90.デート
「かーちゃん、ナヲちゃんが本物の彼氏を連れてきたぜ。」
「あっ、彼氏じゃないって伝えてなかった。」
「いーでしょ。わざわざ訂正しなくても。」
「いやいや。困りますよ。私、この商店街今後も通うんですから。」
「じゃあ、ナヲちゃんは彼氏でもない人と手をつないで買い物をするの?」
「あ。そういえば、私、あまりにもあきちゃんが自然にスキンシップをするから、感覚がおかしくなっていました。大丈夫です。眼鏡をかけているから一人で歩けます。」
そうですよ。家を出てあきちゃんが手をつないで、指輪にキスして、指輪にキスして、指輪にキスして・・・。キスをされたことに動揺して手をつなぐことについての疑問がどこかに行っていました。
「僕はこれでも第二皇子なんだ。ナヲちゃんは強いでしょ。何かあったときに助けてもらおうと思って。」
あーーーー。なんて勘違いをしていたのかしら!デートなんて前世で亡くなった主人と数回だけしかしていないから。すっかり舞い上がっていました。
「そうでしたね、ごめんなさい。私ったらすっかり舞い上がっていました。大丈夫です。私があきちゃんを絶対に守ります。そうでした。私はこの商店街の常連で、ほとんどの人は私が平民だと知っています。だから恋人同士としていた方が安全だということですね。私の変な羞恥心で危うくあきちゃんを危険にさらすところでした。」
「あ・・・。うん。そ・・・そうなんだ。分かってくれて助かるよ。」
そんな話をしていると、
「あら。ナヲちゃん。いらっしゃい。素敵な彼氏じゃないか。服もおそろいでアツアツだね。ちょっと待っててね。これ、試供品で悪いんだけど新商品のおせんべい、新商品ていうかパッケージが変わっただけなんだけどね。持って行って。」
私達お付き合いしていないのに、もらうわけには・・・。
私はおばさんに、
「ありがとうございます。でも悪いです。」
と伝えると、
「いいんだよ。もらってちょうだい。ナヲちゃんがこうやって顔を出してくれるだけでもおばちゃんは嬉しいんだ。」
とおせんべいを私の手に持たせてくれるので、
「ではありがたく頂戴します。」
といただくことにした。
「おじさん。このキャラメルとピーナッツせんべいとこんぺいとうください。また今度ゆっくり伺います。」
「ありがとうございました。また二人で伺います。」
雑貨屋さんと食料店を回っていたらもうすぐ12時。
「あきちゃん、少し早いけどお昼にしませんか?」
「そうだね。」
私たちはお肉屋さんに向かいました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。




