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ep10 三段階能力鑑定 ー レイン

 ◆第壱階【魔力測定】──《晶核の計量》


「はいはい、じゃあ次はレインの番ね〜!」


 サヤがニヤニヤと肘でレインを小突く。

 レインは「押すなって」と苦笑しながら、一歩前へ出た。


「えーっと、こうやって手をかざすだけでいいんだよな……?」


 レインが恐る恐る右手を水晶の上にかざす。


 ──沈黙。


 水晶は、何の反応も見せなかった。光らない。音も鳴らない。


「……あれ? 壊れてんのか、これ」

「ちょっとレイン、ちゃんと魔力流してる?」


 サヤが眉をひそめる。


「魔力ってどうやって流すんだよ……」


 レインが小さくため息をついた、その瞬間だった。



 ドンッ──ッッ!!



 《アーククリスタル》の内部で、何かが“爆ぜた”ような光が走る。


 赤黒い光が水晶の奥底から一気に噴き上がり、表面にまで張りつくように脈動を始めた。

 やがて、色は燃え上がるような「赤」と、毒々しい「黒紫」が交互に脈打ち始め──


 ビィィィィィィィイイイ……ン……!


 水晶から、異様なほど高く鋭い音が鳴り響いた。


「な、なんじゃと……!?」


 フレアが目を見開く。


「こんな音……初めて聞いた」


 受付嬢が眉間に皺を寄せ、じっと水晶を睨みつける。


 水晶の周囲に表示された、魔力量の数値は──

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 【魔力総量:B+(標準)】

 【属性傾向:闇100% 】

 【特殊判定:特異波長、呪因子干渉】

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「呪因子干渉……?」


 レインがぽつりと呟く。


 サヤは一瞬、真顔になったあと、吹き出すように言った。


「アハハハ! なんかウチらって呪われてたりするのかね!」

「お前が言うな! 呪ってるのお前だろ絶対」

「細かいことは気にすんなって〜☆」

「コイツ……!!」


 二人の軽口が飛び交う中、水晶の色はさらに不安定に揺れ、周囲の魔力を吸い込むような波動を発し続けていた。


 巨漢の男が、そっと腰の武器に手を添えたのを、フレアが片手で制止する。


「……これは呪いじゃないよ。“因果の歪み”……本人が気づかずとも、周りの運命をゆっくりねじ曲げていく、そんな特異な体質。これは可能性の塊じゃな」


 水晶の光がようやく収まり、レインはぽりぽりと頬をかきながら、水晶から手を離した。


「まぁ……よくわからないけど、俺の“不幸体質”を考えれば分からなくもないか」

「なんかレインちょっと嬉しそう?」

「そ、そう見えるか? 正直なところ、俺の不幸体質が逆に可能性があるとか言われるとちょっとな」


 部屋の空気が、確実に変わっていた。

 誰もが、彼らの“危うさ”を──理解し始めていたのだ。




 ◆第弐階【肉体・魔力適応診断】──《全身共鳴儀》


 続いて案内されたのは、足元に魔法陣が広がる円形の装置《共鳴環陣》。


 レインがその中央に立つと、淡い蒼光が足元からゆらりと立ち上り、彼の身体全体を包み込むようにして光が走る。


「なんか……健康診断の立体スキャンみたいだな、これ」

「あ~たしかにそう言われるとそうかも?」


 サヤが肩をすくめて見守る中、装置の外周に刻まれた魔紋が順に浮かび上がっていく。


 やがて、装置が“共鳴”を始めた。


 ヴィィィィィィ……ン……カッ、カッ……!


