65.文化祭㉘
「富さん、信くん私のセンスの悪さがそもそもいけなかったんです。でも、見てください。このひょっとこ、なかなか愛嬌があると思いませんか?」
「ナヲ、あんたこれをつけて校内をうろついたの?私、あんたのメンタルの強さ、尊敬するわ。」
かえでさんがそういうと、みんなが一斉に頷きました。
その後はみんなが文化祭初日をどう過ごしていたのかや、明日のクラス演劇のことなどをお菓子を食べながらおしゃべりしました。すると、かえでさんが
「そうだ、ナヲ、九条さんとはどうなっているの?最近九条さんナヲに優しくない?」
と切り出し、
「それ、私も気になっていたの。」
と富さん。
「そういえば、1学期の頃とかまともに話すらしたことなかったんじゃないか?九条はあんまり自分から平民の生徒と関わろうとしてなかったのにな。」
と信くん、
「九条さんは高等教育学校に入るまで平民と関わることはなかったとおっしゃっていたから、色々と戸惑われていたんですよ。クラスメイトと関わるうちに九条さんは変わったんだと思います。ちなみに買い出しの時コロッケをみんなに買って帰ろうって提案をしたのは九条さんなんですよ。それと、かえでさんが言っているのはこの前、リハーサルの後に私がこけそうになった時の話でしょ。たまたま九条さんの目の前で転びそうになったから助けて下さっただけですよ。」
「そんなもんかねー。」
と隆くんが言ったので
「そんなもんだよー。」
と私は返事をしました。
文化祭期間はみんなそれぞれに忙しかったから、久しぶりにゆっくり話せて楽しかったです。
「じゃあ、明日の演劇、お兄ちゃんと見に行くから!」
「楽しみにしてて、素晴らしい白雪姫をお見せするわ。」
とかえでさん。
私もかえでさんの白雪姫と、隆くんの王子様が楽しみで仕方ありません。お2人の邪魔にならないよう、私も完璧にたぬきを演じて見せますよ!
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。




