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97.デート

「この商店街から工場までは歩いて5、6分の所にあるの。」

「ちょっと待っててね。またお肉屋さんに寄っていい?」


私はおじさんとおばさんへのお土産にコロッケを買って工場に向かいました。


「ここから5、6分のところに工場があるの。」

「結構近いんだね。」

「そうなの。だから、小さいころから商店街にもよく行ってたの。」

「あ。桜の木。ナヲちゃん、覚えてる。三条のおじさんの家の桜。また一緒に見ようって言ってたのにまだ約束果たせてないね。来年はあの桜一緒に見ようね。」

「うん。」

そんなはなしをしていたら工場につきました。


「こんにちは!」

事務所の扉を開けて大きな声であいさつをすると、

「いらっしゃい!あ、角様、いつもナヲがお世話になっています。」

とおばさんはいつもと違って緊張した様子でやってきました。

「あなたー。いらっしゃったわよ。」

「おう、お待たせしました、いつもナヲがお世話になっています。今日はうちの工場の・・。 」

「おじさんも、おばさんもどうしたんですか?」

「敏光から今日角様がいらっしゃるって聞いて、失礼があっちゃいけないでしょ。特に主人はこんなだし。ねぇ。」

なるほど、おそらく父からあきちゃんのことなど聞いていて、緊張しているというわけですね。その気持ちわかります。私もあきちゃんと再会したときは混乱して調子が悪くなってしまいましたから。


「お気遣いいただいてありがとうございます。しかし、私に気をつかわないでください。いつものおふたりのままで接していただけると嬉しいです。」

「そうかい?いいのかい?俺はかしこまった話し方をすると口がうまく回らなくなっちまうからよ。」

「そうね、私もその方が話しやすいわ。」

「ありがとうございます。ナヲさんのご家族にはあきちゃんって呼んでもらっています。なのでそのように呼んでいただければ嬉しいです。」

「おう!わかった。じゃあ、あきちゃんと呼ばせて貰うぜ。それにしても、お二人さんは仲がいいな!さっき、町内の林さんがナヲが彼氏と手を繋いで商店街デートをしてたって。俺はたまげてよ。お前、あきちゃんとどんな関係なんだよ。」

私は周りに聞こえないよう、小声で、あきちゃんは第二皇子様でしょ。警備の方がいても何かあった時に連れて逃げたり応戦することを考えたら手を繋いだ方が安全なのよ。それに私、ここの商店街の常連でしょ。私の身分をみんな平民だって知ってるでしょ。その平民の彼氏が皇子とは誰も思わないでしょ。」

「なるほど、敵を欺くにはまず味方からってわけだな。」「なるほどそうね。とにかく何もなくてよかったわ。」

おじさんとおばさんは納得して、ここまで無事にこられてよかったとほっとしていました。

「そういえばあきちゃん、オート三輪に乗りたいんだってな。別にいいけどよ。警備とか大丈夫なのか?荷台は乗れて4人くらいだぜ。」

「大丈夫です。警備の者たちがきちんと対応してくれるそうなので。」

「そうかい、分かった。よかったら工場見ていくか?クッキーを食べた学校の生徒さんから昨日と今日と金型の問い合わせがあってよ。けさもセットを2、3組作ったところなんだよ。あきちゃんとナヲの分、今から作ってやるよ。記念に持って帰んな。」

話し方を気にしなくなったとたん竹男おじさんは絶好調になり、

「あきちゃんこっち見てみな。」

「は。はい。」

あきちゃんを工場に連れて行きました。



「光明様がうちにいらっしゃるって聞いて緊張してたけど、気さくで優しい人ね。」

とおばさんは私に耳打ちをしました。


「おばさんこれ、お土産です。」

「わぁ。コロッケ。いつもありがとね。私は無事にナヲたちが着いたこと敏光に電話しましょ。あっちも心配していると思うから。」


しばらく、私たちは工場を見学しました。金型の新しい種類をデザインしたりもしました。あきちゃんはハートの型の金型を、私は生地に凹凸がつけられるスタンプの提案をしました。ハートの金型はすぐに作れるからと、その場で竹男おじさんが作ってくれました。



登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

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