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82.文化祭㊺

 あきちゃんは私のもとに来ると、

「ナヲちゃんとってもきれい。」

と微笑みながら誉めてくれました。

いやいや。高級なドレスを着せていただき、髪のセットもメイクもしていただいてこんなことを言うのは大変失礼なことだと十分に理解しています。でも言わずにはおれません。私は、あきちゃんの美しさと比べたら、足元にも及びません。

「あきちゃんこそ。とってもきれい。素敵です。」

あきちゃんは私の手をそっと取るとソファーまでエスコートをしてくれて、二人でそこに座りました。あきちゃんはメイドさんに何か合図を出すと、テーブルにお料理が並べられました。お皿には一口大のかわいらしい料理やデザートがが色鮮やかに飾られています。

「コース料理もいいけど、今日は疲れたでしょ。のんびりソファーに座ってつまめる料理の方がいいかと思って。」

「すてきなお料理ですねとってもおいしそうです。ってあきちゃん、ちょっと聞きたいことがあるんですが?」

「ん?なに?」

ソファーが狭いのでしょうか?あきちゃんの顔が近いです。こんなに整った美少年を近くで見ると緊張してしまいます。

「このお店に、このお料理、そしてドレスに靴・・・。今日はいったい何事ですか?」

「二人だけの後夜祭。」

「後夜祭?」

「今日の後夜祭のダンスパーティーにナヲちゃんを誘おうと思ってさ。ドレスをプレゼントしようと用意していたんだ。そしたらナヲちゃん、ダンスは苦手だから出ないって・・・。」

「え?ドレスって私に?プレゼント?こんなに上等なドレスを?」

「うん。僕が思った通りよく似合ってる。」

「いやいや。このような高級なドレス受け取るには・・・。」

「オーダーメイドのドレスだからナヲちゃん以外の人は合わないと思うよ。」

そうなんです、ピッタリなんです。私の体に。・・・なぜでしょう?あ。もしかしたら?

「今日のこと兄さんは知っていますか?」

「うん。ナヲちゃんのサイズを調べるために、正ちゃんにナヲちゃんの服を借りてもらったんだ。帰りに制服と一緒に返すね。だからこのドレスもらってくれないと困るんだ。」

16歳の男の子が高級なドレスを友人にプレゼントするなんて。貴族の方の金銭感覚が理解できずにしばらく考え込んでいたら。

「わたしは、ナヲちゃんにこのドレスを着てもらって、一緒にダンスをしたかった。だからこれまで公務を頑張ってきたんだ。女性にドレスをプレゼントするのは貴族社会ではよくあることだけどナヲちゃんは貴族ではないし、働いているからお金の重みも知っていて戸惑っているんだと思う。ねぇ、ナヲちゃん覚えてる?私達が独逸に行く前に、お別れ会を開いてくれたでしょ。その時にみんなで踊ったこと。あんなに楽しいダンスパーティは後にも先にもなくて。あの時ナヲちゃんとチークダンスを踊ったことが大切な思い出なんだ。だから、また、ナヲちゃんと踊りたかったんだ。正直,ダンスが苦手だから後夜祭に出ないと言われた時は落ち込んだよ。せっかくドレスを作ったのに袖を通してもらえないんだって。・・・ナヲちゃんこのドレスをもらってください。そして私と一緒に踊って下さい。」

私はあきちゃんの思いを聞いて断わるのは失礼だと思い受け取ることにしました。

「ありがとうございます。大切につかいます。でも私、ダンスは本当にだめで・・。踊ってもいいけどすごく下手なの。」


「でも小さい時はチークダンス踊れていたよね。ちょっと待って。」

あきちゃんはメイドさんに合図をだすと、音楽が流れてきました。

「ナヲちゃん踊ろ。」

私はぎこちない動きで、転ばないように、あきちゃんの足を踏まないように必死で頑張りました。するとあきちゃんは、私の様子を見て、

「ナヲちゃん、靴を脱いで。」

と言うと,あきちゃんも靴を脱ぎました。


登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

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