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63.文化祭㉖

「皆さんお疲れさまでした。事故もトラブルもなく、無事に文化祭1日目を終えることができました。明日はクラス演劇もあるので今日はゆっくり休んでください。では、解散!」





「ナヲ。帰ろ。」

「ちょっと待ってくださいよ。私も!」

「これから、周南堂に行くんだろ。俺たちも一緒にいく!」

かえでさん、富さん、信くん、隆くんのいつものメンバーで周南堂へ向かいました。


「いらっしゃい!今日はおそろいで。なになに?なんか楽しそうなんだけど。」

「そうなのよ。春なのよ。春が来たのよ。」

「え?え?誰に来たの?」

「ナヲさんにです。」

「エーーーーー?!」

かえでさんと富さんとゆずちゃんはなんだかとっても盛り上がっています。若いお嬢さん方は『箸が転んでもおかしい』って言いますもんね。


「お父さん奥の部屋使っていい?」

「おう。何事か?」

「いいこと。」




「お茶はセルフサービスね。そして今日は私の奢り!!」

と菓子盆に緑色のどら焼きを入れて持ってきてくれました。

「え!?いいのか!?」

「この抹茶どら焼き新作なの。この前、ナヲちゃんと試作品作ったでしょ。砂糖の代わりに蜂蜜を生地に使ったの。あとで感想を聞かせて。」

セルフサービスと言いながら、ゆずちゃんは手際よくお茶を入れながらみんなに配っています。


「で。皆さんが集合したナヲちゃんの春について聞かせてもらいましょうか?」

とゆずちゃんが言うと、

「では、信よろしく。」

と隆くん。なんだか皆さん緊張感があふれています。春が来たなんて大袈裟ですね。きっとあきちゃんと私が文化祭を一緒に回ったからそう思ったんですね。若いっていいですね。私は、前世で女学校には行けなかったから、こうやって学校帰りに皆さんとこうやって恋バナが出来る日が来るなんて夢にも思っていませんでした。・・・でも,残念ながらあきちゃんと恋仲ではないんですよね。みなさん文化祭マジックにかかり、少々浮かれてお忘れのようですが、皇族のあきちゃんと平民の私がお付き合いできるはずもないんですよね。みなさんが盛り上がっている今、この話をすると凄く白けてしまいそうでなんだか怖いです。





登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

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