 空中に透けたホログラムが出現し、そこに項目と数値が次々と映し出されていく。


 測定結果

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 【魔力循環効率:C(平均)】

 【魔法制御精度:S+(極高)】

 【身体反応速度:B(良好)】

 【耐久力:D(やや低め)】

 【特殊耐性:呪い ⇒ 完全無効】

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……なっ」


 受付嬢が息をのむ。


「魔法制御精度がS+……だと?」


 巨漢の男も眉をひそめ、足音も立てずに一歩だけ前に出た。


「それって凄いの……?」


 魔力制御精度の“S+”という評価が、皆をざわつかせていた。


「通常なら高位の魔法使いでもAランク止まり。Sランクすら滅多に出ない」

「……なんともまぁ、いびつな構成じゃが、これはこれで……強力な呪術師向きの気質じゃな。天から授かったような才を感じるよ」


 フレアが興味深そうに言う。


 測定を終えた《共鳴環陣》の光がスゥ……と収まり、空中のパネルが消えていく。その余韻の中、静かに、そして確かに、周囲の視線がレインに注がれていた。


「……さぁて、これで最後じゃな」


 フレアが静かに口を開く。


「“運命写し”──おぬしの魂に最も合う戦い方、それを映す鏡じゃ。目を逸らさず、しっかり向き合うんだよ」


 レインは一度深呼吸し、まっすぐ前を見据えた。彼の中に何かが、確かに目覚め始めていた。




 ◆第参階【職業適性・記録登録】──《運命写し》


 水面のように波打つその鏡面は、ただの映像を映す鏡ではない。「魂の本質」を映し出す、冒険者にとって最も重要な最終試練のひとつだった。


「さあ、正面に立って……そうそう、鏡の奥をそっと覗いてごらん」


 フレアの言葉に従い、レインは台座の前に立った。

 緊張のあまり、喉がカラカラになっていた。


「これで職業が分かるんだよな……?」


 レインは深く息を吸い、鏡を見つめた。


 ──次の瞬間、鏡の中に、まったく想像しなかった光景が現れた。


 水面のように揺れる鏡面に映ったのは、漆黒の霧の中、二体の霊体を従えるひとりの男。


 その男はフードを被り、背後にはぼんやりと浮かぶ2体の“影”。ひとりは、金髪ギャルのような外見をした姿──明らかにサヤ。

 そしてもうひとりは、見たことのない黒髪の男性。どこか寂しそうに影を帯びたその男性の輪郭は不鮮明だった。


「なっ……!? あれ、オレか……?」


 レインが驚きに声を上げた瞬間、横の自動筆記装置《封印写筆セレスペン》が、勝手にカリカリと動き始めた。


 《能力書》に、黒く輝く文字が記されていく。


 測定結果

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 【職業適性:未知体カテゴリ(コード:R-19)】

 【特例職業:運命歪術師(イレギュリスト)

 【系統分類:因果操作系・不幸干渉/呪術妨害型】

 【職業特性】

  -主能力:運命干渉/不幸誘導/行動ズレ発生/連携支援

  -精神耐性:SSS+(逆境適応型)

  -幸運値:-999(異常値)※霊的因子の干渉が確認されました。

  -職能評価:世界法則干渉の兆候あり。監視対象候補に登録済

 【特記事項】

  -周囲への因果影響:特例注意

  -精神的連携適正有り(連携対象:夜霧サヤ/???※未登録個体)

  -魂に“霊的依存”の痕跡あり

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……なんじゃ、この結果は……」


 フレアの手が一瞬だけ止まり、その目が細くなる。


 サヤがレインの隣で、まじまじと鏡を覗き込む。


「え、あたしが映ってんのもちょっと笑うけど……てか、あのもう一人って誰?」

「……知らん。俺も聞きたいくらいだ」


 レインが眉をしかめて呟くと、《封印写筆》が最後の文字を刻んで止まった。


「……まさかの“運命を歪める者”か。普通に暮らすには向いてなさそうだね」


 フレアが、どこか複雑な声色で呟いた。


「ほんとそれ……」


 レインが額に手を当て、ため息をつく。


「でも、似合ってるよ?」


 サヤがニヤッと笑って、レインの背中をポンと叩いた。


「お前なぁ……」

「まあ、アンタが“不幸”なのは今に始まったことじゃないでしょ? いっそ最強の厄病神でも目指したら?」


 その軽口にレインも、思わず吹き出してしまう。



 こうして、レインの全鑑定が完了した。

もし少しでも「続きが気になる」と感じていただけましたら、ページ下の☆ボタンを押していただけると嬉しいです。

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今後も楽しんでいただけるよう精一杯頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


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