 名前負けしないくらい本気で戦ってるからいいんだよ!」
シャルロードがドンとテーブルを叩く横で、サンシャインが肩をすくめた。
「これでもマシになった方です……。ちなみに最初は《鉄壁姉さんとツッコミ係》だったんですよ?」
「うお、なんてわかりやすい名前!」
「さすがにそれは無理だな……」
「まぁ、あんたらも決めるといいさ。あ、ちなみに俺らのチーム名は《グレイフロスト》な」
モンベルンがふわっとした調子で言いながら、ジュースのストローをくるくる回す。
「《グレイフロスト》……?」
「クールで無口で情緒が薄くて、だけど意外と情に厚い──そんな三人組。グレーでフロスト。地味に聞こえて、よく見るとやばいやつら。そういう意味合い」
「へぇ~、ちゃんと意味が込められてるんだ……」
レインがぼそっと漏らすと、横でエジールが無言でうなずく。
「……グレイフロスト。気に入ってる」
「ほらな、イケメンが言えばすべて正解よ。人生そういうもんだ」
「……」
クリスティンは何も言わない。ただ静かに、「悪くない」と呟いた。
「ってことで、お前らもそろそろ考えとけ。“名無し”のままだと、仲間意識も薄まるぞ?」
モンベルンが肩肘つきながら言う。
「うーん……じゃあ、今ここで決めちゃう?」
「お、いいじゃん。ウチもそういうのノリでいく派〜☆」
「とはいえ……どうする? なんか、三人を表すようなものがいいよな」
レインがテーブルに手をついて、考え込む。
「三人とも戦い方もバラバラだし、立場も違う……けど、ウチらって今のとこ、すっごいバランスよくね? 知らんけど」
「確かに」
ルナベールが静かにうなずく。
「特異だけど、噛み合うと思ってる」
「なら……三叉の槍とかどうよ。三つの刃が一つになった武器」
「……《トライデント》」
レインがつぶやくように口に出す。
「え、それかっこいいかも!」
サヤが目を輝かせる。
「響きもヤバいし、強そうだし、ウチらにぴったりじゃん!」
「──《トライデント》、決まりですね」
ルナベールが微笑んで言う。
「よっしゃああ! 新パーティ誕生だあああああっ!」
シャルロードがなぜか一番テンションを上げて叫ぶ。
「はぁ……また大声出して……」
サンシャインが額を押さえつつも、口元に小さく笑みを浮かべていた。
「《トライデント》ねぇ。お前らにしちゃ、いいネーミングじゃん」
モンベルンが軽く手を叩く。
「……三叉の槍。悪くない」
エジールも無表情のまま小さく頷いた。
「お前たちの矢が外れないように祈ってる」
クリスティンがぼそっと、でもほんの少し優しげに言った。
三人の新たなパーティ《トライデント》は、その名と共に冒険の第一歩を踏み出したのだった。
「でさでさ!」
シャルロードがどんと両手をテーブルに突いて、食堂全体に響くような声で言った。
「《トライデント》の誕生祝いってわけじゃねぇけど──今から街に出て、雑貨屋でも冷やかしに行かねぇか?」
「雑貨屋?」
レインが首をかしげると、サンシャインが補足する。
「はい。最近ギルドの近くに新しくできたお店がありまして。品ぞろえがちょっと変わってるって噂になってるんです」
「変わってるって……どんな感じですか?」
ルナベールが訊く。
「戦闘用のアクセサリから、謎の護符、お香やら占いグッズやら……あとは何故か大量の鈴とか、キラキラした羽飾りとか……」
「わお、なんかめっちゃ気になる!!」
サヤが食いついた。
「絶対そうだと思いました」
サンシャインが小声で呟く。
「ってなわけで、オレたち《雷雲の牙》と一緒に《トライデント》も行こうぜ! せっかくだし、今日くらいはのんびりしてもバチは当たらねぇだろ! お前たちはどうする?」
「んー? 俺らはこのあと受けたクエストがあるからパスで」
モンベルンがジュースをくいっと飲み干して椅子を引く。
「じゃあ、決まりだね」
ルナベールが微笑みながら立ち上がる。それに続いてレインも立ち上がると……
「えっ、まさかレインも来る気?」
「……ちょ、置いてく気かよ」
「うむうむ! 新人歓迎はまず“街を知ること”から! ギルドの外にも、色んな出会いと発見があるからな!」
シャルロードの声に皆が笑い声を返すと、それぞれ立ち上がり、談笑しながらギルドの出口へと向かっていった。
陽の光が傾きかけた午後の街。
ギルド仲間たちの背中は、それぞれの冒険と日常の始まりを予感させながら、賑やかな声と共に石畳を踏みしめていく




