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87.デート

「あきちゃん、ナヲがご迷惑をかけるかもしれませんがよろしくお願いします。警備の方がいるとは思いますがくれぐれも気を付けて。」

「わかりました。」

階段を降りると父とあきちゃんが話をしていました。

「ナヲ、あきちゃんに迷惑をかけないようにね。姉さん(父の姉フジおばさん)には午後から行くって電話したから。今日は竹男兄さんは急ぎの仕事もないし暇しているみたいだからいつでもどうぞってさ。」

「わかりました。お父さん電話をしてくれてありがとう。」

「ナヲ、あきちゃんいってらっしゃい!」


「行ってきます!」

私とあきちゃんの声がぴったりとそろいました。

「私たち、息がぴったりですね。」

「そうだね。」

そういうとあきちゃんは私と手をつなぎました。

「今日は眼鏡をつけているから手を繋がなく」

私が話している最中なのに驚いたようにあきちゃんが、

「この指輪・・あの時の。」

と言って私とつないだ手を見ました。

「そうなの実はずっとサイズが大きくて大事にしまっていたんだけど最近右手の中指にちょうどよくなって。つけてきたの。」

「うれしいな。」

と言ってつないでいる手を口元に持って行き指輪に口付けをしました。さすがに前世で100年生きた私も昼間からこのような行動をされるとあわててしまいます。空気を換えようと、

「ここから商店街まで、いつも市電に乗っていくんだけど警備上馬車の方がいいのかしら?」

と尋ねるとあきちゃんは笑いながら、

「いや、大丈夫、事前に今日の予定は伝えてあるから。じゃあ市電で。 」

とスマートに答えました。あきちゃんって、これからどれだけの女性たちを惑わせるのでしょうか・・。末恐ろしいです。

停留所につくと市電の到着まであと5分くらいあります。座って待ちましょう。

私たちの回りには4人くらいのたくましい方がいらっしゃいます。今日は警備の方々は街になじむように私服なんですね。

「今日の私たちの服装はよく似ているね。昨日のドレスとタキシードのようにペアで仕立てたように見えるね。 」

「あきちゃんの服の方がずっと上等ですけど、パッと見たときはそう見えますね。それに今日はあきちゃんは眼鏡をしているし。やっぱり私と一緒ですね。眼鏡をかけたあきちゃんって素敵ですね。」

「え。そうかな?ナヲちゃんが喜んでくれるなら毎日眼鏡をかけようかな?」

しばらくたわいもない話をして過ごしました。


「あ。そうだ、あきちゃん、はい。」

「これは?」

「市電の回数券。乗る前に運転手さんの横にある箱に入れてね。」

「もらっていいの?」

「ええ。今日は私がエスコートしますから。あきちゃんはついてくるだけでいいですよ。」

「デート代くらい私が払うよ。」

「いいえ。いつもあきちゃんに出してもらってるし、昨日は素敵なドレスまでいただいたんですよ。それらに比べると大した額ではないんですけど。あきちゃんにお礼もかねて今日は私が。」

「わかった。ありがとう。今日はお願いします。」

「任せてください。」

そんな話をしていると市電が到着しました。


私たちは回数券を箱に入れ空いている席に座りました。


「あらあら。あなたたちは新婚さんかしら?お似合いね。お揃いの服まで着て、仲が良くていいわね。」


「そうなんです。先月結婚したばかりで。 」

あきちゃんは向かいに座るご婦人の話に合わせてそう答えると、

「いいわねー。私もそんな時期があったわ。あら。もう着いてしまったわ。」

と言って市電を降りていきました。


「あきちゃん・・・この調子のよさ。最近兄さんに似てきましたね。」

「だって、もう会うことはないだろうし、せっかく話しかけてくれたのに否定するのも悪いでしょ。」

「それもそうですが。」

「いいでしょ。夫婦でも。」

そういうあきちゃんのあどけない笑顔に負けて、

「そうですね。」

と答えてしまう私なのでした。


登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

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