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83.文化祭㊻

あきちゃんと私は靴を脱ぎました。


「さっ。もう一回踊ろ。」


 私は不思議なことに体がスムーズに動きます。私、踊れています。あきちゃんのリードに身体が勝手についていきます。

「私、そこそこ踊れてませんか?」

「ちゃんと踊れてるよ。ナヲちゃん楽しい?」

「ええ。とっても。」

「ナヲちゃんはダンスが下手なんじゃなくて、ヒールを履いてダンスを踊るのが苦手だったんだよ。でもそのおかげで今、私だけがナヲちゃんとのダンスを楽しめているんだけどね。」

「私も人気者のあきちゃんを独占できて、とても贅沢な気持ちになってます。」

「そっか。じゃあ、毎年こうやって、2人きりで後夜祭しよ。」

「そんなに気を使ってもらわなくても、来年から後夜祭に出ますよ。だってヒールがなければそこそこ踊れるってわかりましたから。」

「だからだよ。ナヲちゃんが後夜祭に出たら九条くんや他の男子生徒と踊るでしよ。それは嫌だ。そうだ、九条君のお婆様に結婚の話されたよね。それに今日、文化祭で九条くんと一緒に回ってたでしょ。僕にはたぬきの抜け殻だけ渡してさっさと逃げたくせに。」

とあきちゃんが言ったタイミングで曲が終わりました。するとあきちゃんは

「ナヲちゃんが私以外の人と楽しくダンスを踊るところは見たくないんだ。だから来年もここで後夜祭しよ。お願い。」

と言って私を見つめます。毎年こんなに素敵な場所で後夜祭を開くなんて一体いくらかかるんでしょう。私が誰と踊るのかということより、いくらかかるかという方が問題だと思いました。

「ナヲちゃんもしかしてお金のことを心配してる?ここは母の実家の別荘だからお金はかかっていないよ。それにこの料理はうちのシェフが作ってくれたんだ。僕の夕飯としてね。」

「それなら気が楽です。じゃあ、私達の後夜祭はここで。」

「約束ね。」

とあきちゃんは小指を出し、私たちは指切りをしました。


私達はソファーに座り食事をすることにしました。どれも可愛らしくて食べるのがもったいないです。お料理を眺めていたら、

「ナヲちゃん、食べさせて!」

「あきちゃん。自分で食べれるでしょ。」

「ナヲちゃん。今日、私にたぬきの抜け殻を渡して逃げたよね。私はその抜け殻を職員室に届けたんだよ。鬼のお面をつけた私がたぬきの抜け殻を持っている姿を想像してよ。あーあ。恥ずかしかったなー。」

「それを言われると辛いのですが・・・。」

仕方がないので私は鯛の小さなひとくちお寿司をあきちゃんに食べさせると、次にあきちゃんが言うセリフが予想できたので、

「私は自分で食べれますよ!」

と強く言いました。

「私もナヲちゃんに食べさせたいよ・・・。それに、全て私の選んだものを身につけた特別なナヲちゃんを私が甘やかしたいんだ。」

「そこまでしていただくわけにはいけません。・・・それにしてもあきちゃんはとてもセンスがいいですね。用意してもらったもの全てが素敵です。私なんて、ドレスや、華やかな下着に全く縁がなくて、自分にどのようなものが似合うか全くわかりません。そうそう。ガーターベルトっていう下着も今日初めて見ました。」

「えっ。いや、ナヲちゃんが似合う下着は、あ・・・ガーターベルトつけたんだ・・・私は・・。」

あっ、いけません。つい下着の話までしてしまいました。私ったらはしたない!あきちゃんも動揺して慌てています。ガーターベルトなんて珍しい物をみたのでつい・・・。

「ごめんなさい。用意いただいたものは私には珍しいものばかりでつい男性にこんな話を・・・。」

「いや、いいんだ。なんか、こっちこそごめん。」

お互いになんだか恥ずかしくなり、食事は自分で食べることになりました。


 

「えー?顔がねずみ色に?」

「そうなの、お化粧は油性だから食器洗剤で洗えば落ちるかなって思って。そしたら思った通りに落ちたんだけど洗剤を落とす前のねずみ色になった私の顔を見て佐藤さんが悲鳴を上げて。」

「はははは。すごいね。洗剤で洗ったら顔がねずみ色に。ははは~~~。」



「今日はたぬきを返した後からずっとお化け屋敷の担当でさ。ナヲちゃんが来たから張り切って驚かしたのに全然怖がってくれないんだもん。」

「あきちゃんだってすぐわかったから。あきちゃんたら私に抱きついたでしょ。私、もしあきちゃんだって気が付かなかったらそのまま投げ飛ばしてましたよ。間違えてあきちゃんを投げ飛ばしてしまっていたらって思ったら急に怖くなりました。」

「危なかった。ナヲちゃんが気が付いてくれなかったらと思うと私も怖くなったよ。」



私達は食事と会話を思う存分楽しみました。


登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

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